漫才「優香」

A「お前さ、好きな女性芸能人とかいる?」

B「うーん、普通に長澤まさみとか好きだけどね」

A「あー、なるほど、長澤まさみねー」

B「お前は誰が好きなの?」

A「俺は昔から優香が好きだった」

B「あー、優香ね、すごい人気あったよね」

A「最初に見た時から好きだったね」

B「そうなんだ、まあ確かに奇麗だしバラエティーとかでもよく…」

A「ああいや、そういうことじゃない」

B「ん?」

A「好きな理由は、見た目とか仕事の内容とかそういうのじゃない」

B「ほう、じゃあなんで好きなの?」

A「苗字がないから」

B「え?」

A「苗字がないから好き」

B「何それ?」

A「だってなかなか居ないよ?苗字がない人なんて」

B「いやいや、そもそもあれ芸名でしょ?本名は普通に苗字あるでしょ?」

A「え?お前知らないの?」

B「何を?」

A「優香って、15歳までオオカミに育てられたんだよ?」

B「そんなわけないだろ」

A「だから苗字という概念がないんだよ?」

B「聞いたことないわそんなの」

A「そりゃまあ、あんまり言う機会が無かっただけで」

B「いやオオカミに育てられてたら言う機会あるだろ、メディアが放っておかないだろ」

A「じゃあお前、父親は何やってる人?」

B「え?建築関係の仕事してるけど?」

A「母親は結婚する前何してたの?」

B「普通のOLかな?」

A「お前それ、俺に今初めて言ったでしょ?」

B「まあね」

A「ほら、自分が誰に育てられたかなんて、あんまり言う機会ないんだよ」

B「いやそれ人間だったらの話でしょ」

A「俺もそんなの言ったことないしね、別に面白い話でもないんだし」

B「ちなみにお前の父親は?」

A「石垣島でボーリング場経営してるよ」

B「いやちょっと面白いじゃねえか」

A「母親はそこの客だったらしい」

B「ボーリング場から結婚まで行った人初めて見た」

A「まあ俺の話はいいんだよ、優香だよ優香」

B「お前の話はお前の話で気になっちゃったけどな」

A「オオカミに育てられた優香には負けるでしょ」

B「いやだからそれ、あり得ないって」

A「あり得たんだよ、実際に森で暮らしてたんだから」

B「いやー…」

A「そこに良い匂いのする木の実があって、いつもそれを仲間に全て分け与えていたから『優香』になったんだよ」

B「なんで漢字に意味を込めて名付ける文化知ってるんだよ」

A「オオカミって結構知能高いからね」

B「そういう問題じゃないだろ」

A「それにお前、優香って二十歳くらいの頃からずっとテレビ出てたんだぞ?」

B「うん」

A「自然界で培った本能がなければ、戦場と言われる芸能界で20年も生き残れないだろ」

B「森でバラエティー能力が向上するとは思えないけどな」

A「そんな格好いい人他にいないからね、すごい好きだったよ」

B「あれ?だった?過去形なの?」

A「うん」

B「どうして?」

A「だってほら、俳優の青木崇高と結婚して青木になっちゃったじゃん」

B「ああ、苗字があるのが嫌なんだ」

A「そうそう」

B「それは残念だったね」

A「いや大丈夫、実は最近また好きな芸能人見つけちゃったからさ」

B「え?誰?」

A「ICONIQだよ」

B「いやあれはもう苗字がないとかいう次元の話じゃないだろ、もういいよ」



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