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キングオブコント2021

興奮冷めやらずに午前6時に起きてしまい、筆を取っている、というか親指を動かしている。

コロナを踏み台にして、SNS上では政治面や生活面に基づいた意見で反発し合っていて、オリンピックが行われてもなお日本中が一つにならなかった2021年。10/2のこの大会が行われるまで、日本中が明るくなる日なんてまだこないと思っていた。

このような鬱積した憤懣が緊急事態宣言の緩和により放出されつつあったからだろうか、この状況下にて行われたキングオブコント2021は、バイきんぐ小峠氏の発言よろしく「伝説の会」となった。

客前でネタを披露する機会が極端に減っている限られた活動範囲の中で、ネタを作り、要らないところを大胆に削り、それぞれが自身のいく商品を仕上げて挑んでいたので、見終わってみると最初から最後まで上質なまま駆け抜けていった印象を覚えた。

全員が異なったタイプの商品を提供していて、そのどれもが素晴らしかった。

それぞれのコンビ/トリオのネタについて、自分の感想をしたためておくこととする。

【1st ROUND】
○蛙亭
山内:93 秋山:90 小峠:93 飯塚:93 松本:92(敬称略)

トップバッターに相応しいくらいの突飛な設定で、キングオブコントの幕開けという感じだった。
その中でもツカミが緑色の液体を出すという、好みの分かれる蛙亭らしさ全開のものだったが、それに対してお客さんの反応が良かったのが驚きだった。
過去の「KOCチャンピオンが全員揃って前説をしたのか」と思わせるくらいの温まり方と、全員SAWシリーズ見させられたのかと言うくらいの恐怖心のなさからくる受容性があった。

「僕があなたでも、そうしてたと思います」
蛙亭は中野さんの声がいいのだが、だからこそ中野さんのセリフにはこだわっている気がしている。
今回心に残ったセリフの一つで、どんなに引かれても愛を忘れないホムンクルスの配慮につい笑ってしまう。
慕われて、守られて、結果情が芽生えて名前を呼んでしまう。話の流れとしても不自然なところがないし、こう転んでいったら面白いかな?というところも練られていて、ずっと面白いまま終わった。
今年すごい大会になるかも??と思わざるを得ないネタだった。
トップバッターなのが本当に惜しい。

○ジェラードン
山内:90 秋山:96 小峠:92 飯塚:91 松本:93(敬称略)
「少女漫画でよく見たことあるキャラ」なんだけど、その魂と見てくれが全然合ってないところがずっと面白くて、それぞれの憑依芸が光っていた。
秋山さんがやりたそうな顔で抜かれていたのが印象的で、点数も高そうだなとひっそり思っていた。
一見すると顔芸も取り入れたパワー系のコントだけど、細かいテクニックとして「角刈りの彼女」という設定を活かすためのお色直しがあったり、走り方が変っていうボケを最高のタイミングでもう一度披露してみたり、細部まで作り込まれていて秀逸な出来上がりだったと思う。
1番すごいのは平手打ち一発で終わったところ。
平手打ち一発で丁度いい気持ち悪すぎるキャラを演じ切ったからこそ成り立つオチである。

○男性ブランコ
山内:96 秋山:96 小峠:94 飯塚:95 松本:91(敬称略)
バラシで一番ウケていたように思える。
ボトルメールという古めの設定に、「海岸で待ち合わせた白いワンピースを着た女性」というわたせせいぞうの絵で描かれるくらいの綺麗な設定から、一番真逆な中身という裏切りのバラシがなんとも強烈。山内さんも言っていたが関西弁を馬鹿にするタイプの笑いみたいなのもあって、特に山内さんには刺さっているように見えた。
更に、言い訳にしているけど酒焼けとかって問題じゃないところとか「しこたま」と言うワードセンスとか、てっきり「佐藤くんの望まないタイプの女性かな」と思っているところでの暗転、そして最大の裏切りである「好き」という事実。
飯塚さんも拍手笑いしてるほど。
「言うてる場合か」の動きもコミカルで、どんどんと世界観にハマっていく。
その中で急な場面展開を作っていて「もう波が起きないかな?」っていう終盤で、さらに波を起こす構成が最高だった。


○うるとらブギーズ
山内:90 秋山:93 小峠:93 飯塚:94 松本:90(敬称略)
コントの構成については審査員の方が触れていた通り、説明パートと館内アナウンスパートでどっちでも笑わせる仕組みになっているのが凄い。
普通に読み上げたら尻すぼみになってしまうところを、「笑いを堪える」という至極真っ当な生理現象を取り入れたことで共感も出来て最後まで笑えるようになってましたね。

