漫才「印象」

A「あのさ、一つ聞きたいことがあるんだけど」

B「何?」

A「お前から見て、俺の印象ってどんな感じ?」

B「え?」

A「俺の見た目から受ける印象って、どんな感じ?」

B「印象?いやー、別に普通というかなんというか…」

A「そうかー、あのー、実は最近よく近所を散歩してるんだけどさ」

B「うん」

A「そこで毎日のようにすれ違う人がいて、その人にいつも色々言われるんだよね」

B「見た目のことを?」

A「見た目というか印象というか」

B「ほう、何て言われたの?」

A「えーっと、最初は『あなた、自分が作ったペンションで人殺してますよね?』って言われた」

B「いや何だそいつ、すれ違いざまに言うことじゃねえだろ」

A「でもさ、なんかこう、その情報だけで何となく風貌はイメージできるじゃん?」

B「ペンション殺人鬼?いやまあ、なんか分かる気はするけど」

A「それで俺は周りからそう見えてたのかな?と思って、服装とか色々変えてみたのよ」

B「ほう」

A「そして次の日散歩に行ったら、またその人とすれ違ってさ」

B「おお」

A「なんか今度は『すみません、去年別れたキャバ嬢とまだ連絡取ってる人ですよね?』って言われたわ」

B「いや何だその印象だけを武器に話しかけてくる近隣住民、怖すぎるな」

A「でもさ、これもなぜか何となくどんな人かイメージできるじゃん?」

B「いやまあ分かるけど」

A「だから俺はそう見えてるのかーと思って、また服装とか色々変えてみて」

B「また?」

A「そしたら次の日その人とすれ違ってさ」

B「うん…」

A「なんか今度は『全然話通じないけど麻雀だけめちゃくちゃ強い人ですよね?』って言われたのよ」

B「いやもういいってそのぼんやりとした人物像押し付けてくる奴」

A「それでこれを何度も繰り返してたら人の目ばっかり気になるようになってさ」

B「うわー、良くないな」

A「なかなか自然体で振舞えなくなってきてるんだよね」

B「いやー、やめた方がいいって、普通に素でいた方がいいと思うよ」

A「うーん、やっぱりそうか」

B「そもそも人なんて見た目だけじゃ何も分からないしね」

A「まあ確かにそうだな、そんなの気にしても意味ないよな」

B「うん」

A「よし分かった、もうあの人の言うことは気にしないことにするわ」

B「あっ、ちなみになんだけどさ、そのいつも話しかけてきてるのってどういう人なの?」

A「あー、なんか毎日同じ格好してるんだけど」

B「うん」

A「上は裸で下は赤いミニスカート穿いてるわ」

B「いやそいつはちゃんと見た目もヤバい奴なのかよ」



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