漫才「漁師」

A「この前、漁師をやってる叔父さんに会って来たんだけどさ」

B「ほうほう」

A「やっぱり納得できなかったねー」

B「ん?何が?」

A「太ってるのが納得できない」

B「え?」

A「漁師が太ってるのが納得できない」

B「どういうことだよ?」

A「だって漁師ってめちゃくちゃ重労働でしょ?」

B「そうだね」

A「しかも肉より魚のほうが食べる機会多いはず」

B「まあそうだろうね」

A「じゃあ、どうして叔父さんは太ってるの?」

B「いや知らないよ、放っといてやれよ」

A「おかしくない?」

B「それは個人の体質とかにもよるだろうしさ」

A「いや、叔父さん昔はめちゃくちゃ瘦せてたんだよ」

B「うーん、じゃあ生活習慣とか?やっぱり規則正しい生活をしてないと…」

A「でも漁師って誰よりも早寝早起きしてない?」

B「まあそうか…」

A「ほら、やっぱりおかしいんだよ」

B「おかしいってことはないと思うけどね」

A「気になって夜も眠れない」

B「ただ親戚が太ってるだけの話でしょ」

A「それで一晩中色々と考えてたら、一つの結論に達して」

B「結論?」

A「漁船ってたぶん、全部お菓子でできてるんだよね」

B「いや推理可愛いな」

A「きっとお菓子の船なんだよ」

B「幼心忘れてなさすぎだろ」

A「お前、漁船の表面舐めたことある?」

B「当然無いよ」

A「あれたぶん、甘いぜ?」

B「いや死ぬほどしょっぱいと思うけど」

A「だって漁船の名前って、何々丸、みたいな可愛らしいやつばっかりじゃん?」

B「あれたぶん格好いいと思って付けてるから」

A「しかも叔父さん、定期的に船を修理に出すんだよ」

B「そりゃ故障することもあるでしょ」

A「いや、あれはきっと食べ過ぎて底に穴が開いたんだよ」

B「そんなわけないだろ」

A「マカロンの床にポッカリと…」

B「そんなうっかりメルヘン漁師居ないから」

A「絶対そうだよ、全部の漁船はスイーツでできてるんだよ」

B「いやいや、だったら漁師みんな太ってなきゃおかしいじゃん?」

A「まあそうか…」

B「なんでみんな食べもしないマカロンに命預けてるんだよ、おかしいだろ?」

A「確かに……あっ、でも、そう言えばお爺ちゃんもすごい太ってたな」

B「え?お前のお爺ちゃんってことは叔父さんのお父さん?」

A「うん、だからきっとこの一族の船が特殊なんだよ」

B「いやー…」

A「代々受け継がれてきたスイーツ漁船なんだよ」

B「お爺ちゃん世代マカロンとか馴染み無いだろ」

A「いや絶対そうだ、今度俺も頼んで食べさせてもらおう」

B「やめた方がいいよ、親戚中に頭おかしくなったと思われて終わりだから」

A「でもそうじゃなきゃ説明がつかないんだよ」

B「そんなことないわ」

A「え?じゃあどういうことよ?」

B「お爺ちゃん、つまり叔父さんのお父さんも太ってたんでしょ?」

A「うん、めちゃくちゃ太ってた」

B「じゃあ遺伝だよ」

A「遺伝?」

B「体質的に太りやすいんだよ、そういうのあるらしいから」

A「でも叔父さん昔は痩せてて…」

B「叔父さん歳いくつ?」

A「42」

B「42歳なんてもう、人類ほぼ全員太り始めるから」

A「マジで?」

B「元々の体質と年齢、ただそれだけのこと」

A「じゃあお菓子の船は…?」

B「無い、あれは硬い硬い金属の塊」

A「なんだよー、夢がないな」

B「そもそも親戚の話に夢見出すな」

A「……あれ?でもおかしいな」

B「え?」

A「実はもう一人叔父さんが居るんだけど」

B「うん」

A「44歳でめちゃくちゃ痩せてるんだよ」

B「まあ中にはそういう人もいるだろ」

A「でもあれだよ?中華料理屋の店主だよ?」

B「いや珍しいけどね、44で中華料理屋でガリガリの叔父さん珍しいけどね、別におかしいことではないから」

A「うーん、これは気になるな」

B「やめてくれ、もうお前のメルヘン推理に付き合ってる暇無いわ…」

A「これもしかして、裏でコカインとかやってるんじゃない?」

B「いや急に物騒な推理始めるな、いい加減にしろ」



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