漫才「宇宙人」
A「なあ、宇宙人っていると思う?」
B「宇宙人?そんなのいるわけないでしょ」
A「えー、なんでそう思うの?」
B「だって見たことないもん」
A「見たことないからっていないとは限らないじゃん」
B「俺は自分の目で見た物しか信じないって決めてるんだよ」
A「夢がないね」
B「じゃあお前はいると思うの?」
A「うん」
B「見たことないのに?」
A「うん、絶対いるよ」
B「ほう……じゃあお前あれだな?ゴチャノロスもいるってことでいいな?」
A「え?」
B「ゴチャノロスも実在するってことでいいよな?」
A「ゴチャノロス?いや、何それ?」
B「ゴチャノロスはゴチャノロスだよ」
A「だからそれは何なんだよ?知らない物の話されても困るから」
B「それならお前は宇宙人のこと知ってるのかよ?」
A「え?まあ、だから、他の星に住んでてそれで…」
B「他の星って?他の星って具体的にどこ?」
A「いや、まあ、火星とか…?」
B「火星のどこに住んでるの?」
A「え?そんなの分からないよ」
B「じゃあ何食べて生きてるの?」
A「うーん、分からない…」
B「話す言語は?」
A「いや…」
B「人口は?」
A「さあ…」
B「金曜日の夜と土曜日の朝どっちが好き?」
A「知らないよそんなこと」
B「ほら、お前宇宙人のこと何も知らないじゃん」
A「週末のどこの時間が好きかなんて知るわけないだろ」
B「けど、住んでる場所も言語も人口も知らなかったでしょ?」
A「まあそうだけど…」
B「それでもいると思うの?宇宙人」
A「うん…」
B「じゃあゴチャノロスもいるよね?」
A「いや、だからそれ何なんだよ」
B「ゴチャノロスだよゴチャノロス」
A「もう名前は分かったようるせえな」
B「いるってことでいいね?」
A「よくないよ、だって何も知らないもん」
B「それは宇宙人も一緒じゃん」
A「いや、ゴチャノロスの場合具体的な情報どころか概念も知らないから」
B「ゴチャノロスは木曜の昼が好きらしいよ」
A「なんで好きな曜日の情報だけあるんだよ、めちゃくちゃ珍しいし」
B「あと森に住んでて、ジャズが好きで、カップ焼きそばにめちゃくちゃマヨネーズかけて食べるんだよ」
A「イメージし辛いな」
B「これだけ情報があるってことは、実在するよね?」
A「いやいや、それ情報というかお前が勝手に言ってるだけだろ?」
B「宇宙人だって誰かが勝手に言ってるだけでしょ」
A「うーん……でもほら、宇宙人には目撃情報があるじゃん」
B「あー、目撃情報ね」
A「見たことある人が実際にいるから」
B「それならゴチャノロスにも目撃者はいるよ」
A「え?」
B「だって俺、ゴチャノロス見たことあるもん」
A「いや嘘付くなよ」
B「でっかい石をどけたら下にいた」
A「それただの虫だろ、何が目撃者だよ」
B「間違いないって」
A「絶対違うわ、見間違いかただの嘘だろ」
B「じゃあ宇宙人の目撃情報がそうじゃないって言い切れるの?」
A「いや…」
B「あんなの全部信用できないでしょ」
A「でも写真とか映像とかあるし…」
B「そんなのいくらでも偽造できるよ」
A「うーん…」
B「結局宇宙人なんてゴチャノロスの話と大して変わらないんじゃない?」
A「ああもう分かったよ、宇宙人なんていない、自分で見た物しか信じない、これでいい?」
B「よし、やっと現実を見てくれたか」
A「クソッ…夢のない奴だな…」
B「俺たち大人なんだから、ちゃんと現実的な話をしないと」
A「はいはい分かりましたよ、それで現実的な話って何?」
B「まあやっぱり仕事の話とかかな」
A「つまらなそうだなー」
B「実は俺、最近点検のバイト始めたんだけど、そこの先輩が…」
A「点検?ガスとかそういうやつ?」
B「いや違うよ、全然違う」
A「ほう、じゃあ何?」
B「UFOだよ」
A「え?」
B「UFOの点検してるんだよ。まあそれで先輩が…」
A「いやいやいやちょっと待って、何?UFOの点検?」
B「うん。最初は怪しいなと思ってたけど、行ったらマジだった」
A「あれバイトに点検任せてるのかよ」
B「みたいだね」
A「っていうか、あれ?お前宇宙人なんていないとか言ってなかった?」
B「うん、いないと思う」
A「それでバイトの内容は?」
B「UFOの点検」
A「いやおかしいだろ、むしろ証人になるべきだから」
B「でも見てないからね」
A「え?」
B「持ち主が外に出てる間に点検するシステムだから、宇宙人は見てないんだよ。だから俺は信じない」
A「いやさすがに無理があるだろ」
B「信じない」
A「信じろよ」
B「信じない」
A「信じろって」
B「俺はもっと現実的な話をする」
A「いや今更バイト仲間とのちょっとしたエピソードとか聞く気にならないから」
B「あのー、この前先輩と」
A「いいよ、興味ないって」
B「木曜にジャズ聞きながらカップ焼きそば食べてたんだけど」
A「いやたぶんこれゴチャノロスの話じゃねえか、もういいよ」
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