漫才「ここまで出てる」

A「どうもー、お願いしますー」

B「お願いしますー」

A「いやー、実はね、近々バイク買おうと思ってるのよ」

B「え?」

A「前からずっと欲しかったんだよねー」

B「ちょっと待って、そんな金あるの?」

A「まあ一応ね」

B「いやいや、じゃあバイク買う前に俺に金返せよ」

A「返す?俺お前から金なんて借りてたっけ?」

B「おいおい忘れてたのかよ、ふざけるなよ」

A「ごめんごめん」

B「早く返せよ」

A「あれ?でも、いつ、何のために、いくら借りたんだっけ?」

B「おい何も覚えてないのかよ、先月末にお前が必死にお願いしてきて…」

A「ああー!ちょっと待って!」

B「ん?」

A「自分で思い出させて!」

B「え?」

A「先に言われるとなんか悔しいから!ここは自力で思い出させて!」

B「それ芸能人の名前ど忘れした時にやるやつだろ、自分の借金額でやるな」

A「もうここまで出てるんだよ!(喉を指す)」

B「知らねえよそんなの、お前がパチンコで負けて家賃払えないって言うからそれで…」

A「ああー!待って待って!言わないで!」

B「何だよ面倒臭えな」

A「ここまで出てるんだよ、もうすぐ完全に思い出し……ん?あれ?」

B「どうした?」

A「やばい、移動してる」

B「え?」

A「さっきまで喉元に居たのに、今体中を駆け巡ってる」

B「いやどういう状況だよ」

A「これたぶんあれだ、一回心臓まで行って、そこから全身に送り込まれてるわ」

B「何だそれ怖えな」

A「やばい!見失った!」

B「は?」

A「くそー、ダメだ!体外に排出されたっぽい!」

B「一人で何やってるんだ」

A「でも大丈夫、意識はまだ繋がってるから」

B「もういいって、とにかく5万返してくれよ」

A「集中して記憶を呼び起こそう」

B「いいから早く…」

A「うっ!頭の中で物凄い音が!」

B「今度は何?」

A「ううっ…頭の中で鳴り響いてる…」

B「大丈夫かよ?」

A「なんか、凄いボリュームでリーチ!って言ってる…」

B「いやパチンコ屋の騒音じゃねえか」

A「うわっ!今度は何か見える!」

B「何?」

A「中年女性が金銭を要求してきてる…」

B「どういうこと?」

A「なんか今月こそは払ってもらう、とか言ってる…」

B「大家さんだろそれ、お前継続的に家賃滞納してたのかよ」

A「あっ、今度は数字が現れた、一体何なんだ…?」

B「たぶんお前の借金額だな」

A「まず5があって、それから0が一つ…二つ…三つ…四つ?」

B「そう、5万ね、いいから早く返してくれよ」

A「…5つ?」

B「え?」

A「…6つ?…うん、全部で0が6つだ」

B「いやお前俺以外から495万借りてるのかよ」

A「あー、思い出した、全て思い出した」

B「多重債務者の記憶が戻ったぞ」

A「確かにお前から5万借りてたわ、申し訳ない」

B「もう5万じゃ弱いけどな」

A「5万はこの後ちゃんと返すよ」

B「ああそう、まあそれならいいけど」

A「そしてその後で欲しかったバイクを買いに行く」

B「え?」

A「よし、これでやっと解決したね」

B「バイク買いに行くってお前、絶対そんな余裕ないだろ」

A「あー、大丈夫大丈夫」

B「どこが大丈夫なんだよ」

A「お金に関しては大丈夫だから、心配しないで」

B「え?何?どういうこと?」

A「最近、何もしなくてもお小遣いくれる金持ちのおばさん見つけたから」

B「いやこいつ生粋のクズじゃねえか、もういいわ」



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