漫才「いい年」
A「どうもー、お願いしますー」
B「お願いしますー」
A「いやー、しかし俺らももういい年じゃない?」
B「まあね」
A「最近は少し無理して動くとすぐ腰とか膝とか痛くなっちゃったりして、ほんと大変だよね」
B「え?さすがにまだそこまでは老いてなくない?言うて二十代だし」
A「いや、昔と比べるとって話よ」
B「あー、まあそりゃ十代の頃と比べるとね、多少はあるかもね」
A「ダメだよ?自分の体のこととかちゃんと考えないと」
B「じゃあお前は何かしてるの?健康のために」
A「俺はね、なるべく自炊するようにしてる」
B「あー、それは良いね、俺なんて全く料理できないから尊敬するよ」
A「あっ、それなら誰でも簡単にできる料理教えてあげようか?」
B「おお頼むよ、俺カレーとかも作れない感じだけどそれでも大丈夫?」
A「全然大丈夫」
B「それは助かるね」
A「えーっと、じゃあまず、酢飯と生魚の切り身を用意して」
B「え?」
A「それから酢飯を片手で適当な大きさに握って」
B「いや、寿司作ろうとしてない?」
A「そこに生魚の切り身を乗せたらはい出来上がり」
B「はい出来上がり、じゃなくて」
A「これめちゃくちゃ簡単で誰でもできるから、是非試してみて」
B「いやめちゃくちゃ難しいから、何年も修行するやつだから」
A「え?」
B「日本人が寿司を簡単とか言うなよ」
A「いや、俺が言ってるのはあくまで昔と比べて、ってことね?」
B「どういうこと?」
A「昔はそもそも米を炊くのにも火を着けたり薪をくべたりと大変だったわけよ?生魚の保存も冷蔵庫がないから難しいし、他にも…」
B「いやそれ料理自体の難易度と関係ないだろ、単純に文明の差だから」
A「その時代と比べたらめちゃくちゃ簡単だって話」
B「寿司は現代でも十分難しいから、俺には無理よ」
A「そうかー、じゃあ自炊はきついか」
B「なんで選択肢寿司しかないんだよ」
A「それならやっぱり運動してみたら?」
B「運動?」
A「毎日ジョギングとかしてたら健康になるでしょ」
B「ああ、まあでもジョギングってどうせ続かないんだよなー」
A「あっ、大丈夫」
B「え?」
A「俺、最高のジョギングコース知ってるから」
B「ほう、どんなコースなの?」
A「足への負担も少ないし、疲れにくい」
B「マジで?良いじゃん」
A「しかも周りは絶景、これ実は長く続けるうえで結構大事なんだよ」
B「はいはい、景色が変わらないと結局退屈で続かなくなっちゃったりするんだよね」
A「よし、じゃあ早速具体的なコースの説明をしていくね?」
B「頼む」
A「まず、お前の家の近くにでかい公園があるだろ?」
B「あるね、あそこも結構走りやすそうだけど」
A「でもそこを通り抜けた先にもっと良い場所があるから」
B「全然知らなかったな」
A「しばらく進むと交差点があるでしょ?」
B「あるね」
A「じゃあその手前からスタートして」
B「え?」
A「走り始めようとして、信号が赤で立ち止まって」
B「もう躓いてない?」
A「まあまあ待って」
B「走りやすいどころか走り出せてないけど」
A「青になって進むと、その先に人通りの多い商店街があるから」
B「いや邪魔になっちゃうじゃん」
A「そこはちゃんと一旦歩いて通過して」
B「もう全然走れてない」
A「しばらく行くと神社に続く石の階段があるから」
B「石の階段?」
A「そこを全速力で駆け上がって」
B「いや足への負担凄そうだけど」
A「1712段あるから頑張って」
B「死んでしまうわ」
A「そこを登り切ったら神社で『健康になりたい』ってお願いするんだよ」
B「いや結局神頼みかよ、何が最高のジョギングコースだ」
A「ここめちゃくちゃ走りやすいから、ほんとオススメだよ」
B「めちゃくちゃ走り辛いわ、交差点渡るし商店街通るし階段上るし」
A「全然疲れないよ」
B「しっかり疲れるわ、いい加減にしろ」
A「いやいや、だから何回も言ってるけど、昔と比べてみな?」
B「いやうるせえわもう、意味ないんだよその比較」
A「昔のジョギングコースには、巨大なティラノサウルスやヴェロキラプトルの群れがその辺にうじゃうじゃ居たんだよ?」
B「昔過ぎるだろ、ジュラ紀にジョギングの概念無いから」
A「それと比べたらめちゃくちゃ走りやすいって話」
B「もういいもういい、お前まともに話す気ないだろ」
A「そんなことないよ」
B「適当なことばっかり言いやがって」
A「まあまあ…」
B「お前と話してたらストレスで体壊すわ」
A「落ち着けって、そんなこと言っても仕方ないだろ?」
B「仕方ない?」
A「俺、これでも昔と比べたらマシになってるんだから」
B「いや昔のお前適当すぎるだろ、いい加減にしろ」
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