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リングフィットアドベンチャー&フィットボクシング考③ 「楽しい」の功罪


 色々と書くのをサボっていたら『フィットボクシング2』発売決定の報が。おめでとうございます&ありがとうございます。これは嬉しい。

https://ec.nintendo.com/JP/ja/titles/70010000028187

 今出ている情報の限りでは新トレーナー含むいくつかの新要素を追加、いくつかの欠点を解消、という順当な続編になっているようですね。前作からデータの引き継ぎができるのは大変有難いところ。

 続編ではなくDLCで……という声があるのもわからなくはないですが、ユーザーを強く意識した広報をしている割に一向に動きがなかったあたりで「システム変更・DLC追加が難しい造りになっているのでは」という想像をしてました。たぶん当たらずとも遠からずじゃないかな。やってやれないことはないけど手間がリターンに見合わない、とか。
 販売のイマジニアさんにしろ開発のジュピターさんにしろ決して大きな会社ではないし、まーそんな無体を言いなさんな、というのが個人的な感想です。ましてリングフィットのように無料アップデートで追加を、なんて要望はちょっと任天堂御大のフォローの厚さに慣らされ過ぎでは……企業体力があまりに違う。

 余談ですがイマジニアから出ているのは知られていても開発にジュピターが関わっていることはあまり知られていない気がするので、フィットボクサーの方は是非こちらも憶えてあげてほしい。『マリオのピクロス』から始まり延々ピクロスを出し続けているあのメーカーさんです。
 余談の余談ですがジュピターはFEシリーズでお馴染みのIntelligent Systems出身の方が創設された企業だそうで、会社の場所も京都だったりして任天堂との関係は深そう。

1.ノンゲームとゲーミフィケーション

 本題に入ります。
 前回の記事では『リングフィットアドベンチャー』と『フィットボクシング』の数値まわりの比較をしてみましたが、今回は同じフィットネスを題材にしたタイトルとしての「ゲーム度合い」の違いを眺めつつ雑多に書いていきたいと思います。

 問いの設定としては
「『フィットボクシング』より『リングフィット』のほうが続けやすいって良く聞くけど、なんでだろう? 実際のとこどうだろう?」
といった感じです。

 先に結論の一部を書いてしまうと「個人の適性と環境による」という身も蓋もないことになりますが、フィットボクシングへのフォローの意味も含めて考察まがいのことをしていきます。

 この2タイトル、一般的には「フィットネスゲーム」「運動ゲーム」「体感ゲーム」といった言葉で表現されていますが、一部界隈で使われる「ノンゲーム」にくくられるタイプのタイトルでもあります。
 これ自体はDS時代の脳トレブームなどをゲーマー視点で皮肉った、「こんなものゲームとは呼べない」という否定・敬遠ニュアンスを込めた語ではあるものの、「ゲームのガワを被せた非ゲーム」=「ゲームっぽくした『何か』」と言い換えれば、意味合い的には間違っていないかと思います。
 (近ごろでは「そうした純ゲーム以外を軽視する『ゲーマー』の一種の驕りこそCSゲーム界の縮小・プレイヤー世代の偏りを招いた/招いている」という認識から、「ノンゲーム」という言葉自体をマイナスに捉える向きもだいぶ少なくなっているように思いますが)

 この言葉に乗っけると、リングフィットアドベンチャーとフィットボクシングは「ゲームっぽくした運動」。
 これをわかった感のある業界用語でさらに言い換えると、いわゆる「『ゲーミフィケーション』されたフィットネスプログラム」ということになりますね。世間的にもそんな感じで紹介されているはず。

 この「ゲーミフィケーション」という用語はもともとは経済方面など非ゲーム業界で生まれたものであるはずながら、当のゲーム界隈においても、大抵は任天堂の得意分野……を超えて他の追随を許さない異能的な位置づけで語られることがあります。ちょうどいい例があったのでご紹介。こういう特集はゲームメディアこそがやってほしかったよね。

https://techplay.jp/column/1203


 前置きが随分長くなってしまいましたが、そんなゲーミフィケーションの匠が開発したリングフィット、プレイ済みの方はもちろんご存知のことと思いますが、驚きの出来の良さで、ゲームにかこつけてプレイヤーを運動させる仕組みがこれでもかと詰め込まれています。詳細はこんなところでちまちま語るよりこのCEDECの講演まとめ記事をご覧頂くとして。