自分の場合最初に片付けられた「定菱」くんが徐々に面白くなってくるんですよね。
子供の名前から私服まで全部のセンスが無茶苦茶なお父さんの家族背景とか、モーガンフリーマンに似た子供とか「自分で探せないか?」と想像がどんどん膨らんでしまうのもまた良くて、自分の中の点数とだいぶ違ったのが印象的なネタだった。
あとはお父さん役の佐々木さんは側から見たらめちゃくちゃなことを言ってるけど、当事者の中では何もおかしなことなんてなくて、そこの笑わない真剣な演技だったのが、笑いを堪える側との対立構造になってて余計面白かった。

○ニッポンの社長
山内:95 秋山:95 小峠:94 飯塚:90 松本:89(敬称略)
ひとつのボケで引っ張るタイプの「これぞニッポンの社長」と言うネタの中で、ケツさんのマイムと音がぴったりすぎたのが印象に残っている。
頭に当たった時なんて、今回だいぶホラーをコミカルに転換してくれたお客さんが唯一引くほどの出来。当たる部位によって細かく音を使い分ける丁寧さも光る。
このこだわりからマイムと音が違うと白けてしまうような状況を作っておいて、完璧に最後まで音と当たる部位を合わせるという練習量と、それを表に見せないケツさんの飄々とした姿が完璧だったと思う。
このネタも最後の2択で見事当てていた印象。

○そいつどいつ
山内:92 秋山:89 小峠:91 飯塚:89 松本:95(敬称略)
新しい。
入り口は少し古いんですよね。「パックしてる女の子が怖い」って言うパック出始めの時に騒がれたようなボケなんですが、そっから見せる怖い動きがどんどん予想の範疇を裏切っていく。
最後の飛び道具は本当に新しかった。
真っ暗に出来るスタジオでこそ輝くネタで、素人目では暗転した中歩けるのも凄いなと感じた。
その中でも秋山さんとか、飯塚さんの点数が伸びなかったのは気になった。芸人さんの目から見たら、無理がある展開とか動機付けだったのだろうか?

○ニューヨーク
山内:91 秋山:90 小峠:90 飯塚:92 松本:90(敬称略)
最下位ではあったものの全員の点を見るとバランスが取れていて、最低点は無かったのは構成的にも無理がなかったからなのだろうか?
個人的には初対面の人にキレていく温度の移り変わりがリアルで、ボケにたいしてのキレる熱量もあっていたところがかなり面白くて、特に「賞味期限が消費期限かを気にする」という日常的な場面ではあるあるだけど、結婚式場という場ではそんなことどうでも良いみたいなバカバカしさがニューヨークらしかった。
結婚式という設定被りがあったから点数につながらなかったのかもしれないが、ニューヨークらしい穿った目線で、「意識高い系のウェディングプランナーを面白おかしくイジる」という自分達の色も出ていたので最下位ではあるもののさらにニューヨークの格を上げた結果になったと思えた。
あと本大会で一番ハマったキーワードは「オッケーです」になりそうだ。

○ザ・マミィ
山内:96 秋山:96 小峠:95 飯塚:93 松本:96(敬称略)
林田さんと酒井さん、それぞれの人柄、見た目に合ったネタ。
「少しは偏見を持て」と、やばいおじさん役の酒井さんがどんどんまともになっていく。おじさん側が心の底からやばい人間じゃなくて、少しずつ自我が芽生えていく過程みたいなのが滑稽で。
さらにリュックを取って逃げるのかなと言うところも裏切りがあって、どんどんおじさん自身が愛に包まれていく。
「ここに、なんか、ある」と心変わりしていく状況を説明する中で一番拙い台詞回しに吹き出してしまう。
そして衝撃のラストへ。ちゃんとみんな知ってる合唱曲というチョイスも良かったのと、1人の人間が更生していく過程も無理がなかったのが高評価につながったんだろうと思えた。
山内さんの「汚いミュージカル」というコメントがばっちりハマっていた。

