漫才「抜け殻」

A「この前知らない家の犬に芸を覚えさせてた時に思ったんだけどさ」

B「他人のペットに一芸仕込むなよ、怖えな」

A「田舎で過ごした子供時代って自由で楽しかったよね」

B「まあね、思ったタイミング以外は共感できるね」

A「俺なんかはよく外で走り回ってたし」

B「うん」

A「虫捕ったり魚釣ったりもしてたね」

B「あー、いいじゃん」

A「でも一番好きだったのは抜け殻」

B「抜け殻?」

A「夏になるとよくセミの抜け殻とか集めた」

B「ああ、たまにそういう人いるよね」

A「ちょっと今日はここで再現してみるから、お前はそこでおすわりしてて」

B「いや犬みたいに言うな、普通に立って見るわ」

A「(離れる)うーん、無いなー…」

B「抜け殻探してるのね」

A「立ち止まって目を瞑ってるのに全然見つからないなー」

B「目を開けて歩き回れよ」

A「そろそろ日が暮れちゃう…今日は1つも捕れなかったな…」

B「まあそういう日もあるでしょ」

A「(ミーン ミーン ミーン)」

B「セミ自体はたくさんいるんだね」

A「仕方ないなー…(手を伸ばす)」

B「あっ、普通にセミ捕まえた」

A「(手元を動かす)」

B「…ん?」

A「(手元を動かす)」

B「おい、ちょっと…」

A「(手元を動かす)……(取り出す)」

B「いや自力でセミの殻剥くなよ!気持ち悪いな!」

A「うーん、このサイズのやつはもう持ってるから要らないな…」

B「剥く前に分かるだろ大体」

A「(手元を動かす)……(被せる)」

B「いや自分で剥いた殻もう1回着せるなよ!どうなってんだ!」

A「よし、今日はもう帰るか」

B「よし、じゃなくて」

A「(歩く)……あれ?知らないおじさんが居る」

B「おじさん?」

A「え?あっちに行ったらお菓子くれるの?やったー!」

B「おいおい、絶対ヤバいおじさんだろ」

A「(歩く)」

B「ダメだよ付いて行っちゃ」

A「(歩く)」

B「危ないって」

A「(歩きながら手を動かす)」

B「…ん?」

A「(歩きながら手を動かす)」

B「おい、ちょっと…」

A「(歩きながら手を動かす)……(取り出す)」

B「いや歩きながらヤバいおじさんの殻剥くな!」

A「あっ、お巡りさん!この人頭おかしいんです!(指差す)」

B「今はお前の方がおかしいよ」

A「え?話を聞きたい?どうして僕に?」

B「人間の殻を剥いたからだよ」

A「ちょっと!やめてください!僕は悪くないのに!」

B「連行されてる」

A「やめて!嫌だ!うわー!(被せる)」

B「いや警官にヤバいおじさんの殻着せるな!」

A「よし、今日はもう帰ろう」

B「だからよし、じゃねえんだよ!もうやめてくれ!」

A「(歩く)」

B「もういいって!」

A「(歩く)」

B「このまま続けてもお前が暴走していくだけだから!」

A「(歩く)」

B「聞いてんのか!おい!(腕を掴む)」

A「やめろ!うわー!(掴みかかる)」

B「いや相方の殻剥こうとするな!いい加減にしろ!」



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