https://www.famitsu.com/news/202009/04205252.html


 こうしたゲーミフィケーションの上手さはそのままタイトルの評判ともなり、リングフィットの評価としては

・ゲーム性/エンタメ度がある(高い)
・飽きさせない、嫌気を感じさせない工夫がされている
・要するに(娯楽的な意味で)「楽しい」


 という感じ。だから続けられる、あるいは続けられそう、という印象が巷にも強く存在しているようです。
 その対比として、フィットボクシングの評価は

・ゲーム性は低めでよりストイック
・内容としてはシンプルで単調
・要するに(娯楽的な意味で)「楽しい」ものではない


 といった感じ。だから飽きて続かない、あるいは続かなさそう、という印象があるようです。あくまでリングフィットとの比較として、ですが。

 それぞれの評価自体を否定するつもりは全くなく、実際この通りだと思います。ただ、そこから派生する「印象」は、実際この通りで正しいのか? というのが、くり返しになりますが今回の問いです。
 と言いますか、今日まで両タイトルのプレイを続けてきたなかで、「単純に『いい』とみなしていた評価にもこんな落とし穴があるんだなあ」という感慨を得たので、それを記録するための文章です。結局まだ前置きだった。あらかじめ整理せずに上からだらだら書いてるものでしてすみません。

2.「楽しい」の落とし穴

 ゲームとしての楽しさがプレイの継続を強く牽引する要素であることは間違いないところかと思います。実際に自分が続けられているのはゲームが楽しいから、と評価されている方も沢山いらっしゃるはず。
 では「ゲームとして楽しい」リングフィットのほうが、継続の観点から見ると「ゲームとしてはそれほど楽しいわけでもない」フィットボクシングの完全上位互換なのか? というと、断言できません。
 確かに、フィットボクシングは続かなかったけどリングフィットは続いてる! という声は多いようですが、逆にフィットボクシングは続いてるけどリングフィットは駄目だった、という声もちらほら見かけます。

 なぜか……と考えるにあたり、自身がひとつ材料になりそうな経験をしたので、例として挙げてみます。
 自分はどちらのタイトルも発売日/直後に購入して今日まで続けているプレイヤーですが、「フィットボクシングはかろうじて続いてるけどリングフィットはおざなり」という時期が3週間ほどありました。今年の2月~3月にかけてのことです。
 忙しかったから? というわけではありません。
 いえ正確には、仕事などは特にばたばたしてもいませんでしたが、他にやることがあって時間が取れなかった、という意味ではその通りです。
 この時期に何があったかと言うと、

『ファイアーエムブレム 風花雪月』の追加コンテンツが配信されたのです。

 煤闇の章をクリアして、その勢いで灰狼メンバーを入れて金鹿2周目(全員スカウト目標)に突入……と詳細はどうでもいいとして、要するに計100時間ほど費やす別のゲームに没頭したのです。
 結果、基本週5のペースで続けていたリングフィット+フィットボクシングの習慣が崩れ、多少サボりがちながらもフィットボクシングだけプレイする期間が続きました。
 そしてしみじみ思ったのは、

「楽しい」は、より大きな(吸引力の強い)「楽しい」に勝てない

 一方で、

「義務感」(≠「義務そのもの」)は「楽しい」に抗える

 ということです。
 非常に当たり前のことを言っているようですが、真理だなと改めて感じた次第。まあこうでなきゃみんな遊びほうけてしまって人間社会回りませんよねと。

 リングフィットは「楽しい」の力で飽きや怠けから来る中断リスクを引き下げてくれますが、その裏写しとして、義務感に結びつきづらい、という特性があります。
 もちろんこれは良い点でもあるのですが、「多少面倒でも果たすべき目的のためにやる」意識が低くなりがち、という特性とイコールでもあり、結果、より強い「楽しい」が出てきた時にあっさり優先順位が下がり、習慣から外れてしまう流れが生じやすい側面があるのではないかと思います。

 他方、フィットボクシングは「楽しい」要素が控えめな分、そもそもの継続にそれなりの義務感が必要になります。
 しかしそうして一度義務的に習慣に組み込んでしまうと、造りがシンプルで単調なだけ、ある種「惰性」で続けやすいという特性があります。極端な話、リングフィット(特にアドベンチャーモード)は9割ゲームと運動のことを考えていないとプレイできませんが、フィットボクシングは動きに慣れれば半分以上別のことを考えていてもプレイできます。

 さらに、前回・前々回の記事でも触れましたが、カロリー消費量や1プレイあたりの運動時間効率など、ゲーム内外で具体的な数値として確認できる要素を比較すると、フィットボクシングのほうが短時間で高い蓄積・効果(+やめた際の反動)が表れるという事実があり、かつわずかながらプレイ準備もリングフィットより楽に済むため、やめづらい&やめなくてもいい、という意識が働きやすいように思います。

