漫才「原田さん」

A「あのさ、今週末って空いてる?」

B「今週末?なんで?」

A「いや、なんか友達が商店街のくじ引きで旅行券当てたらしくてさ」

B「へぇー、凄いね」

A「3人分あるから、よかったら一緒にどうかな?と思って」

B「なるほど、いいね、旅行楽しそうだね」

A「おっ、じゃあ行くってことでいい?」

B「うーん…」

A「?」

B「でもあれだな」

A「ん?」

B「原田さんに聞いてみないと」

A「え?」

B「一応原田さんに聞いてみないと」

A「原田さん?原田さんって誰?」

B「バイト先の先輩だよ」

A「ほう……あっ、もしかしてあれ?バイト入ってたから代わってもらうとか?」

B「いや違う」

A「え?じゃあその人と週末何か予定してたとか?」

B「いや別に」

A「じゃあ何?どういうことよ?」

B「あー、実は今まで恥ずかしくて言ってなかったんだけどさ」

A「うん」

B「俺、ハラコンなんだよね」

A「…え?」

B「俺、実はハラコンなんだよね」

A「ハラコン…?ハラコンって何…?」

B「原田コンプレックスの略」

A「いや何だそれ、聞いたことねえわ」

B「原田コンプレックス、略してハラコン」

A「ある言葉みたいに言うなよ、気持ち悪いな」

B「だからまあ、何かを決める時は原田さんに聞いてからじゃないと…」

A「何なんだよそれ、要はマザコンみたいなものってこと?」

B「そう、そんな感じ」

A「いやなんでバイト先の人にそこまで依存してるんだよ」

B「いつの間にかそうなってたんだよね」

A「ちなみにそれってどんなバイトなの?」

B「新聞配達」

A「いや絆生まれねえだろ、あれめちゃくちゃ単独行動じゃん」

B「うーん、でも俺はもう、何をするにも原田さん優先で考えちゃうんだよ」

A「気味悪いな、職場の人間関係特殊すぎるだろ」

B「引っ越しした時も、バイク買った時も、風邪引いた時も全部原田さんに相談したし」

A「風邪は医者行け」

B「あとやりたいことが見つからなかった時も、『漫才とかやってみたら?』ってアドバイスしてくれたし」

A「…え?」

B「相方探してた時も、『あの人誘ってみたら?』ってお前を推薦してくれたんだよ」

A「いや俺知らない新聞配達員の差し金でコンビ組まされてたの?」

B「だからもう凄い感謝してるし、絶対に裏切りたくないんだよ」

A「俺は今お前に裏切られた気分だけどな」

B「…あっ、そうだ、どうせなら原田さんも連れて行かない?」

A「え?」

B「その旅行、原田さんも一緒に連れて行かない?」

A「絶対嫌だわ、ってかそもそも旅行券は3人分だし」

B「じゃあお前の友達に抜けて貰えばいいじゃん?」

A「いやなんで当てた奴外して原田ねじ込むんだよ、おかしいだろ」

B「うーん、じゃあ分かった、原田さんの旅費は俺が出すわ」

A「どんだけ一緒に行きたいんだよ、もう2人で行けよ」

B「よし、今週末は4人旅行で決定ね?楽しみだなー!」

A「いや勘弁してくれ…」

B「あっ、そうと決まったら急いでお小遣い貰いに行かないと!」

A「え…?お小遣いって…?」

B「ああ、俺まだ定期的にお母さんからお小遣い貰ってるんだよね」

A「いやしっかりマザコンでもあるんかい、早く自立しろ」



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