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道具のアフターケア 油の替え時を問う

「揚げ物に使った油は、何度使えるのか?」 新しい油ならカラリと揚がるのに、古い油だと油っぱくなり油切れも悪くなる。 何度も使った油は、油の酸化が進みます。 こうなると油の力が弱くなり、疲れた油と表現します。 もはや、美味しく揚げることができません。 そんな時、初心者の方であれば、何度までと言う疑問が沸くのでしょう。 そこで、食用油メーカーの日清オイリオ では、こちらのページで3~4回を目安にと伝えています。これが多いのか少ないのか。 回数を問うことは分かりやすいかもしれませんが、いろいろな視点が欠落します。 それをそのまま受け止めることは、結果として、油を無駄にしてしまうばかりか、 美味しさも損なわれるように思います。 そんな視点で、油の替え時について整理してみます。

この疲れた油を見分けるためには、何より出来上がった食材の美味しさで判断できます。 美味しく揚がらなければ、替え時であります。 自分の感覚、自分の鼻と舌で判断するとも言えます。 何度と問うことは、いつしか他人任せになっているのかもしれません。 そして、油の色合いと臭いで判断できます。 疲れた油は、色が濃くなり、嫌な臭いが生じます。 嫌な臭いとは、日清オイリオの こちらのページでは、 加熱した時に、枯れ草や塗料のような油臭い不快な臭いと表現しています。 もう一つ、油独自の目安としては、油に粘りが生じる点でしょう。 疲れた油になると、揚げた後に、泡が残るようになります。カニ泡とも呼ばれます。 新しい油なら、食材を入れた時に、泡立ちますが、粘りがないため食材を取り出すと泡も消えます。

極J天ぷら鍋M

極天ぷら鍋Mのような 専用のお鍋で適温適量を心がけていただき、 野田琺瑯バット等で 食材の水を良く切って、途上ではカスアゲで 天かす等を取り除いていただき、最後は ホームピッカー(オイルポット)等で汚れを落として収納いただくことが、美味しさだけでなく油の酸化を防ぐことにもつながります。

ホームピッカー、野田琺瑯バット、カスアゲ

即席麺類や菓子・弁当そうざいには、表面に付着する油の酸化の程度に対して衛生上の規制があります。 その時の指標が「酸価」と「過酸化物価」です。 そこで、揚げ油の場合をどうなのか。 国民生活センターの1999年7月の実験 で、その点が公表されていました。 その結果は、「差し油を行いながら、計12回油を繰り返し使用したところ(1回あたり4人分の揚げ物)、 調理中に泡立ったり、油が濁り、油の色も褐色になってきたが、 油の酸価や揚げた食材中の油の過酸化物価は低く、まだ十分使用できる品質であった。」 結論としては、「油が数回の使用で濁ったからといって捨てる必要はなく、 沈殿した油どろを除いて差し油を行うなど、油を上手に使っていくことにより、 十分に使用可能な品質を維持できることがわかった。」

日本植物油協会が、 こちらのページで適切な回答を与えています。 回数を問う前に、次のことを問うことです。 油の種類、揚げる素材とその量、油の温度、揚げる時間、 一度使用してから次回に使用するまでの保存状態と時間経過。 その視点で整理してみます。 やはり、酸化に強い胡麻油やオリーブオイルの特徴が見えて来ます。 また、水が入ると酸化が進みますので、食材に付着する水気を切ってから揚げる。 カスを取り除くことも大切です。 そして、200度以上の高温にすると酸化は急激に進行します。 さらに、差し油をすることも有効です。 酸化によって出来上がった物質が、ある限度を越えると酸化が急激に進行します。 差し油で、その限度を越えないようにすることができます。 もちろん、オイルポット等に保存する時には、汚れを除去して冷暗所に収納いただくことです。 さらに、できるだけ早い時期に使うことも有効でしょう。

その意味では、回数を問う前に、道具を上手に役立てて、手間暇かけて丁寧に油を扱い、 美味しさを自分で確認していただくことが本質だと分かります。