見出し画像

話題のChatGPTは今後10年で起こるAI革命のほんの序章に過ぎない(AIエンジニアの視点から)

人間のように自然に対話するAIのChatGPTが連日話題ですが
もっとAIの技術を俯瞰で見た場合、誇張抜きでこれが大きな進化のほんの序章に過ぎないと思っています。
具体的に今後、実際にビジネスや生活にどういう影響があり得るかやAIの未来を技術が専門でない方向けに説明します。

ChatGPT自体は真新しい技術で作られているわけではないのにすごい

技術専門でない方向けにChatGPTの特徴を乱暴に説明すると以下の通りです。
・超超超膨大な文章データから学習しました
・人間にとって自然で好ましい文章が返ってくるように訓練できるようにしました(これはちょっと新しい)

新しい技術は大抵、既存の技術の組み合わせだったりでできることが多いので
「真新しくはない」というのは乱暴かもしれませんが
ChatGPTの学習の主軸となる技術(transformerと呼ばれる)は2017年にすでに登場しているのが事実です。

真新しい技術でもないのにここまでの影響力と精度があること
これ自体がAIの持つ計り知れないポテンシャルを表しています。

具体的にビジネスはどう変わるか?

近い未来、ChatGPTのような言語AIを含めたAIがどのようにビジネスや仕事を変えていくのでしょうか?

まず、ブルーカラー・ホワイトカラー問わず定型業務のAIによる自動化という波が訪れると思います。
AIと相性の良いホワイトカラーの典型は士業です。法律・会計などの領域がそれにあたります。
すでに法律文書の分類精度や速度において特定領域で法律家を上回ったなどの事例もあり
「決められたルールに従って判断する」とか「膨大なデータから学ぶ」ことがAIは得意です。
それでも弁護士・会計士の仕事がすべて定型業務ではないでしょうし、実際にはAIが補助する的な形から変化が始まる可能性は高いと見ています。

じゃあ、いつそういった変化起きるのか、なぜ今の技術では激変していないのでしょうか。

なぜ今は「AIのせいでクビになった」人が続出していないのか

これには複合的な要素があります。
ひとつの見方として変化していないように見えて部分的に変わりつつある、ということが挙げられます。

例えば以下の記事のように特定領域の画像診断AIは人間の熟練医師より精度が上だったりします。
https://www.kindai.ac.jp/news-pr/news-release/2022/02/035055.html
人間の医師が一生に見る医療画像が何十万枚くらいだとしても、AIは何億枚も何兆枚もデータがあれば学習できるわけなので
画像を見ることだけに特化すればAIのほうが精度が良いのは、必然と言えば必然ではあります。
じゃあなぜ今日からAIを使おう、とならないかというと
「精度だけ上でも根拠を説明できない」とか「間違ってたら責任の所在がどうなるか」とかに加えて
こういうAIソフトは医療機器に相当する場合が多いわけなので何年もかけてやっと認可されたりするわけです。
簡単に言うと優秀なAIがあっても、すぐに導入するには現場が追いつかない場合があるということです。
でも、変化はやはり起きているのです。

そうではないケースで単純に「現状、AIが人間より精度が悪いから」という場合もあります。
なぜ精度が悪いかと言うと、AI(≒機械学習)エンジニアであれば色々な意見はあるでしょうが
私の意見は「学習方法が最適でない」ことが原因と見ています。

最適な学習方法を身につけたとき本当のAI革命が起きる

ChatGPTに話が戻りますが、基本的に現在の言語AIはたくさんの文章データから学習することがベースになっています。
これは、赤ちゃんを真っ暗な洞窟で育てているようなもの、つまりまだ世界を「見てない」状態であると言えます。

もっと具体的に言えば今までの多くの言語AIは
「鳥」という言葉について「飛ぶ」とか「鳴く」という言葉と関連があるとわかっても
毛がフサフサしてたり空を自由に行き来したり、といった本質的な情報は得ていません。
それは鳥を「見たこと」がないからです。

このことが示すことは、つまり言語AIには
文章データに加えて、画像や動画も使って学習する、というとてつもない大きな伸びしろを持っているわけです。

「じゃあ画像や動画を使って"見せる"方法で言語AIを学習すればいいじゃないか」
そのとおりなんですが、それが言語AIの主流にならない
色々な理由があるのですが徐々にそういう学習方法を取り入れた研究が増えつつあります。
少し前に「AI絵師」などと言って話題になったと思いますが
言葉から精巧な画像を生成することは言語AIにという側面でも大きな進歩なわけです。
というのも言葉から画像を生み出せるということ自体、何よりのその言葉を本質的にAIが理解している証拠だからです。

上は言葉→画像の例ですが
もっと注目すべきは言葉を入力すると動画を生成するAIです。
動画を生成できるAI=動画を理解するAIは画像よりもっと本質的で高度な概念、例えば時間を含めた概念の獲得が可能になります。
現時点でも以下の記事の下の方にあるような動画まで生成できるようになっています。
https://ai.facebook.com/blog/generative-ai-text-to-video/

少し前まで次のAI革命が起きるのはいつになるかなぁ、と気長に考えていましたが
様々な研究の予想以上の進化スピードを見ていると
主観でしかありませんが10年以内くらいに
ChatGPTなどより圧倒的に影響力のあるAIが登場するんじゃないかなって気がしてきました。

今回ChatGPTという小さな波が起きました。
また、来年・再来年あたりにAIの小さな波が来るでしょう。
別の場所でコンピュータ速度の向上など小さな波が重なって大きな波が来ます。
そういう大きな波が影響し、またAIに投資や人を呼び、とてつもないAIの波が来るでしょう。
進化は単純比例ではなく指数関数的なものです。

私から言えることは変化を予測することは難しくても
変化をいち早く察知して対応することは可能だと思います。
IT革命だってスマホだって大部分の人は登場したときに
変化が起きるということを信じることができず、何もしなかったと思います。
だからAIについても変化が起きたら本質を調べて
影響があるならすばやく自分も対応することで、少なくとも大部分の人に対して先手を取れるどころか大きなチャンスにもなり得ると思います。
来たるべきAI時代を楽しんでいきましょう!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?