漫才「エピソードトーク」

A「あのー、実は俺、最近エピソードトークの練習してて」

B「ほう」

A「やっぱり喋りで笑いが取れる人って格好いいじゃん?」

B「まあ確かにね」

A「俺もそうなりたいから、ちゃんと上手くオリジナリティのあるトークができるように頑張ってみたんだけど」

B「うん」

A「ただちょっと、オチがまだ弱いかなー?って気がしててさ」

B「ほうほう」

A「だから今日は一回お前に聞いてもらって、正直な感想を教えてほしいんだよね」

B「あー、それは別に構わないよ」

A「マジで?じゃあ早速話してみるわ」

B「はいはい」

A「…あのー、これはちょうど一年前に」

B「うん」

A「この道を通った夜の話なんだけど」

B「…ん?」

A「昨日の事のように今はっきりと想い出すんだよね」

B「え…?」

A「大雪が降ったせいで車は長い列でさ」

B「おい…」

A「どこまでも続く赤いテールランプが綺麗でさ」

B「ちょっと…」

A「サイドシートの君はまるで子供のように微笑を浮かべたまま眠れる森の少女みたいだったのよ」

B「いやロードだな」

A「ゆすって起こした俺をさ」

B「絶対にロードだ」

A「恨めしそうににらんでさ」

B「虎舞竜のロードだ」

A「俺の手を握り返して『愛がほしい・・・』と言ったのよ」

B「こいつのエピソードトーク、ロードのパクリだ」

A「何でも~ないような事が~」

B「あっ、もう歌ってる」

A「幸せだったと~思う~」

B「めちゃくちゃ歌ってる」

A「何でも~ない夜の事~二度とは戻れない夜~!」

B「うるせえな、もうやめろ」

A「え?」

B「おい何してるんだこれ、どこがオリジナリティのあるエピソードトークなんだよ」

A「あー、やっぱりオチが弱かった?」

B「そういう問題じゃねえよ」

A「『二度とは戻れない』っていうオチだったんだけど」

B「重いわ、誰が笑うんだそれで」

A「あとあれだね、全部話すと時間かかっちゃうのが良くないね」

B「いや確かにロードめちゃくちゃ長いけど、そこじゃないから」

A「とにかく今日はちゃんと話せて良かったよ、ありがとう」

B「お前最後歌ってただろ」

A「おかげで改善点も見つかったしほんと助かったわ」

B「え?改善点って何よ?」

A「やっぱり話し始める前にハーモニカ吹いた方がいいわ」

B「いや結局めちゃくちゃロードじゃねえか、いい加減にしろ」



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