【税のお勉強】累進課税制度とは?
1. 累進課税とは
累進課税とは、収入や遺産が多ければ多いほど、より高い割合の所得税や相続税が課せられる制度のことをいいます。累進課税の対象となる税金は所得税、相続税、贈与税などがあります。
累進課税のメリットは、所得や資産が多い人ほど税率が高くなって税金を多く納めれば、貧富の格差を是正できることや、支払能力に応じて税金を課す公平な課税制度であることです。デメリットは、多く稼ぐと税負担が増えるので、人によっては労働意欲の減退や海外移住などにつながることです。
累進課税の計算方法は、以下のようになります。
所得税:収入から必要経費を引いた所得から、各種所得控除を引いた課税所得金額に対して、5%から45%までの7段階の税率を適用して基準所得税額を求めます。その後、基準所得税額に2.1%をかけて復興特別所得税を求めます。最後に基準所得税額と復興特別所得税を合計して所得税額を求めます。
相続税:相続した遺産額から基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を引いた課税遺産総額に対して、10%から55%までの8段階の税率を適用して相続税の総額を求めます。その後、各相続人の実際の遺産取得割合に応じて相続税の総額を按分して各相続人の納税額を求めます。
贈与税:贈与された財産の金額から基礎控除額(110万円)を引いた金額に対して、10%から55%までの8段階の一般税率または特例税率(18歳以上の人が直系尊属から贈与を受けた場合)を適用して贈与税額を求めます。
2. 累進課税のメリット・デメリット
累進課税のメリットは、以下のような点が挙げられます。
課税対象が多い人に多く負担してもらうことで、貧富の格差を是正し、社会的公平性を高めることができます。
課税対象が多い人は支払能力が高いので、累進課税は負担能力に応じた公正な税制といえます。
累進課税によって国の税収が増えると、社会保障や公共サービスなどに投資することができ、国民全体の福祉を向上させることができます。
一方、累進課税のデメリットは、以下のような点が挙げられます。
税率が高くなると、所得や資産を増やすインセンティブが低下し、労働意欲や経済活動が減退する可能性があります。
税率が高いと不公平感を抱く人もいて、海外に移住する人や節税対策をする人が増える可能性があります。これは国の経済や社会にマイナスの影響を与える恐れがあります。
累進課税は計算方法が複雑であり、確定申告や相続手続きなどに時間やコストがかかる場合があります。
3. 累進課税の歴史
累進課税の理論は、16世紀のフィレンツェにおいて富裕層課税が主張されていたという記録があります。しかし、累進課税制度が実際に導入されたのは、20世紀初頭のイギリスで、首相だったロイド・ジョージが貧富の格差是正を目指して所得税や相続税を改革したことがきっかけでした。
日本では、明治時代に近代的な税制が整備されましたが、所得税や相続税は比例課税であり、累進課税はありませんでした。第二次世界大戦後、連合国軍最高司令官の要請により来日したカール・シャウプ博士を中心とする使節団によって作成されたシャウプ勧告に基づき、日本の税制は大幅に改革されました。このとき、所得税・相続税・贈与税の3つの国税で累進課税が採用されました。その後も、経済社会の変化に応じて累進課税の度合いや方式は見直されてきました。
4. 世界の累進課税
累進課税を採用している国には、日本のほかにも多くの国があります。 例えば、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、カナダなどの先進国や、インド、ブラジル、中国などの新興国も累進課税を採用しています。 累進課税を採用している国の税率は、国によって異なりますが、一般的には所得が高いほど高い税率が適用されます。 ただし、累進課税の対象となる所得や財産の範囲や計算方法も国によって異なるため、単純に税率だけで比較することはできません。
累進課税を採用している国には、例えば、アメリカでは所得税の最高税率が37%、イギリスでは45%、フランスでは45%、ドイツでは45%、中国では45%と、日本と同じくらいの最高税率を設定しています。 一方で、カナダでは33%、インドでは30%、ブラジルでは27.5%、と日本より低い最高税率を設定しています。
日本の所得税の最高税率は45%ですが、これは課税所得が4000万円以上の場合に適用されます。また、住民税や復興特別所得税も加算されるため、実質的な税負担率は55%以上になります。アメリカの所得税の最高税率は37%ですが、これは課税所得が52万ドル(約5800万円)以上の場合に適用されます。また、州や市の所得税も加算されるため、実質的な税負担率は50%近くになる場合もあります。
5. 累進課税を減らす方法
所得税や相続税、贈与税を減らす方法には、以下のようなものがあります。
所得税を減らす方法としては、控除や給付金を活用することです。例えば、医療費控除や住宅ローン控除、ふるさと納税や確定拠出年金などがあります。これらの制度を利用することで、所得税の負担を軽減することができます。
相続税を減らす方法としては、生前贈与や相続時精算課税制度を活用することです。例えば、年間110万円の非課税枠内で財産を贈与したり、60歳以上の親から18歳以上の子に対して2,500万円までの贈与をしたりすることで、相続税の節税効果が期待できます。
贈与税を減らす方法としては、夫婦間の居住用不動産の贈与や教育資金の一括贈与などの非課税制度を利用することです。例えば、婚姻期間が20年以上の夫婦間で居住用不動産を贈与した場合は2,110万円まで非課税になったり、父母や祖父母から30歳未満の子や孫に教育資金に充当するための金銭を一括で贈与した場合は1,500万円まで非課税になったりします。
これらの方法にはそれぞれ条件や要件がありますので、詳しくは専門家に相談することをお勧めします。
参考文献
税金の仕組みや導入された背景、問題点などについて、バーテンダーとお客さんたちが会話するストーリー仕立てで解説しています。初心者にも分かりやすい入門書です。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?