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critique  古谷利裕

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2022年2月の記事一覧

〔美術評〕アニッシュ・カプーア個展

〔美術評〕アニッシュ・カプーア個展

古谷利裕

*以下は、2016年9月9日(金)~10月15日(土)に、SCAI THE BATHHOUSEで行われた「アニッシュ・カプーア個展」のレビューです。
(初出 東京新聞 2016年 9月16日 夕刊)

 展示された作品を見ていて、ふと、自分が何を見ようとしているのか分からなくなりました。滑らかに磨かれたステンレスの曲面には、作品が置かれた空間や、作品を見ている自分が、歪んで、何重にも折

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〔映画評〕風景と情との乖離/ジャ・ジャンクー『世界』

〔映画評〕風景と情との乖離/ジャ・ジャンクー『世界』

古谷利裕

 世界公園というテーマパークでダンサーをしている主人公の女性が、最近、ロシアからやってきたばかりの同僚の女性ダンサーの楽屋を訪ねる。二人は、言葉は全く通じないものの、互いに親しさを感じはじめている。ロシア人ダンサーは、舞台衣装の上にジャンパーのような上着を羽織っている。主人公のために高いところにある棚から何かを取ろうとして立ち上がり、腕を上へと伸ばした彼女の肩から上着がするっと落ちて、

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マティス「Pink Nude」(1935)のプロセスの解析(2)

マティス「Pink Nude」(1935)のプロセスの解析(2)

古谷利裕

 マティスの絵(Pink Nude 1935)の生成過程で何が起こっているのかを、四回に分けて、一枚一枚の変化について考えてみる。第二回。ただし、写真はモノクロなので、色の変化があまり分からないという致命的な欠陥があるのだけど。
 画像は『MATISSE A RETROSPECTIVE』(Edited by Jack Flam)より、スキャンしました。
(この記事は、「偽日記@はてなブ

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