 前述の自分の場合で言うと、
「リングフィットはしっかりやろうとすると時間が取られるからFEやる暇が……レッグバンドとかサポーターとかの準備もあるし……でもフィットボクシングまでサボるとリバウンドが怖いから1日おきにでもカロリー消費はしておこう。筋肉はマッスルメモリー(※リングフィット豆知識参照)に期待してちょっと間が空いてもいいや!」
 という心理からのプレイ間隔になっていました。

 少し強引に整理してみます。
 ・「楽しい」は実行意欲と継続に資する力が非常に強い
 ・ただし無数に存在して、「楽しい」同士で時間を奪い合う
 ・時間の奪い合いに負けた「楽しい」は簡単に手放されやすい

 もちろん「楽しい」自体は素晴らしい長所でプラス要素以外のなにものでもないのですが、楽しい=続けられる! とだけ短絡的に考えるのは、実は少し危険なことなのかもしれないなぁ、などと考えさせられた出来事でした。

 偏見混じりを承知で書きますが、いわゆる「ガチャ」を有するソシャゲなどが人を長期間のめり込ませるのも、楽しさに由来しない継続意識が働きやすい造りになってるからなのかなと。非ソシャゲーマーからすると「義務的に続けても楽しくないんじゃないか」なんて思ってしまうんだけど、そうじゃないんだな。「義務感が生じるからむしろ純粋に楽しいだけのものより続けられる」場合があるんだな。

3.「ゲーム性」の落とし穴

 せっかくなので「楽しい」の手前、ゲーミフィケーションのそもそもの目的である「ゲーム性(この場合は「ゲームらしさ」の意)」についてもちょっと考えてみます……が、さらに単純な論になるので当たり前の結論をそのままずばり書きます。

 非ゲームプレイヤーには「ゲーム性」は邪魔。

 当たり前だろうお前。いや当たり前なんですが、結構見ませんか。「普段ゲームとかやらないけど、ダイエットのために評判のリングフィットやってみたいからSwitch買う」といった声。
 この言葉、見かけるたびに少し心配になってしまうのは、身近に「フィットボクシングはできるけどリングフィットはゲーム要素がさっぱり理解できず1プレイで断念」という人間がいたからです。

 リングフィットはゲームとして良くできているだけに、ゲーム的基礎知識を必要とする場面もそれなりに多く、機械オンチも相まって「なんか色々あって良くわからん!」となってしまったようです。
 さすがにここまでは極端な例にせよ、プレイ中に誰もが普通に要求され得る「センサーの初期位置がズレてうまく反応しないから一回ポーズしてキャリブレーションかける」とか、そこそこソフト・ハードに対する知識がないと理解しづらいところではないでしょうか。もちろん上手いことわかりやすく指示を出してくれてはいるのですが。

 さらに所要時間の面でも、またもやくり返しになりますが、リングフィットは強いゲーム性に由来する、進行のための「間」の作業がそこそこ発生するため、「運動したいだけなのにこんな余計な時間使ってられるか!」と感じるプレイヤーもゼロではなかろうと思います。そんな人間はそもそもゲーム買わないだろう、とはこれだけ評判になると言い切れません。みんないいカラダを手に入れたいもの。

 こうした点については起動してジョイコン握ってパンチするだけ、のフィットボクシングの単純さが優位に立つところで、おそらくゲーム部分を難関要素・非効率要素と感じる人は稀でしょう。上述の機械オンチ人間でも問題なくプレイできていたぐらいなので。

 ゲームという形態である以上、ゲーム部分が注目されるのは当然のことではありますが、この2タイトルについては「ゲームっぽくした運動」でもあるわけで、全く同じ土俵に置いて、同じ要素の大小・高低から優劣を語るほどに、本当に必要な評価からズレていってしまう気がします。


 まとめ。
 「楽しさ」と「ゲーム性の高さ」は人と時と場合によって諸刃の剣。

 いくら評判が良くても過信は禁物、ということで。
 両タイトルともそれぞれの特性を踏まえて「どんな状況の人間がどんな時に中断してしまう可能性があるか」、そして逆に「どうすれば再開しやすい状況を作れるか」を把握しておくのが継続のコツかなと思います。
 プレイヤーの目的にもよりけりではありますが、第一目標としてなるべく長く続けて結果を出そう、と考えるなら、リングフィットは「楽しい」以外での動機付け(義務化・習慣化)が必要になるかもしれないし、フィットボクシングは楽しむためのものじゃないから単調さは当たり前、という割り切りが必要になるかもしれません。
 知彼知己 百戰不殆!


