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オタク司書がこっそりFGO関連のオススメ本展示コーナーを作った時の話

こんばんは、古河なつみです。
今回は図書館司書なら一度は経験するであろう「企画展示コーナー」の担当を任された時の体験談を綴りたいと思います。
このnoteの最後には実際に展示コーナーでオススメしたFGOをさらに楽しめるようになる本をいくつかご紹介していますので、必要に応じてスクロールしてくださいね。



展示企画をする時に司書が考えなければいけない事は?

タイトルにある通り、私は『Fate/Grand Order』(通称:FGO)というスマートフォンゲームのファンだった事もあり、FGOには様々な歴史的な背景を持つサーヴァント(主人公と一緒に戦ってくれるキャラクター達)が登場するのでぜひ図書館に所蔵されている本で企画をしたい!と考えたのですが「こういう事をやりたいんです」と上司に相談したところまず最初にこうダメ出しをされました。

商標を展示のタイトルに含めてはいけないよ」

当時の私が企画に慣れていなかった事もありうっかりしていたのですが(うっかりしすぎな気もしますが……)著作権に関して非常に厳格になっている昨今において「商標」を勝手に記載するのは著作物を取り扱っている司書としてNGな行為です。

となると、根本的に私が構想していたようなゲームタイトルに紐づいた企画はできないんだろうなぁ……と考え込んでいると上司は続けてこう言いました。「言い換えなさい」と。

つまり商標を含めずにそのゲームを知っている方だけがピンときて、ゲームを知らない方からは通常の展示と思われるような「キーワード」を考えなさい、という指示でした。

そして私が考えた企画名が「英雄・偉人について知ろう!」でした。
平凡極まりない企画名でしたが、展示コーナーに置いた資料はきっちりFGOのキャラクターに関連するものばかりにしたので、普段は学習席だけ利用してすぐに帰ってしまっていた学生さん達が「これさぁ……」と立ち止まって見てくださったり、実際に借りて行ってもらえたのでこの「こっそりオタクな展示企画」は概ね成功だったかな、と思っています。さらにゲームの事を何も知らないおじいちゃま方からも好評でまた展示してほしいとご意見をいただけたのも嬉しい記憶として残っています。

当時、展示コーナーに置いていた本のリスト(一部)

『マハーバラタ入門 インド神話の世界』沖田瑞穂著
この本は2019年に出版されているのですが、最初の数ページの段階でびっくりするような記載が出てきます。

この叙事詩の最大の英雄といえば、アルジュナだろう。(中略)このような英雄と武器の分離というモチーフは、ケルト圏のアーサー王物語に似ている所がある。(中略)この事に関して、我が国のヤマトタケルも想起される。彼もまた、旅の途中で草薙の剣をミヤズヒメの元に置いて出かけ、その後病を得て、失意の中、故郷を想いつつ命を落とした。

『マハーバラタ入門 インド神話の世界』沖田瑞穂著 序文4ページより引用

アルジュナとアーサー王とヤマトタケルの共通点に言及しており「もしかしてSamurai Remnantってこの資料が一つのきっかけだったのかな……?」と思わせてくれます。またFGOの奏章Ⅰから登場したドゥリーヨダナビーマについても様々なエピソードが解説されていたり、マハーバラタに登場する人物や神様の一覧リスト、系譜図など人物相関についても一目でわかる資料がついているのでFGOにいるインド系サーヴァントの背景について知りたい!今後のFGOのストーリーを考察したい!という方にはまずオススメしたい一冊です。

『ギルガメシュ王の物語』(全三冊)ルドミラ・ゼーマン著、松野正子訳
ギルガメシュについて知りたい!と思うと『ギルガメシュ叙事詩』の本文や解説本を読む事になると思いますが、かなりカチカチの難しい本が多いので絵本でギルガメシュ王の物語を描いたこの『ギルガメシュ王の物語』は初心者向けとしてかなりオススメです! 絵本なので概略にはなっていますが、王様が元々はどんな事をしていたのかをわかりやすく学べる絵本です。Amazonのお値段がすごい金額だったので、ぜひお近くの図書館を活用してみてくださいね。


『アーサー王の世界』シリーズ 斉藤洋著
最後にアーサー王伝説に関する書籍として斎藤洋さんが描かれている『アーサー王の世界』シリーズをオススメします。アーサー王に関しては関連書籍がたくさんあって、正直に申し上げると実際に中身を読んで「この文章は合うな」と思う本を読んでいただくのが一番だとは思います。その中でこのシリーズを挙げたのは、児童書に分類されており、読みやすく作られているからです。アーサー王伝説は基本的に格調高い文体の本が多いので、最後まで読み通そうと思った時にとっつきにくかったり、読むのがしんどくなりがちですが、この本はそういった事がないのでアーサー王と円卓の騎士たちについての物語を知ろうと思った時の入門書としてぴったりです。


もしも今も司書だったなら巌窟王に絡めて「古典文庫フェア」なんて企画もやってみたかったですね……!!(イド途中のオタクの心の声)

ぷちライフハックですが岩波書店さんから出ている古典系の名作「岩波少年文庫」という児童書版が出ている事が多く読みやすい資料として編集されています。「きっちり原典にあたりたい」or「ストーリーの大まかな部分を知りたい」といった用途別で資料を取り寄せると読書効率がアップできます。

今回のnoteはここまでになります。
お読みくださりありがとうございました。
それでは、またの夜に。

古河なつみ

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