漫才「夏のせい」

A「どうもー、よろしくお願いしますー」

B「お願いしますー」

A「いやー、最近は結構暑い日が続いてるけど、どう？お前は夏の予定とかある？」

B「あー、俺は特に無いかな」

A「え？マジで？なんかこう、海に行ったり旅行に行ったりキャンプしたり、そういうの無いの？」

B「うーん、まあ海もキャンプも良いんだけどさ、その前にちょっと俺、お前に謝らなきゃいけないことがあって」

A「謝らなきゃいけないこと？」

B「あのー、お前、今週末引っ越しするじゃん？」

A「うん」

B「それで俺が友達を連れて手伝いに行くって約束してたでしょ？」

A「はいはい、してたね」

B「でもちょっと、その友達が昨日体調崩しちゃったみたいで、手伝えなくなっちゃったんだよね…」

A「あー、なんだ、そんなこと？」

B「え？」

A「全然いいよ、だってほら、夏だから」

B「夏だから？」

A「いや、夏って元々暑さにやられて免疫力が落ちたり、冷房付けすぎて風邪引いたりするじゃん？」

B「うん」

A「つまりこれはお前や友達のせいじゃなくて、夏のせいだよ」

B「あー、そうか、夏のせいか」

A「だから全然気にしないで」

B「分かった、ありがとう」

A「うん」

B「…あっ、でも実は俺、もう一つ謝らなきゃいけないことがあって」

A「ほう、何？」

B「あのー、俺さ、先月お前に美味しんぼ全巻借りたじゃん？」

A「はいはい、貸したね」

B「あれ全部読んで、めちゃくちゃ面白くて、この前メルカリで売っちゃったんだよね」

A「あー、なんだ、そんなこと？」

B「え？」

A「全然いいよ、だってほら、夏だから」

B「夏だから？」

A「いや、夏って元々テンション上がって思い切ったことしちゃうじゃん？」

B「うん」

A「つまりこれはお前のせいじゃなくて、夏のせいだよ」

B「あー、そうか、夏のせいか」

A「だから全然気にしないで」

B「分かった、ありがとう」

A「うん」

B「…あっ、でも実は俺、もう一つ謝らなきゃいけないことがあって」

A「ほう、何？」

B「あのー、お前さ、ちょうど１年前に交通事故で両足骨折してたじゃん？」

A「はいはい、してたね」

B「実はあの時バイクで轢き逃げしたの、俺なんだよね」

A「あー、なんだ、そんなこと？」

B「え？」

A「全然いいよ、だってほら、夏だから」

B「夏だから？」

A「いや、夏って元々日差し強すぎてほとんど前見えないじゃん？」

B「うん」

A「つまりこれはお前のせいじゃなくて、夏のせいだよ」

B「あー、そうか、夏のせいか」

A「だから全然気にしないで」

B「分かった、ありがとう」

A「うん」

B「…あっ、でも実は俺、もう一つ謝らなきゃいけないことがあって」

A「ほう、何？」

B「あのー、何十年か前に、三億円事件ってあったでしょ？」

A「はいはい、あったね」

B「実はあの時捕まらなかった犯人、俺なんだよね」

A「あー、なんだ、そんなこと？」

B「え？」

A「全然いいよ、だってほら、夏だから」

B「夏だから？」

A「いや、夏って元々色んなイベントとかあるし、毎年ちょうど3億ぐらい必要になるじゃん？」

B「うん」

A「つまりこれはお前のせいじゃなくて、夏のせいだよ」

B「あー、そうか、夏のせいか」

A「だから全然気にしないで」

B「分かった、ありがとう」

A「うん」

B「…あっ、でも実は俺、もう一つ謝らなきゃいけないことがあって」

A「ほう、何？」

B「あのー、昔、恐竜っていうめちゃくちゃでかい生き物いたじゃん？」

A「はいはい、いたね」

B「実はあれ絶滅させたの、俺なんだよね」

A「あー、なんだ、そんなこと？」

B「え？」

A「全然いいよ、だってほら、夏だから」

B「夏だから？」

A「いや、夏って元々小惑星とかガンガン落ちてくる時期じゃん？」

B「うん」

A「つまりこれはお前のせいじゃなくて、夏のせいだよ」

B「あー、そうか、夏のせいか」

A「だから全然気にし…」

B「あっ、ちょっとごめん（スマホを取り出す）」

A「え…？」

B「あー、やばい、友達から花火大会誘われたからもう行かないと」

A「花火大会？」

B「じゃ、あとは頼むよー（帰る）」

A「いやー、これはたぶんあれだな、甘やかし過ぎた俺のせいだな」