漫才「桑原さん」

A「そういえば、今度みんなで旅行に行くって話あったじゃん？」

B「うん」

A「あれなんだけど、追加でもう一人連れて行っていいかな？」

B「もう一人？」

A「そう、桑原さんっていう人なんだけど」

B「桑原さん？俺知らない人？」

A「あー、いや、前に何回か会ったことあるはず」

B「マジで？どの人だろう…？」

A「えーっとね、俺のバイト先の人なんだけど、眼鏡かけてて背の低い…」

B「あー、はいはい、あのめっちゃ声高い人だ？」

A「いや、それはあれだ、城田さんだ」

B「ああそうか、城田さんか」

A「俺の高校時代の先輩城田さんだ、あの人とはまた別」

B「うーん、じゃあどの人だろう…？」

A「えーっとね、見た目で覚えてないかな？あのー、髪型が結構特徴的で…」

B「あー、はいはい、あのちょうど膝の位置まで伸ばしてる銀髪の人だ？」

A「いや、それはあれだ、城田さんだ」

B「ああそうか、城田さんか」

A「定期的に散髪に行ってあの長さをキープしてる城田さんだ、あの人とはまた別」

B「うーん、じゃあどの人だろう…？」

A「えーっとね、ほらあの、動物好きで、ペットの写真を見せてくる…」

B「あー、はいはい、あのクリオネのメスにリボン付けて飼ってる人だ？」

A「いや、それはあれだ、城田さんだ」

B「ああそうか、城田さんか」

A「Tシャツを着せたインコも飼ってる城田さんだ、あの人とはまた別」

B「うーん、じゃあどの人だろう…？」

A「えーっとね、ほら、去年の1月にも会ってるんだけど…」

B「あー、はいはい、あの2020年から二重になった人だ？」

A「いや、それはあれだ、城田さんだ」

B「ああそうか、城田さんか」

A「元旦にプチ整形した城田さんだ、あの人とはまた別」

B「うーん、じゃあどの人だろう…？」

A「えーっとね、ほらあの、ちょっと前に手術して大変だった…」

B「あー、はいはい、あの麻酔を断って心臓を自撮りした人だ？」

A「いや、それはあれだ、城田さんだ」

B「ああそうか、城田さんか」

A「たまに痛覚を家に忘れてくる城田さんだ、あの人とはまた別」

B「いやー、これもう思い出せそうにないな」

A「そうか…」

B「申し訳ないけど、旅行の件は断っておいてくれる？」

A「えー、あの人すごい楽しみにしてたのに…」

B「でも俺からすると最早知らない人だから」

A「お前と会えるのも楽しみだって言ってたんだよ？」

B「え？」

A「がっかりするだろうなー」

B「マジで？桑原さんそんなこと言ってたの？」

A「いや違う、城田さんが言ってた」

B「いや城田さんかい、どういうことだよ」