○空気階段
山内:98 秋山:97 小峠:97 飯塚:97 松本:97(敬称略)
伝説のネタ。凄すぎました。
音が鳴ってからの明転で、言葉を発さなくても状況がわかってしまう設定を思いついたところでもう優勝なのではと思えるほど。
お互いが裸っていうところもコントの中ではかなり際立った状態だったので、9番目という審査員の目も視聴者の目も肥えてきてしまっている不利な出番順の中でもまだまだ新しく見えていた。
1本目と2本目のネタ選びの大事さというところも痛感した。
職業を言うタイミングが最高なのはもちろん、台詞回しも良くて「域を超えています」とか主語をあえて言わないのもかなり好き。
そして、別のフロアにあるのが社交ダンスの練習場というSMクラブとは真逆の施設なのも良く、終いには真逆な人間の社交ダンスまで踊ってみせる。
着飾った人たちに対して着崩しに着崩した姿で誘導しているのを想像するだけでも面白いし、「そもそもどんなビルだよ」とテナント側の節操のなさすらも笑えてくる。
あと「顔面パンスト」という謎のオプションで興奮している消防士というところも思い返してしまう。

バカバカしさNo.1で歴代最高得点なのも納得。
設定を思いついた発想力と、どう転んだら面白いかという構成力、本当に警察に見える演技力、コントに必要な要素が全部突き抜けていた。
難のある骨盤のために座るコントを徹底してきたもぐらさんが、それを無視していたことにKOCにかける思いを見た。

○マヂカルラブリー
山内:92 秋山:91 小峠:89 飯塚:89 松本:94(敬称略)
順番に恵まれなかったかなという印象。
両方裸の後ではインパクトが弱く、漫才と動きが似ている既視感が評価に繋がらなかったのかな?と思いましたが、私はかなり好きなコント。
特に野田さんの指のマイムが凄く、本当に指"だけ"が意識を持っているように見える野田さんの身体能力の賜物のようなネタだった。
特に指だけで起き上がっているような演技は圧巻で、体幹が鍛えられてないとあそこまで綺麗には見えないだろうなと感じた。

1stステージを終えて、設定や演技力もさることながら構成の無理のなさ+想像を裏切る意外性みたいなところが評価されているように感じた。
あとは出番順、ジェラードン、蛙亭は後の方の出番ならまた変わっていたようにも思うが、どう順番が変わろうとも審査員の好み的にも空気階段の一発目に敵うものはないのかもなとも感じた。

○男性ブランコ
山内:93 秋山:91 小峠:93 飯塚:93 松本:93(敬称略)
2本目は、より台詞回しに特化したネタ。
「図らずもスクワットをさせてしまっている」など随所に男性ブランコらしい言い回しが光っているし、レジ袋という今を切り取った設定もあり、この点は他のコンビになかったように思える。
ただ、順番としては空気階段のネタの後にあるし、空気階段の衝撃が冷めやらぬままだったように感じた。

○ザ・マミィ
山内:94 秋山:91 小峠:91 飯塚:91 松本:92(敬称略)
2本目は、2人の見た目というところは特に意識せずTBSに寄せたようなネタ。
緊張と緩和を最大限に活かすネタなのだが、少し緩和の時のウケが弱かったようにも映った。
結果としてここが肝で、天丼していくネタなのだが、最初のウケの弱さが終始響いてしまった印象。
視聴者で素人である一個人の目でも、別の展開が見たくなってきてしまったので尻すぼみになってしまった感は否めなかった。
それでも2人の演技力というのは十分に活きていたので、それこそTBSからドラマ出演のお声がかかるかもしれない。

○空気階段
山内:96 秋山:93 小峠:95 飯塚:95 松本:95(敬称略)
単独ライブannaで見た中で一番好きだったメガトンパンチマンカフェ。
もぐらさんの愛らしさが十二分に活かされていて、空気階段の憑依型コントの中でもトップクラスに好き。
メニューや、為替など自分が決めた設定に縛られて手こずっているところもあれば、コンセプトに沿ってない豆へのこだわりなどで爆笑の渦にどんどん飲み込んでいく。
ボケの数こそ少ないのだが、全打席ホームランと言った感じだった。
これも1本目で空気階段の世界にお客さんを引き込めたことが良い結果に導いてくれたように思う。
優勝にふさわしいネタだったと思う。
※なおannaではミスターアイホープという謎キャラが出る展開もあるのだが、これは今爆売れ中のDVDを見た人の楽しみに取っておく。多分、2人のラジオを聞いていないと???となるだけなのだが。。

ということで、レポは終わり。
素人が言いたいことつらつら言ってしまったが、今年のキングオブコントは本当に最高だった。
準々決勝敗退組のネタも全て配信で見たのだが、レベルが高いコント師は山ほどいたので、今から来年が楽しみである。

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