漫才「不純」

A「どうもー、よろしくお願いしますー」

B「お願いしますー」

A「あのー、実は俺、今めちゃくちゃ古いアパートに住んでるんだけどさ」

B「うん」

A「壁が薄くて隣の住人の生活音が聞こえたり、しょっちゅう色んなところが壊れたりして結構大変なんだよね」

B「あー、なるほど」

A「だから早く売れて良い家に引っ越したいなーと思ってて」

B「ん…?」

A「まあそのためにも二人で頑張っていきたいんだけど…」

B「ちょっと待って」

A「え?」

B「不純だな」

A「不純…?」

B「良い家に住みたいとかお金が欲しいとか、不純な動機でお笑いやってるな」

A「いや別にそれくらいいいだろ」

B「俺はこういう笑いに対して誠実じゃない奴が大嫌いなんだよ」

A「誠実じゃないとかそういう話じゃなくて、単純にモチベーションの一つとして…」

B「お客さんの笑顔が見たい、モチベーションはそれだけで十分だろ」

A「どうしたんだよ急に、お笑い聖人みたいになってるけど」

B「俺はもう、こういう不誠実な奴は本当に許せないから」

A「いやいや俺だって真面目にやってるって、バイトも掛け持ちしながら頑張ってるし」

B「掛け持ち?そうなの?」

A「そうだよ、昼間のと夜勤のとで2つ」

B「ほう」

A「今週なんて親戚の結婚式が立て続けにあったから出費が凄くてさ、その分シフトも増やしたりして大変だったよ」

B「ん…?」

A「1日中バイトしてたからずっと寝不足で…」

B「ちょっと待って」

A「え?」

B「不純だな」

A「不純?」

B「お前の睡眠時間を削って舞台上でのパフォーマンスを低下させるその親戚、お笑いに対して不純だな」

A「いや親戚は仕方ないだろ、身内の結婚にまでケチつけるなよ」

B「身内だろうと笑いに不誠実な奴は絶対に許せないんだよ」

A「余計なお世話だから」

B「どうせあれだろ?不純な会場で不純なケーキに不純なナイフで不純に入刀してるんだろ?やめちまえよ!」

A「何だ不純に入刀って、いい加減にしろよ」

B「まったくどいつもこいつも…」

A「なんか今日やたらと笑いにストイックな感じ出してくるけど、何が目的なんだよ?」

B「は?目的?そんなもん決まってるだろ」

A「え?」

B「仕事への誠実さをアピールしてグラビアイドルと付き合いたいんだよ」

A「いやお前が一番不純じゃねえか、ふざけんなよ」



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