漫才「無敵状態」

A「いやー、ちょっと聞いてくれよ」

B「どうした?」

A「実は俺、今無敵状態なんだよね」

B「無敵状態?」

A「そうなんだよ、昨日偶然スター取っちゃって」

B「いやいや嘘つくなよ」

A「じゃあ俺の心臓の音聞いてみて」

B「(耳を澄ます)」

A「(テーテーテッテレッ テッテテッテー テーテーテッテレッ テッテテッテー テーテーテッテレッ テッテテッテー テーテーテッテレ…)」

B「…うわマジじゃん」

A「マジなのよ」

B「スターなんてどこで見つけたの?」

A「路地裏でゴミ箱と室外機の間に落ちてた」

B「案外そういう場所にあるんだね」

A「見つけるのはこれで4回目くらいかな」

B「そんなに取ってるんだ」

A「古本屋で奥の棚に挟まってたり」

B「ほうほう」

A「なんとなくポケットに手突っ込んだら入ってたり」

B「小銭みたいだな」

A「あとは野良猫が咥えて持ってきたこともあるね」

B「その場合は野良猫が無敵になるんじゃないの?」

A「いや、野良猫は元々無敵だから」

B「ああそうか」

A「よく喉鳴らしてるけどあれ近くで聞くと低音で無敵BGM流れてるから」

B「どうりで何も怖がってないわけだ」

A「そういうこと」

B「でも無敵状態って具体的にはどうなるの?」

A「どんな攻撃を受けても全くダメージを受けないね」

B「そもそも日常で攻撃されることなんてある?」

A「あるよ、昨日も態度の悪いコンビニ店員に舌打ちされたり、居酒屋で自分の注文だけちゃんと通ってなかったり」

B「あっ、そういう精神的なやつか」

A「家の鍵落として公園のベンチで寝たしね」

B「無敵なのに散々だな」

A「でもダメージはゼロ、全く腹も立ってない」

B「なるほど、それはすごい」

A「もちろん肉体的な攻撃にも強いよ、ちょっと殴ってみて」

B「マジで?大丈夫?」

A「そりゃ無敵だからね」

B「じゃあいくよ?(殴る)」

A「はいはい、こんな感じね」

B「(殴る)」

A「全然痛くない」

B「すげえ!(殴る)(殴る)」

A「ほら、完全にノーダメージで…」

B「(殴る)(殴る)(殴る)」

A「ね?全く問題無く…」

B「(殴る)(殴る)(殴る)(殴る)」

A「いや長いな!」

B「え?無敵なんでしょ?」

A「ダメージはないけど手数で腹立つわ」

B「でもさっきは何されても腹立たないって」

A「あれ?確かに、おかしいな」

B「そういえばスターって時間が経つと効果切れるよね」

A「(胸を押さえてかがむ)…クソッ…あのコンビニ店員何なんだよ…」

B「やばいもう切れてきてる」

A「なんか首と背中も痛いしよ…」

B「ベンチで寝たからだ」

A「うわ…耳から黄色い液体が…」

B「謎の副作用出てる」

A「ダメだ…体中が痛くなってきた…」

B「俺が11発殴ったからな」

A「…許せない!絶対に許せない!」

B「悪かったって!勘弁してくれよ!」

A「なんで俺のレモンサワーだけまだ届いてないんだ!」

B「いや居酒屋の店員にキレてたのかよ、もういいよ」


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