漫才「続けてること」

A「あのー、俺、昔から何をしても長く続かなくてさ」

B「ほうほう」

A「趣味とかそういうのも、最初はハマっても結構すぐ飽きちゃったりするんだよね」

B「あー、なるほど」

A「だから続けられる方法とか知りたいなーと思ってるんだけど」

B「はいはい」

A「お前はどう?何かずっと続けてるものとかある?」

B「うーん……あっ、俺はあれかな?」

A「ん?」

B「ほらあの、ハガキ職人って言うの?あれはずっとやってるね」

A「へぇー、ハガキ職人か、面白そうだね」

B「まあね」

A「じゃあ結構ラジオで読まれたこととかあるの?」

B「あー、ラジオでも昔はほぼ毎日採用されてたかな」

A「毎日?めちゃくちゃ凄いじゃん」

B「まあ最近は全然だけどね」

A「いやいやそれでも凄いよ、何かコツとかあるの?」

B「うーん、やっぱりその、しっかり綺麗な長方形にしていくっていう…」

A「え?」

B「あとサイズとかも決まってるから、ちゃんとそこも正確に…」

A「いや…あれ?今何の話してるの?」

B「え?何の話って、ハガキの作り方の話でしょ?」

A「ハガキの作り方?」

B「俺がハガキを作る工場で働いてるから、その話をしてるんでしょ?」

A「いやハガキ職人ってハガキ自体を作ってる方かよ」

B「そりゃそうでしょ、ハガキ職人なんだから」

A「ガチの方は興味ないのよ、そもそもそれ職人って言わないだろ」

B「でも寿司を作るのは寿司職人、蕎麦を作るのは蕎麦職人でしょ?」

A「いやまあそうなんだけど、ハガキ職人って言ったら普通はネタを投稿したりする人だと思うだろ」

B「けど嘘は付いてないからね、昔はラジオで毎日採用されてたし」

A「ハガキ自体がね」

B「最近は全然なのも本当だし」

A「メール投稿になったからね」

B「結局お前が勝手に勘違いしただけだろ」

A「そりゃ勘違いするって、紛らわしいな」

B「まあ、とにかく俺はハガキ職人を長く続けてるって話だよ」

A「ああそうですか」

B「…あっ、でもあれだな」

A「ん?」

B「そう言えば俺、工場のバイト以外にも続けてることあったわ」

A「もうバイトって言っちゃってるけど」

B「寄付」

A「寄付?」

B「寄付は結構前から続けてる」

A「マジで?いや、それは文句なしに素晴らしいね」

B「俺も最初はそんなつもり無かったんだけど、ネットで偶然そういう活動のことを知って、胸を打たれたんだよ」

A「あー、そうなんだ」

B「俺らが普通に毎日暮らしている間にも、助けを必要としてる人はたくさん居るんだなと思ってさ」

A「うんうん」

B「だから俺は、Wikipediaに300円寄付したんだよ」

A「いやWikipediaに300円寄付した話かい、思ってたのと違うな」

B「やっぱり困ってる人には手を差し伸べないとね」

A「困ってる人にカウントされないんだよあれは」

B「なんか相当切迫したような感じでお願いされたから、放っておけなくてさ」

A「確かに凄い主張してくるけど」

B「あとあれ1度寄付したら定期的に催促メッセージが来るようになるから、そのたびに毎回協力してるんだよ」

A「やめた方がいいよ、どうせ寄付するなら慈善団体とかそういうのにしろよ」

B「でも300円で助けられるなら助けたいじゃん?牛丼食べるよりそっちの方がいいじゃん?」

A「牛丼食べた方がいいよ、送金先がWikipediaのままなら」

B「何だよ、最初は文句なしで素晴らしいとか言ってたのに」

A「思ってたのと違うんだよ、さっきから」

B「うーん……あっ、じゃあこれはどう?」

A「え?」

B「母の日のサプライズ」

A「母の日のサプライズ?」

B「毎年母の日に色々計画して、日頃の感謝をそこで伝えてるんだよ」

A「まあ、そこまでは普通に良いことだと思うけど」

B「去年なんか奮発して一晩貸し切りにしたんだから」

A「貸し切り?レストランとか?」

B「いや、バッティングセンター」

A「思ってたのと違うなー」

B「お母さんも凄く驚いてくれてたよ」

A「そりゃ驚くだろうな、ある意味めちゃくちゃサプライズだよ」

B「そこで感謝の手紙を読み上げたんだけど、ボールの音がうるさくて何も聞こえなかったらしいわ」

A「いやマシン止めろよ、打席に誰もいないんだから」

B「え?右打席に俺が居て、左打席にお母さんが居たよ?」

A「なんでホームベース挟んで語り合ってるんだ」

B「何故かなかなか話に集中できなかったけどね」

A「直球が間を通るからだろ」

B「とにかく、お前もちゃんとこういうので感謝を伝えた方がいいぞ?」

A「そういうのじゃないので伝えるわ」

B「まああと、他に俺が長く続けてるものと言えば…」

A「いやもういいもういい」

B「え?」

A「これ以上聞いても何の参考にもならないわ」

B「そう?」

A「なんか全部思ってたのと違う話で不思議な気持ちになるんだよ」

B「うーん、それは残念だな」

A「こっちが残念だよ」

B「あー、でもお前あれだね」

A「え?」

B「結局この漫才も続けられなかったね」

A「いやそれはお前のせいだろ、いい加減にしろ」



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