漫才「喧嘩」

A「いいか?落ちついて聞いてくれよ?」

B「え?」

A「俺、ヤンキー漫画に出てくるような喧嘩に憧れてるんだ」

B「いやそんなことで身内が倒れた時の伝え方するな」

A「学生時代ずっと真面目だったから、喧嘩とかそういうのに憧れるのよ」

B「ああそう」

A「だから今日はここでやってみよう」

B「まあいいですよ」

A「お前は俺が歩いてるところに絡んできてくれ」

B「分かった」

A「この2人は犬猫の仲っていう設定ね」

B「犬猿ね、犬猫だと結構共存できちゃうから」

A「(歩く)」

B「おい長谷川!」

A「ん?」

B「お前に話があるんだよ!」

A「おお中村、何だその恰好?葬式帰りか?」

B「いや俺喪服着てねえわ」

A「急に突っかかってきて、何の用だ?」

B「お前昨日俺の仲間に手出したらしいな?」

A「ああ、それは向こうが絡んできたから仕方なく」

B「どうせお前がナメた口きいたんだろ」

A「ナメた口も何も、一言も話してないから」

B「じゃあナメた態度取ってたんじゃねえのか?」

A「道ですれ違っただけだし、こっちは絡まれるまで気付いてすらなかったから」

B「とにかく俺は許さねえからな!ぶっ殺してやるよ!」

A「その判断をする前にまずはちゃんと事実確認をした方が」

B「あ?何ださっきからナメたこと言いやがって」

A「そもそもナメたナメてないなんて主観でしかないから」

B「その態度がナメてるっつってんだよ」

A「だからそんな曖昧な基準で判定されても…」

B「いやどこのヤンキーが序盤の口喧嘩で白熱するんだよ!」

A「くだらない言いがかりに付き合ってる暇はないよ」

B「ヤンキー漫画に舌戦を繰り広げるシーンとか無いから」

A「こっちから手を出した証拠が無いなら俺はもう行くわ(歩き出す)」

B「言い負かして無傷で帰るな、喧嘩ってこういうことじゃないだろ」

A「俺には帰ってやることがあるんだよ」

B「やること?」

A「今日はビーフストロガノフに挑戦するんだ」

B「ヤンキーが楽しく自炊するな」

A「…まあでもそこまでやる気なら仕方ない、相手してやるよ」

B「よーし、すぐにぶっ殺してやるから覚悟しておけ」

A「言っておくが俺はさっき弁当食べちゃった分ちょっと不利だぞ」

B「いや別に大食い対決挑んでるわけじゃないから」

A「じゃあ俺は加速力が高いキノピオね」

B「マリオカートもやらないから」

A「じゃーんけーんぽん(パー)」

B「(チョキ)いやじゃんけんでも決着付けないから、普通に負けてるし」

A「じゃあ何するんだよ」

B「殴り合いだよ!」

A「いいだろう、受けて立つ(しゃがむ)」

B「何してんだ?」

A「受けて立つと言っているんだ(座る)」

B「受けて立つと言いながら座り込んだけど」

A「おいお前、金属バットなんて持ってきたのか」

B「ああ、これでお前の頭を…」

A「(銃を向ける)」

B「おいなんだそれ!なんでそんなもん…」

A「男なら男らしく素手で勝負だ!」

B「いやこいつ脳と身体の連携が取れてない!言と動が相反してる!」

A「さあ受けて立つぞ、どこからでもかかって来い!(寝転ぶ)」

B「いやいい加減にしろよ!立て!お互いに武器を置いて素手で勝負だ!」

A「ああ、分かったよ(立ち上がって構える)」

B「やっと喧嘩らしくなってきた」

A「さあかかって来い!」

B「よし、お前をぶっ潰す!(殴りかかる)」

A「どっち?どっち?」

B「え?」

A「さっきまでぶっ殺すだったのがぶっ潰すになってたけどどっち?殺すの?潰すの?ねえどっち?」

B「いや揚げ足取って口喧嘩に持ち込もうとするな、もういいよ」


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