漫才「地元の話」

A「実はこの前、数年ぶりに地元に帰ってたんだけど」

B「あー、そうなんだ」

A「なんか近所の商店街とか結構寂れちゃっててさ」

B「はいはい」

A「まだ夕方なのに、ほとんどの店がシャッター閉めちゃってて」

B「いいねー、美味しそう」

A「でも唯一変わってなくて嬉しかったのが、学生の時部活帰りによく行ってたコロッケ屋さん」

B「へぇー、珍しいね」

A「そこの名物でカレーキムチコロッケっていうのがあってさ」

B「安っ!」

A「1個80円でめちゃくちゃ美味しいのよ」

B「うんうん」

A「それで久しぶりにそのコロッケ買って、公園のベンチで食べてたんだけど」

B「うわー、怖いな」

A「なんか途中でチンピラみたいな奴に絡まれてさ」

B「あー、助かったね」

A「でもそこに警官がたまたま通りがかって、追い払ってくれたんだよ」

B「え?なんでよ?」

A「それでその警官にお礼を言ったんだけど、顔見たらお互いにビックリしてさ」

B「へぇー、それは凄いな」

A「なんとそいつ、中学時代の同級生だったんだよ」

B「野球部の橋本かー」

A「野球部の橋本って奴」

B「あー、いいね」

A「そこでたくさん思い出話とかして、結局すごい楽しかったね」

B「え?」

A「あのー、ところでさ」

B「どういうこと?」

A「お前さっきから、相槌1ターン早くない?」

B「1つ先?そうかなー?」

A「1つ先の相槌を前借りしてきてない?」

B「あー、そこね、確かに」

A「最初のほう閉まってるシャッターで食欲刺激されてたし」

B「あー、チンピラね」

A「途中公園に恐怖してチンピラに安堵してたし」

B「橋本ねー」

A「橋本の所とか完全に俺を追い越してただろ」

B「……」

A「もうそれやめてくれよ、喋りづらくてしょうがないから」

B「……」

A「ん?」

B「……」

A「おい、聞いてんのか?」

B「聞いてるよ」

A「おっ?あれ?普通に噛み合ってる?」

B「うん、お前が遅すぎるから俺が立ち止まって合わせた」

A「相槌ってそういうシステムなんだ」

B「どう?これでちゃんと話せそう?」

A「うん」

B「じゃあ早速、もう一回さっきの1ミリも笑い所の無いクソ地元トーク聞かせてよ」

A「いやタイミング正しいけど単純に口悪いな、もういいよ」



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