漫才「会話の相手」

A「お前と喋ってて気付いたけど、会っても話が続かない人っているよね」

B「そんなこと言うなよ、漫才コンビとして致命的だろ」

A「正直もう話すことないもん」

B「何とか頑張ってくれよ」

A「まあでも特に年齢が離れすぎてる人とか難しいよね」

B「確かにそういう相手だと難しいね」

A「知らない人の葬式で知らないお婆さんと会っても話すことないよな」

B「シチュエーションが悪すぎるわ」

A「あと共通の話題が無い人」

B「ああ、会話が続かなかったりするかもね」

A「知らないノルウェー人の結婚式で知らないノルウェー人と会っても…」

B「いやまず見知らぬ人の冠婚葬祭に参加するなよ、あとそもそも知ってるノルウェー人がいないから」

A「でも実は、世界で一番話しにくい相手がついに見つかったんだよ」

B「悲しい大発見だな」

A「それが未来の自分なんだよね」

B「未来の自分?」

A「そう、映画とかでよくあるやつ」

B「自分なんだから話しやすいだろ」

A「いやいや、まずめっちゃ年上だからね」

B「いやまあ20年後とか30年後から来てるイメージあるけど」

A「共通の話題もないし」

B「話題はあるでしょ、未来のことも教えてもらえるし」

A「自分がどうなるか知っちゃったらつまらないじゃん」

B「それは分かるけど」

A「あと何回自転車盗まれるのか、いつまでこの財布使ってるのか、どの小籠包が一番熱かったか」

B「どうでもいいわそんなこと、知っても影響ないだろ」

A「いや絶対ダメだよ、俺ネタバレ嫌いすぎて天気予報も見れないから」

B「あれをネタバレと捉えるなよ」

A「だから自分の未来の話はできないね」

B「じゃあ自分と直接関係ない未来の話は?車が空を飛んでるとかそういう夢のあるやつ」

A「それ聞いた次の日からまた普通に電車通勤とかするんだぞ、むしろテンション下がるわ」

B「まあ確かにな」

A「車窓から夢の残像を眺めて終わりよ」

B「あとは待たされるだけだからね」

A「つまり未来の話は聞きたくないし、今の自分が知ってることは向こうも全て知っていると」

B「聞くことも話すこともないな」

A「そうなんだよ、もう天気の話くらいしかできないよ」

B「予報も見れないのにね」

A「その日の天気一本で勝負しないと」

B「でも最初は話しづらそうでも喋ってたら意外とってこともあるし」

A「そうかな?」

B「ボロクソに言ってた俺ともこれだけ話してるからね」

A「それは漫才中だからでしょ」

B「冷たいな」

A「あっ、じゃあその時はお前と解散するわ」

B「なんでだよ」

A「それで未来の自分と漫才するから」

B「いや勝手にしろ、もういいよ」




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