漫才「鳥が逃げた」

A「実はこの前、飼ってる鳥が逃げ出しちゃってさ」

B「そうなんだ」

A「競艇場、雀荘、居酒屋、全部探し回ったんだけど見つからなくて」

B「おじさんを探す時のルートだ」

A「だから残念だけど今回は諦めて、また新しく飼い始めようと思ってさ」

B「まあそれがいいかもね」

A「それで今飼おうと思ってるのが恐竜なんだけど」

B「恐竜?」

A「ティラノサウルスってトイレとか覚えるのかな?」

B「いやいやちょっと待てよ、恐竜?恐竜飼おうとしてるの?」

A「うん」

B「唐突すぎるでしょ、さっきまで鳥とおじさんの話してたのに」

A「でも鳥の祖先は恐竜らしいし」

B「いやまあそういう話聞いたことあるけど」

A「しかも恐竜なんてめちゃくちゃ先輩だから大体おじさんでしょ」

B「おじさん通り越してもう死んでるのよみんな」

A「とにかく、鳥の次は恐竜っていうのが普通の流れだから」

B「鳥の次は新しい鳥だろ普通は」

A「俺はもう恐竜飼うって決めたんだよ」

B「トカゲとかじゃダメなの?たまにイグアナとか飼ってる人いるけど」

A「あー、イグアナね」

B「なんか飼い主のこと覚えたり、言葉を聞き分けたりするみたいよ」

A「へー、すごいね」

B「それだけ賢ければ飼うのも楽しいんじゃない?」

A「でもイグアナは世話とか大変そうだからな」

B「いや絶対恐竜の方が大変だろ」

A「そうかな?」

B「当たり前だろ、そもそも飼う前に食べられちゃうし」

A「ああ、それは大丈夫」

B「え?」

A「お好み焼きあげるから」

B「お好み焼き?」

A「あいつらが獲物を襲ってそのまま食べてたのは、それしか選択肢が無かったからでしょ?」

B「まあね」

A「ちゃんともっと美味しい物をあげてれば、狩りなんてしなくなるよ」

B「そういうものかな?」

A「今はもう、マヨネーズとかあるから」

B「お口に合えばいいけど」

A「これで自分が食べられる心配はないね」

B「ってか、数ある食べ物の中でなんでお好み焼きにしたの?」

A「俺が好きだから」

B「何だそれ、恐竜に合わせろよ」

A「ペットは飼い主に似るって言うでしょ?」

B「味覚まで似るとは聞いてないな」

A「きっと喜んでくれるよ」

B「それで仮に食われなかったとしても、家に入らないだろ」

A「ああ、それね」

B「庭で飼うにしてもとんでもなく広い所じゃないと…」

A「それはもう大丈夫」

B「え?」

A「俺が住んでる家に恐竜を入れるんじゃなくて、恐竜の背中に俺が住むから」

B「なんだそのクソみたいな逆転の発想」

A「大丈夫、俺ソファーさえあれば眠れるから」

B「ソファーが無いんだよ」

A「しかもそれで外を歩いてれば、鳥も見つかるかもしれないし」

B「見つけてもそいつが食うだろ」

A「だからお好み焼きあげるから狩りはしないんだって」

B「恐竜の背中でどうやってお好み焼き作るんだよ?」

A「自分で作れなくても二人でお好み焼き屋行けばいいじゃん」

B「だから入らねえだろ」

A「東京ドームくらい広い店行くから」

B「そんな店無いし、あってもたぶん不味いだろ」

A「そうなの?」

B「お好み焼き屋なんて狭ければ狭いほど美味いんだから」

A「じゃあ俺が一人で狭い店行って買ってくるよ」

B「その間恐竜はどうするんだよ」

A「それはお前が預かっててくれればいいだろ」

B「絶対に嫌だわ」

A「頼むよ、お前にも1枚やるから」

B「もういいもういい、付き合いきれないわ、俺は絶対に関わらないから」

A「あー、いや、それは困るな」

B「?」

A「お前にはお願いしたいことがあるから」

B「だから預かるのは嫌だって…」

A「それはもう頼まないよ」

B「え?じゃあ何?」

A「お前にはまずタイムマシンを作って欲しいんだよね」

B「いや無茶を言うな、いい加減にしてくれ」



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