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花柄のコートでお悔やみに

ご無沙汰致しております
夫が亡くなりました
おそらく、穏やかでつらさは少ない旅立ちだったと思います
お忙しいとは思いますが、いらしていただけませんか?

そんなお便りを頂いた。

手紙の主は優しくて、娘さんとわたしが話をしているのを聞くのが大好きないつも目がキラキラしているすてきなおばあちゃま。

お通夜や告別式などは済まされた、とのことで、ご自宅への弔問となる。果たしてどのような服装で伺おうかとしばし悩んだ。

黒やグレーがいいのかな。
包みものはどうしよう。

グレーのパンツに白いシャツ、焦茶のカーディガン、黒いコートを身につける。ストールなどは無し。

濃い紫と薄い紫がリバーシブルになっているやわらかなちりめんの帛紗も持った。

出かける時間だ。

と、そこでわたしは考える。
手紙の主のことを。

その方は明るい服装を好まれ、わたしの頓珍漢なファッションセンスをいつも「それを着こなせるのはモデルさんか、こぐまさんくらいね!どこで買うのか検討もつかないわ!」と笑ってくださる。

わたしは決めた。
服を取っ替える。

カーディガンはデザインが強すぎて売れ残っていた、黒で縁取られた赤いやつ。

コートは花柄。
襟巻きをふかふかのムートンのものに。

商売品のお灸を一箱紙袋に入れ、家を出る。

お宅に到着したらコートを掛けさせていただき、お悔やみを伝える。お仏壇に手を合わせ、でっかい業務用の箱のお灸をお供えした。

仏様はお線香の煙を食べるんだって聞いたから、お灸の煙だっていいんじゃない?と思う。ご家族が悲しみの中体調を崩すことを亡くなられた方も望んではおられないだろう。

仏壇の前で家族が煙をもくもくお灸を据えていたら「うんうん元気そうでいいな」って思うんじゃないかな?ついでにその煙を召し上がっていただきたい。

と、お灸を持参した趣旨をお伝えした。
その方とはお灸の会で知り合ったので気持ちが伝わるのもスムースだった。と、思う(笑)。

お悔やみがひとしきり終わると、お手紙の主は「ところで」ときりだされた。

「あの、ドリス ヴァン ノッテンのコート、素敵ね。素敵ね。いいわねー。襟巻きも、やわらかくていいわね。着てみたいわぁ」

どーぞどーぞ
ファッションショーしましょうよ!!

そんなこんなでファッションショーが始まった。大きな花がデザインされたそのコートは、お手紙の主にはだいぶサイズが大いがそんなことは関係ない。素敵なコートは人を笑顔にする。

わたしがどこで、どうやってこのコートを破格の値段で手にいれたか?などの話を聞いてコロコロとわらってくださる。

黒いコートで来なくてよかった。

ドリスヴァンノッテンさん、
あなたが20年くらい前に作ったコートは日本の端っこで、今日も人を笑顔にしましたよ。

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