ヘルプの二等辺三角形
学生時代、池袋の近くに住んでいた。
池袋駅って確か一日の乗降者数が日本トップ3に入るんじゃなかったっけ。そんなわけで人が多い。小さな事件もよく起こる。
そして池袋駅はそんなに使い勝手が良くない。使い勝手がいい駅をとくに知らないから池袋のことだけ取り立ててそう表現するのはフェアじゃないかもしれないけど。
晴れた日。
多分春。別にいつでもいいけどメトロポリタンのところに桜が咲いていた気がするからそういう映像でいいと思う。
わたしは駅前を歩いていた。
車椅子ユーザーの方が目に入る。使い勝手の悪い池袋駅のほうに向かっているようだ。「このままいくとあのヘンテコな段差で車椅子は立ち往生だ」そう思って私は歩く方角をゆっくり変えた。段差でお困りの際はお手伝いできるかもしれない。車椅子ユーザーの方を追い越さないようそっとすすむ。
すると、全く同じように同じような距離から車椅子ユーザーの方めざして歩く角度を変えた人物が見えた。
その人物と私は一点へ向けて二等辺三角形の等しい長さの二辺を描く。
「お手伝いできますか?」
「お願いします」
我々は目配せをしあい、右と左から車椅子をがっちり支えて段差を乗り越えるお手伝いをした。
トータル一分かかったかどうかの話である。
都会のジャングルに横たわる段差という名のトラップに立ち向かい、勝利?をおさめ、その盟友と私は再び目配せをし、うなづきあい解散した。我々には多分共通の言葉がなかったからだ。
どこの国の方か存じませんが、そういう優しさを池袋で分かち合えて嬉しかったです。あなたの育った街はきっといい街だろうな。行ってみたくなりました。
#やさしさに救われて
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