漫才「知ってる」
A「どうもー、よろしくお願いしますー」
B「よろしくお願いしますー」
A「あのー、実は俺、最近ドラマにハマってて」
B「ドラマ?」
A「そう、刑事ドラマね」
B「……」
A「特にあの犯人を取り調べるシーンが格好いいんだよね」
B「うーん…」
A「それで俺もいつかああいうの出てみたいなーと思ってるんだけど、今日はここで少し…」
B「あっ、ちょっとごめん」
A「ん?」
B「知ってるわ」
A「え?」
B「その話の流れ、もう知ってるわ」
A「どういうこと?」
B「ドラマ出たいから刑事と犯人に分かれて練習しようって話でしょ?俺それ知ってるんだよ」
A「だからその知ってるって何?」
B「いや、これね、色んな人が同じような話してるの見てきたけど、全然上手く行かないんだよ」
A「え?」
B「目撃証言がめちゃくちゃだったり、カツ丼頼もうとしてひと悶着あったり、泣き落としの歌の選曲がおかしかったりで全く練習にならないのよ」
A「いやそれでいいんだよ」
B「それでいい?」
A「それで大成功なんだよ、漫才は」
B「いやでも、お前は演技の練習がしたいんだろ?」
A「演技の練習はしたくないのよ、そもそも客前で練習をするわけがないのよ」
B「あっ、じゃあ今から帰ってお芝居の学校に行くってこと?」
A「いやそんな行動力バグってるタイプの人間じゃないのよ」
B「何なら知り合いの演出家とか紹介しようか?」
A「遠慮しておくよ、ってかお前知り合いに演出家いるのか」
B「合いそうな人を選んでもらえればこっちで連絡しておくけど?」
A「複数いるのか、どういう人脈なんだ」
B「あっ、そう言えばドラマ関係者のエイちゃんとも仲良いからよければ…」
A「いやもういいもういい、この話はもういい」
B「え?」
A「あのー、正直別にドラマも出たいと思ってないのよ、俺」
B「そうなの?」
A「そういう話題というか設定というか、ただそれだけの話でさ」
B「なんだ、じゃあエイちゃんとは連絡取らないのね?」
A「そもそもそのエイちゃんって誰なんだよ?」
B「船越英一郎だよ」
A「いや船越英一郎かい、交友関係謎すぎて怖いな」
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