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「起"転"承結」の使い勝手を試してみた◎(前編)

最近「起"転"承結」なる言葉を知った。

『鬼滅』も『スラダン』も、起承転結ではなく「起“転”承結」 ベストセラー著者が見つけた、読者の心をつかむストーリーの作り方 - ログミーBiz

↑記事のタイトルだ。

「鬼滅の刃」や「スラムダンク」のストーリーは起承転結ではなく「起"転"承結」の型をしているのだという。  

俄には信じられない話だった。

「鬼滅の刃」は未読なので何ともいえないが、記憶が確かなら「スラムダンク」は起承転結の基本に忠実な王道ストーリーだったはずだ。

(以下冒頭の記事から引用)

柳瀬:『SLAM DUNK』は、三井寿くんが起転承結の「転」ですよね。いきなりヤンキー時代の三井くんと悪い仲間がバスケ部に殴り込んできて、最後は「バスケがしたいです」と。『鬼滅の刃』も、わりと早めに鬼舞辻無惨さまというラスボスを出しますよね。

むしろ、起承転結って誰が最初に設定したんですか?

何をいっているのかよくわからない。

三井登場のエピソードがなぜ「転」なのだろう。

一つ考えられるとすれば、長期連載のストーリーというのは大枠の起承転結の中に小さな起承転結がいくつもある入れ子形式になっているから、

発言者の人が大枠の中の数ある「転」の一つ(三井登場のエピソード)を指して「起"転"承結」といっている可能性だ。

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しかしそれはないと思いたい。

横文字の研究所に勤める教授がそんな初歩的な勘違いをするはずがない。

ということは「スラダンは起"転"承結」のストーリーで確定だ。

考えてみると、ストーリーというのは「起承転結」の型を取っているとは必ずしも限らない。

映画を観ればわかるように、優れた構造を持った「キサラギ」なら「起承転転結」と呼ぶのが相応しい。タランティーノの「パルプフィクション」は変則の「承転結起」だ。

これといった「転」のない「起承結」の形をしている残念な作品も少なからずある。

しかしやはりどうだろう。

「パルプフィクション」のように特殊な構成(=バラバラの時間軸)を持った作品を除いては、起→承→転→結の順番は覆せないはずだし、

そもそも「起"転"承結」のストーリーといわれてもイメージができない。

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しかし横文字の研究所に勤める教授がいっているのだから「スラダンは



自分でもつまらないので、
ふざけるのはこの辺にしておく。

古賀:そうですね。飽きるのと、やっぱりくどくどした説明がずっと続くので、例えば映画館でもう席に座っちゃって、2時間我慢して観るしかないというよっぽどの状況だったら、起承転結の転まで待つのはできるかもしれないけど。

「起"転"承結」の発案者であり、「嫌われる勇気」の著者の古賀さん。

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まるで起承転結で書かれたストーリーが退屈で仕方ないというような物言いだ。

僕の認識では、起承転結というのは「承」のパートが観客にとって一番面白く、退屈しないはずなのだが、古賀さんクラスになると違うようだ。

記事の内容を読んでも頷ける箇所が少なく、自分には起承転結を超える型があるとは思えないのだが、そんな型がもしあるのであれば是非ともストーリー作りに活かしたい。


そこで「起"転"承結」の有効性をじっくりと試すことにしました。

ちなみに僕は嫌われる勇気こそないがハナから好かれないので手心は加えない。

使えないなら使えないというし、逆もまた然りだ。

もし使えると判断したときは教授をイジった件も含めて記事の信憑性を疑ってしまったことを謝罪させていただく。


とはいえ「起"転"承結」とは何かを知らなければ始まらないので、まずはそこから。

(前編は「起"転"承結」の解説になります。マスターしている人は後編をお待ちください)




古賀さん本人による「起"転"承結」についての詳しい記事があった。(残念ながら現在リンク切れになっています)

