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ただ話を聞いてもらえるサービス/善き隣人バンクを応援したい

ただただ、話を聞いてもらうこと。結婚をして家庭を持つようになると、そのことを自分がどれほど求めているのかということをより実感するようになる。

夫が仕事を終えて帰宅するとき。それは時に深夜に近い時間になる。それでも帰宅の時間をLINEでもらうと、その時間まで待っている。寝ててもいいんだよと夫は言うが、夫のためというよりも自分のために待っている。
夫の元気な姿を見て、わたしの話を聞いてもらい、彼の話を聞く時間が、一日の中で少しでもあることが必要なのだと思う。
たいした内容の話ではない。スーパーで買ったあれこれが安かったとか、子どもが道で転んだ話とか。結論のない話を嫌がる人は一定数いると思うが、わたしの話すことは結論のない話のお手本のようだ。
そんな話を嫌がるわけでもなく、もちろん興味津々というわけでもないだろうが、適度に相槌を打ちながら夫が聞いてくれるとわたしは満足してしまう。そしてあとは、選手交代で夫の熱弁に耳を傾ける。

話を聞いてもらうことで、何か新しい示唆が与えられるわけでも、問題が解決されるわけでもない。そして、そんなことを求めているわけでもない。
それでも、なぜ多くの人は(わたしも含めて)人に話を聞いてもらいたいのだろう。

「人の話を聞く」ということに特化したサービスがあることを知った。
その活動を担っているのは、『一般社団法人 善き隣人バンク』だ。
話を聞いてほしいと願う人のところに行き、話を聞きに行くという活動をしている。
依頼者(以下クライアント)に寄り添いながら、ただただ話を聞く。直接会って話を聞くこともあれば、要望によってはオンラインで話を聞くこともあるそうだ。
クライアントからはお金はもらわず、全て無料で行っている。

クライアントは、心に悩みを抱えている人、職場の人間関係で悩んでいる人、就活がうまくいかない人などさまざまだ。話を聞いて欲しいと願っている当人が依頼をすることもあれば、高齢の両親の話を聞いてあげて欲しいという、家族からの依頼もある。

このサービスに初期の頃から関わっている小野あづみさんは、「ただ話を聞いて欲しい」という方がこんなにも大勢いることに驚いたそうだ。求められなければ、アドバイスをすることもない。専門的な知識を提供するわけでもない。ただクライアントに寄り添い、話を聞く。しかしそのことで、クライアントは心から喜んでくれる。
小野さんはいわく、その人が良くなるとか、正しい状態になるということを一切求めていないそうだ。ただ一緒に伴走して、お話相手として寄り添うことを願っている。
ただ、その話を聞いていく過程で、クライアントの中に何らかの開き、進みが芽生えることがあるのだそうだ。

自分の話をただ聞いてくれる人がいるということは、自分の存在を受け止めてくれる人がいるということだ。温かな関心を持ち、自分の話を聞いてくれる人がいれば、悩みで複雑に絡まった思考や心も、自然とほぐれていくのだろう。

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その善き隣人バンクが、2/13からクラウドファンディングを始めた。
活動のための資金調達を目的にしている。
主に、クライアントの話を聞くスタッフのための人件費の捻出だ。

善き隣人バンクを設立した、広田信也さんはクラウドファンディングの目的はもちろん資金調達であるとしながら、もう一つの願いは「仲間を集めること」なのだと語る。この活動に賛同して、同じく参画してくださる仲間を募っていきたいのだという。
話を聞くことで、クライアントも喜び、スタッフも喜んでいる。この活動をもっと大きなムーブメントにしていきたいのだと。

広田さんは、「この働きは、全ての人がある程度の犠牲を払って参画してくださっているのだと思う」と語っている。
一時キリスト教の牧師を志したこともある広田さんは、牧師になるよりももっと多くの人と関われるようにと、私財を投じて会社を作り、その会社で人に寄り添うための働きをしようとした。その会社が、善き隣人バンクに繋がっている。

善き隣人バンクの「善き隣人」というのは、犠牲を払って弱さを抱える人に寄り添おうとする聖書のメッセージから来ている。
そして、何よりもイエス・キリストが天の位を捨てて、我々のところに犠牲を払ってきてくださった、その姿に我々が似せられている働きなのだと、広田さんは言う。

犠牲を払う、そこに神様の祝福が増し加わって、本当に良い働きとして弱さを抱える人たちの中でその実が実っていく。それを見て共に喜びたいと広田さんは願っている。

自分の話を聞いて欲しい。そんな人として当たり前のような願いは、家族や友人、職場や地域の人など、自分と関わる人が、互いに少しずつ時間と関心を割きながら満たしている。
でも、その願いがもし満たされなくなったら…?
恐らく、想像以上に、辛く、孤独を感じるに違いない。

これからも、自分への関心と温もりを与えて欲しいと、わたしはわがままにも願う。でもそれは、人として当たり前の願いなのだと思う。
同じように願っている人のために、この活動を応援したい。そしてわたしもまた、自分と関わる人の話に耳を傾けたいと思う。

・『善き隣人バンク』クラウドファンディング(2/13〜4/10)

・参考動画


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