漫才「手伝って」

A「実はもうすぐ犬を飼い始めるんだけどさ」

B「おお、いいね」

A「でも今の家じゃ飼えないから、まずは引っ越しをするんだよ」

B「ほうほう」

A「それでお前にも引っ越し手伝って貰えないかな?と思って」

B「あー、なるほど」

A「来週の日曜なんだけど、どうかな?」

B「いやー、是非手伝いたいね」

A「マジで?助かるわ」

B「ただねー、ほら、引っ越しって重い物持ったりするでしょ?」

A「うん」

B「実は俺、今腰痛めてるからさ」

A「ああ、そうなんだ、それだと厳しいね」

B「いやー、本当は手伝いたいんだけどね、ごめんね」

A「いやいや、仕方ないよ」

B「申し訳ないね」

A「全然いいよ……あっ、じゃあ運転はどう?」

B「え?」

A「荷物運ぶ時に運転してくれるとすごい助かるんだけど、どうかな?」

B「あー、それなら腰痛めてても問題ないね」

A「おお、じゃあお願いしてもいいかな?」

B「ただねー、ほら、運転ってアクセル踏んだりしなきゃいけないでしょ?」

A「まあそりゃあね」

B「実は俺、今膝が内側に折り込まれてるからさ」

A「ああ、そうなんだ、それだと厳しいね」

B「もう立ってられるのが奇跡みたいな状況だから、ごめんね」

A「いやいや、仕方ないよ」

B「本当は手伝いたいんだけどねー」

A「……あっ、じゃあ本並べるのはどう?」

B「え?」

A「本をたくさん持って行くから、本棚に並べるの手伝って貰えるとすごい助かるんだけど」

B「あー、それなら足と腰痛めてても問題ないね」

A「おお、じゃあお願いできる?」

B「ただねー、ほら、それって結構指先使うでしょ?」

A「指先?まあ多少はね」

B「実は俺、全指深爪しすぎてまだ出血が止まらないからさ」

A「ああ、そうなんだ、それだと厳しいね」

B「このまま手伝うと呪われた本棚みたいになっちゃうから、ごめんね」

A「いやいや、仕方ないよ」

B「本当は手伝いたいんだけどねー」

A「……あっ、じゃあ犬見ててくれない?」

B「え?」

A「引っ越しの日に犬も来るからさ、俺らが作業してる間様子見ててくれない?」

B「あー、それなら足と腰と指痛めてても問題ないね」

A「おお、じゃあお願いできる?」

B「ただねー、ほら、生き物だし何かあった時のためにちゃんと見守ってなきゃいけないでしょ?」

A「まあそうだね」

B「実は俺、今他人のコンタクトレンズ着けててほとんど何も見えないからさ」

A「あー、そうなんだ、それだと厳しいね」

B「あとそのせいで白目が獅子舞くらい赤くなってるから、ごめんね」

A「いやいや、仕方ないよ」

B「本当は手伝いたいんだけどねー」

A「……あっ、じゃあ作業が終わった後にみんなで打ち上げみたいなのやるから、それだけでも来ない?」

B「あー、それなら足と腰と指と目痛めてても問題ないね」

A「おお、じゃあ来られそう?」

B「ただねー、ほら、打ち上げってみんなでお喋りするでしょ?」

A「まあするね」

B「実は俺、今両耳にカナブン詰まってちゃってるからさ」

A「カナブン?」

B「この前ちょうどフィットするサイズのカナブンが飛び込んで来たから、今はみんなの話が聞き取れないんだよね」

A「あれ?でも今普通に話せてない?」

B「ああ、まあ、たしかに…」

A「詰まってないじゃん、カナブン冤罪じゃん」

B「ごめんごめん」

A「本当は全部嘘なんじゃない?」

B「いやー、まあ、そうなんだよね」

A「そんな嘘付いてまで断りたかったの?」

B「いや、手伝いたいっていうのは本当なんだよ」

A「え?」

B「ただねー、ほら、ちょっと色々事情があってさ」

A「事情?」

B「実はその日、妹の結婚式なんだよね」

A「いや最初からそう言えよ」



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