おまけ.継続の友

 どうにも全体ぐだぐだになってしまったので、最後に今日までの自分の経験から有用だったアイテム群を紹介して終わり良ければ式にごまかすことにします。
 スポーツマットやらプロテインやら何やらの紹介はとっくの昔に各所でされているので、あくまで「プレイ継続に有用」という観点に絞って挙げていきます。

①Joy-Con+充電器
https://www.amazon.co.jp/dp/B07VGPSM7T

https://www.amazon.co.jp/dp/B071DP4FVY

 いきなりこれか。いきなりこれです。
 自身が筋金入りの無精者のため、とにかくプレイ開始までのハードルを極限まで下げるやらない理由になりかねない要素はお金で解決する、と設定した大方針のもと、我が家には①本体用 ②リングフィット用 ③フィットボクシング用の3組のジョイコンが揃いました。もともと予備&2人プレイ用に2組はあったのでこのために買い足したのは1組ですが。
 複数あると本体に差し直すのも面倒なので充電器があるとより便利。リングに差しているRコンが一番電力消費が早いようです。

②Joy-Conカバー
https://www.amazon.co.jp/dp/B01N23MBD7

 フィットボクシング用。汚れ防止+滑り止めに。手入れが楽になります。本体用にはグリップ感のいいシリコン製の変形型のものを使っていますが、手汗で濡れるのとパンチ時に握りが偏るのが気になるのでこっちはプラ製の通常型もの。

③モニターアーム
https://www.amazon.co.jp/dp/B089GPNM5V

 非常に限定的ですが、「部屋のスペースに今ひとつ余裕がないため微妙に距離近&高さ不足のPC兼用モニターに向かってパンチを繰り出さざるを得ないフィットボクシングの民」にお勧め。これの導入以前は画面の高さを確保するためいちいちデスクに小棚を置いてさらにその上にモニターを乗せる・終わったら降ろす、という作業が必要でめちゃくちゃ手間でした。
 色々な制約条件のもと私が購入したのはリンク先のもので今も問題なく使えていますが、Amazonでは欠陥品の出品が多いカテゴリでもあるようなので、検討の際はご注意のほど。

④無線イヤホン
https://www.amazon.co.jp/dp/B083MNRFPC

 もともとSwitchのゲーム音を無線化するために導入したもの。運動時はむしろ途中から面倒になって使わなくなってしまったのですが、住環境的に夜プレイしたいのにテレビ・スピーカーから音が出せない、という方もいるかなと思ってご紹介。実際はこれの前の機種を使っています。
 実際使ってみるとこれでもコード部分が揺れるのが気になるので、完全無線イヤホンのほうがいいかもしれません。
 無線化についてはひと手間あるのでこちらの記事を参考にしました。https://www.makkyon.com/2018/05/01/sennheiser-cx600bt/


⑤体組成計+各種記録アプリ
https://www.amazon.co.jp/dp/B01N30PYL5

 目標設定と危機感の維持にやっぱり記録は大事です。最近はスマホ用アプリと連動して簡単に記録を取ってくれる機器も多いので少しお高めでもそちらが良いかと。
 自分はデータの蓄積と可視化でモチベーションが上がるタイプなので運動記録アプリ(Google Fitなど)も併用しています。本当は公式のNintendo Switch Onlineのアプリがリングフィットと連動してくれるのが一番望ましいのですが……ミリオンセールス程度じゃダメなのか。
 また初期に食事記録アプリ(あすけんなど)を2か月ほど使っていました。こちらは継続のためというよりは、「自身の一日あたりの消費/摂取カロリーの平均値の把握」⇒「日々の運動量の目標値設定」のため。

⑥ヘアターバン
https://www.muji.com/jp/ja/store/cmdty/detail/4549738743477

 スポーツ用のちゃんとしたヘアバンドって高いし髪の長さが半端だとばらばら落ちてくるんだよねー、いちいちピンで留めるのも面倒だし……ということでこちらを使ってます。幅広ですっぽり髪を包めるので便利。見ての通り洗顔用。500円。自宅だから誰にも見られない!の勝利。

⑦各種スポーツウェア
 自宅だから誰にも見られない!……のなら部屋着や寝間着や下着で運動してもいいのでは? という発想もあるかとは思いますが、自分の場合「運動する/しないのメリハリ」を継続のツボと捉えたので、この格好になったからには運動するんだ、という意識強化のため必ずスポーツウェアは着るようにしています。平日帰宅⇒即ウェア着用、休日起床⇒即ウェア着用で逃げ道を徹底遮断。

 以上こんなところ。また思い出したものや導入したものがあったら追記しようと思います。ここまでお読みくださりありがとうございました。

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