漫才「上京」

A「この前屋上でギター弾いてたら遠くで花火が見えて」

B「全盛期のキムタクみたいなことしてるな」

A「最近よくやってるんだよ」

B「やめた方が良いよ、全盛期のキムタクでもちょっと面白いんだから」

A「それで慌てて服を着て花火見に行ったんだけど」

B「裸で弾いてたのかよ」

A「周りは学生のカップルとかが多かったわ」

B「青春って感じだ」

A「そうそう、俺なんてその時期の花火大会は鉄格子の隙間から見てたから」

B「怖いので深くは聞きませんけど」

A「なかなか仮釈放が認められなくてね」

B「ちょっともうその話やめよう」

A「とにかく青春らしいことがしてみたいのよ」

B「青春らしいことか」

A「例えば夢を追って上京する親友を見送りに行くとかね」

B「ああ、ドラマとかで見るやつ」

A「あれこそシャバの青春って感じじゃん」

B「服役中は上京できないもんね」

A「じゃあお前がその親友をやってくれ、俺は見送りに行くわ(離れる)」

B「断ったら何されるか分からないのでやりましょう」

A「(駆け寄る)おいツナガワラ!」

B「俺の事でいいのかな?」

A「お別れを言いに来たぞ」

B「おお、来てくれたんだ」

A「当たり前だろ、家近いんだから」

B「そういう理由だったんだ」

A「どうせ間に合うからギリまでパズドラやってたよ」

B「パズドラまだやってるんだ」

A「それにしても驚いたよ、お前がソーセージ作りにドイツまで行くなんて」

B「目的も目的地も違うな」

A「牛乳買いにスーパーまで行くんだっけ?」

B「だとしたら何のお別れなんだよ」

A「餞別のポイントカードだ(渡す)」

B「いらねえよ、東京に行くんだよ俺は」

A「そっか、川合俊一を生で見るの夢だったもんな」

B「そんなことのために地元捨てないから」

A「じゃあ川合俊一は何しに行くんだよ」

B「話の主語変えんな、俺が芸人になりに行くんだよ」

A「芸人か、食レポとかでも手抜くなよ」

B「厳しいな」

A「俺そういうの見てるからな」

B「怖いわ、普通に応援してくれ」

A「しかしこれからは寂しくなるな」

B「そうだね」

A「お前がいなくなったら誰が噴水でバタフライするんだよ」

B「俺そんなことしてたんだ」

A「誰が一輪車で通院するんだよ」

B「とりあえず愉快ではあるな」

A「誰が歩道橋で流しそうめんするんだよ」

B「やっぱり迷惑でもあるわ」

A「行くからには絶対成功して来いよ」

B「おお、頑張るよ」

A「空のビールジョッキ持って待ってるから」

B「まだドイツ行くと思ってるな」

A「そうだ、みんなで寄せ書きしたんだよ(渡す)」

B「寄せ書きか、ありがとう」

A「伝えたいことがない人は好きなパンを書いていくルールになったけど」

B「悲しいルールだな」

A「お前よりメロンパンの方が人気だったわ」

B「早くこの街から出してくれ」

A「よし、じゃあ俺はそろそろ帰るよ」

B「え?最後まで見送ってくれないの?」

A「行かなきゃいけないダンジョンがあるから」

B「いや親友よりパズドラを優先するな、もういいよ」




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