見出し画像

2024年3月の二の字

二の字とは文字数を揃えた(基本同字数)二行詩で

 雪の朝二の字二の字の下駄のあと

の名句から、勝手にそう名付けています。



からっぽの部屋を立ち去るとき
三月のすべては微睡みだと知る
(2024年3月1日)


ぼくたちは春を迷うように
北のはずれのまっすぐな道
(2024年3月2日)


飛行機が降りてこない滑走路の端で
スタートライン引き直して空を見る
(2024年3月3日)


無力で優しい三月の空気は
何かを忘れさせようとする
(2024年3月3日)


今年の春もぼくは何かを失って
いい加減空に手が届きそうだよ
(2024年3月4日)


もう凍えなくて済むんだね
手を繋ぐこともないんだね
(2024年3月5日)


いつまでも星がこぼれ落ちるから
こんぺいとうだらけのぼくの感情
(2024年3月8日)


坂道が街灯に照らされて
春の別れをのぼってゆく
(2024年3月8日)


陽気がぼくに脱げというけれど
離したくないものがあるんだよ
(2024年3月10日)


いつまでも揺れていた冬のおわり
喜怒哀楽のない平野を歩いていた
(2024年3月11日)


皆それぞれの311があって
終わることないものがたり
(2024年3月11日)


夜の深いところにことばを置いて
ぼくのシナリオにはその先がない
(2024年3月13日)


臆病を冬のせいにしてたんだ
手を伸ばせばきっと届くのに
(2024年3月16日)


割り切れないことばかりあって
流氷がまだ海を許そうとしない
(2024年3月22日)


ある夏の浮かんで消える感覚
単純なほうが良いという幻想
(2024年3月23日)


海の向こうも春なのかな
赤いろうそくのまどろみ
(2024年3月30日)


この花を見て欲しかった
秋の日は瞬きだったから
(2024年3月30日)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?