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力士型

【注:こちらのエッセイは】

写真付きのオンライン記事を探し、記事の内容とは無関係に、写真から勝手に想像をふくらまして書いた虚構エッセイです。

【今日の写真はこちら】

【本編】

大相撲を一度でも見に行った人なら理解できると思うが、桟敷席でもない限り、遠い観客席から見た彼らの体は、なんとも小さく、不安定に見える。膨張した腹部を支えるには脚の太さが不十分で、ゆっくりよたよたと歩く姿は歩き始めたばかりの赤ちゃんのようだ。ほらほら無理せず歩行器を使いたまえ、と言いたくなってしまう。

体は巨大で力も強いが、そんなあぶなっかしさが、かわいい~と若い女の子たちに言わしめるところなのかもしれない。さらには、おむつのようなまわし1つで裸体をさらし、お尻も自分で拭けない(多くの場合は付き人が拭いているらしい)ところも、中高年の女性たちの母性本能をくすぐるのかもしれない。我が国で、何百年も相撲が続いているのは、それも一因だろう。

画面の中で力士たちが大きな拍手を浴びるのを聞きながらそんなことをつらつら考えていた俺は、突然ひらめいた。なるほど、そうだ、力士型だ!なぜ今まで気が付かなかったんだ!過去の自分のデザインを次々に思い浮かべてみた。どれもバランスのよい肢体で、中肉中背の成人男女を思わせる形状になっていた。赤ちゃんみたいによたよた歩くモデルなんて1台もなかった。そんなものが役に立つとは思えなかったからだ。

ただ、22世紀の今、人類がロボットに求めるものは、実益ではなく癒しなのだ。救いなのだ。よし、こうしよう。赤ちゃんと同じように、頭と腹が大きくて、手脚は極端に短く、まるっこい。そして、色は・・空や海の色がいい。癒しの色だ。青を目にすると、体温、脈拍、血圧が下がってリラックス状態になる、と何かで読んだぞ。身長は、そうだな、130cmくらい、小学一年生の平均身長くらいがいいだろう。大きなお腹はメタボに見えるかもしれないから、かわいくポケットをつけてと。そうだ、ここには収納機能を持たせよう。

ゥォんニャー。トラが足元で不満げに叫んだ。ごめんよ、デザイン画を描き始めると夢中になってしまうんだ。そうだ、このロボットは「猫型」ってことにしよう。オマエのようなしなかやさは全然ないけどね、トラ。

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