リンク切れになってしまったので、自己流に要約すると次の二点。

①小論文では起承転結が使えない
②承と転を入れ替えることで起承転結を小論文に応用することができる


記事の中で古賀さんがとんこつラーメン店一蘭を例に取って「起"転"承結」を説明していたので、
それにあやかってこの記事では天下一品を例に出したいと思う。

(唐揚げ定食こってりが好きです)


①小論文では起承転結が使えない

ある書き手が「もっとあっさりを食べよう」という主張を伝えたいとする。
(ご存知の方も多いが、天下一品には「こってり」と「あっさり」の二種類のラーメンがあり、「こってり」が人気を占めている)

その場合、起承転結の型を用いて文章を書くと、

起 天下一品といえば「こってり」だ
承 (その理由や根拠の説明)
転 しかし実は今「あっさり」がきている(=書き手の主張)
結 「あっさり」をもっと食べよう

こうなるだろう。

前フリで「こってり」を持ち上げておいて、「転」でひっくり返す。
印象に残るし、キレのある落差(=ストーリー性)は主張に説得力を生む。

書き手の主張を効果的に伝えるという点では起承転結は最適な形だと思う。


しかし古賀さん曰く小論文ではこの起承転結が使えないという。

起承転結というのはストーリーにおいては有効である一方で、小論文で使った場合、途中で書き手の主張が一変することになり、読者を戸惑わせることになる。

例の場合、前フリとしての主張(こってりの良さ)がまずあって、本当の主張(あっさりの良さ)を語るのは後半からだ。

つまり起承転結はその性質上、途中で主張が変化することになるため、論理的一貫性を重視する小論文の型としては不向きだというわけだ。

ゆえに小論文では以下のように冒頭に書き手の主張を持ってきて、

起  天下一品で今「あっさり」がきている(=書き手の主張)
承 (その理由や根拠の説明)
結 「あっさり」をもっと食べよう

(起承転結でいうところの)「起承結」の形を取ったシンプルなものが多い。


②承と転を入れ替えることで起承転結を小論文に応用することができる

小論文では「起承転結」は使えない。

しかし「起承結」だと、わかりやすい反面、起伏のない退屈な文章になり、読み物としての面白味に欠ける。

ではどうすればいいか。

俺たちの古賀さんは「承」と「転」を入れ替えることによってその問題を解消することを可能にした。

以下は前述した起承転結の例から「承」と「転」を入れ替えたもの。

起 天下一品といえば「こってり」だ
転 しかし実は今「あっさり」がきている(=書き手の主張)
承 (その理由や根拠の説明)
結 「あっさり」をもっと食べよう

ポイントは「こってり」の前フリが残っていること。これがあることで文章にストーリー的なうねりが発生し、予定調和の「起承結」と比べて明らかに印象が違う。

それでいて早い段階で本当の主張(あっさりの良さ)を始めるので読者が戸惑いを覚える心配もない。

「起承結」の明快さと「起承転結」のストーリー性。この二つをいいとこ取りをした感がある。

このように「起"転"承結」とはストーリーの起承転結を応用し、ややもすると退屈になりがちな小論文を読み物としても耐えうるものに仕上げるためのテクニックといえる。


どうだろうか。

この「起"転"承結」に関して僕は反論することはないし、ケチをつけるつもりもない。

小論文で「起"転"承結」の型が有効に働くであろうこともわかる。

「古賀さんのnoteをもっと読みたくなった」
「古賀さんの本を図書館で借りよう」
という感想でいっぱいだ。


しかし話はこれで終わらない。

問題はここからで、じゃあ、冒頭に貼った記事の通り「起"転"承結」の型がマンガや小説などのストーリー作りをする上で本当に役に立つのかどうか。

あるいは「スラダンは起"転"承結」とウソをついてまで、それを広める価値があるのかどうかということだ。


とりあえずここまで。

後編では本題であるストーリー作りにおける「起"転”承結」の使い勝手を試していく。

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