「人生詰んだホス狂が国民的社会派作家の霊を召喚してしまったんだが(仮)」1話|脚本
※脚本コンクール「TBS NEXT WRITERS CHALLENGE」の落選作となります
※いっちークラブ名義の共作となります
https://note.com/furaidopoteto/membership
※企画書と縦書き脚本はこちら
あらすじ
ホストクラブにのめり込み、数百万の借金を作った小倉舞(21)は、路上で客を拾う“立ちんぼ”に身を堕としていた。
人生に絶望し、寺の墓地で睡眠薬自殺を図った舞の目の前に、亡霊が現れる。それは戦後日本を代表する社会派の小説家、天鷲京子(83/故人)の霊だった。
舞の身体に半ば強引に憑依した京子は、未完に終わった遺作の最終章を書くため、かつての出版社の仲間に連絡を取ろうと試みるも、異動になっていたり既に故人になっていたり、誰とも連絡が取れない。
そんな中、かつての知人であるBSTテレビ取締役会長の竹井慎一郎(72)と偶然出くわす京子。自分の正体を告げるも竹井に信用してもらえず、軽く鼻であしらわれる。
自分の死から20年。日本の現状を知り絶望する京子。
舞に身体を返した京子は「未完の小説を完成させれば大金が入ってくる」と舞を説得し、二人は連日図書館に通い、小説の残りを書き上げていく。
紆余曲折を経て、どうにか小説は完成し、出版社に持ち込むも、反応は芳しくなく、さらには詐欺師扱いされてしまう。
失意の中、京子はBSTテレビの竹井の存在を思い出し、出版社ではなく、テレビ局にドラマの企画を持ち込むことを思いつく。
株主総会を終えた竹井の前に現れる京子。自分と竹井しか知らない事実を告げ、驚きを隠せない竹井に京子はドラマの企画書を突きつける。
数日後、竹井からの手付金を手にした二人は、その金を持ってホストクラブへ行き、溜まっていた売掛金を支払い、舞は担当ホストとの関係を清算する。
デパ地下の惣菜を持ち帰り、舞のアパートで祝杯を上げ、今後の展望について語り合う二人。
翌朝、舞のアパートのインターホンの音が鳴る。そこに立っていたのは竹井だった。そして竹井が舞と京子に告げた一言とは...?
主な登場人物
小倉舞(21)
都内の大学に通う普通の学生だったが、ホス狂の友達に誘われて初回料金で入ったところ、店内の雰囲気と担当についたホストの話術に圧倒され、そのままホストクラブにハマり、ホス狂に。巨額の売掛金を背負ってしまう。
天鷲京子(83 / 故人)
戦後日本を代表する社会派の小説家。新宿抜弁天近くの墓地に埋葬されていた。巨額の売掛金を背負ってしまい、絶望して死のうとしていた舞に乗り移って、ある取引を持ちかける。作家として書き残したことがあり、成仏出来なかった。
玉野悠(25)
誠実さを売りにしているが、実際は女の子を金蔓としか見ていない。二面性の激しい、タチの悪いホスト。
竹井慎一郎(72)
株式会社BSTテレビ取締役会長。昔、制作局ドラマ制作部のプロデューサーとして、天鷲京子原作のドラマを担当していた。
脚本
○大久保病院前(夕)
道路脇にずらりと立ち並ぶ女たち。
立ちんぼである。
その中に小倉舞(21)の姿がある。
舞、死んだ目つきでスマホをいじっている。
声「雨、降りだしそうだね」
舞、スマホから視線をあげる。
腹の出た中年男、立っている。
舞、答えない。
男、それとなく指を二本立てる。
舞、首を横に振る。
男、指を三本。
舞「(ぼそりと)ホ別」
男「うん。いこっか」
○道
どんよりとした空。
舞と男、歩いている。
男、古びたアパートの前で立ち止まる。
男「ここ」
舞「…?」
男「俺んち。大丈夫だから」
舞「ホテルは?」
男「ホテル代、別でいいけど。いくとはいってない」
舞「は。ふざけんな。ホテルじゃなきゃやらない。払え。キャンセル料」
舞、男に詰め寄る。
と、部屋のドアから男の仲間らしき男が出てくる。
舞、気づいて、恐怖で後ずさりする。
○近くの墓地(夜)
雨が降っている。
舞、傘もささずに呆然と歩いている。
舞、立ち止まる。
舞、情けなさで顔が歪む。
舞、バッグを漁る。舞、睡眠薬の入った袋を取り出す。
舞、手のひらいっぱいに睡眠薬の錠剤をのせ、口の中に押し込む。
舞、バッグからペットボトルを取り出す。
が、中身は空っぽ。
舞、目の前の墓に供えられたミネラルウォーターのペットボトルに目をやる。
舞、ペットボトルを手にすると、一気に水を飲み、錠剤を流し込む。
舞、へなへなとその場にしゃがみ込む。
目の前の墓石に刻まれた「天鷲家」の文字。
○舞の主観
ぼんやりと視界が開かれる。
天鷲京子(83)、舞をのぞき込んでいる。
京子「あんた、うちの姿がみえる?」
舞「…」
京子「みえとるんやろ。あんた、死相が出とる。目ぇ覚まさへんとお陀仏やで」
舞、声を振り絞り、
舞「…だ…誰?」
京子「お化けや」
舞「…お、お化け?」
京子「そや。けどな、今はこんなやけど、昔は結構な物書きやったんや。思い出すなあ。編集者から取材の鬼いわれてな、世界中を飛び回った。シベリア抑留を描いたときは女ひとりでハバロフスクからモスクワまで…」
舞の視界が狭くなっていく。
京子「あかん。つい長話してもうた」
京子の顔、近づいてくる。
京子「あんた、憑依体質やろ? うちがあんたの肉体にのりうつれば助かるかもしれへん」
舞「…」
京子「ええな?」
舞「(呻く)」
京子「(一方的に)よし。ええんやな」
○墓地
どしゃぶりの雨。
舞(に憑依した京子)、うつ伏せで倒れている。
舞、全身を痙攣させながら気合いで立ち上がる。
生まれたての子鹿のよう。
舞、何とか起きあがる。
舞、口を大きく開け、拳を喉の奥につっこむ。
舞、口の中で拳をぐりぐり。
舞、苦悶の表情を浮かべつつ、
舞「やー!」
と叫び、口から拳を引っこ抜く。
舞、拳を開く。
手のひらに大量の錠剤。
舞、錠薬を捨てると、手をじっと見る。
舞、舐めるように全身を見る。
若く、艶やかな肉体。
舞、水たまりを見下ろす。
舞の若々しい顔が映し出される。
舞「(息をのむ)」
舞、興奮を抑えきれず、月夜に向かって思い切り両手を広げる。
○タイトル
○ホストクラブ・店内
玉野悠(25)、席で接客をしている。
客の女、トイレに立つ。
玉野、トイレの前まで見送る。
ホスト1、やってくる。
ホスト1「(耳もとで)悠、お前が熱心に育ててる子、今日はきてないじゃないか」
玉野「…」
ホスト1「掛け飛びされちまったりしてな(とにやり)」
ホスト1、去っていく。
玉野、唇をかむ。
玉野「(舌打ち)…なにしてんだよ、あいつ」
○繁華街
舞、ずぶ濡れで歩いている。
舞、古着屋の前で立ち止まる。
舞、服を眺めていると、着信音が響く。
舞、スカートのポケットからスマホを取り出す。
画面に「悠」の表示。
舞、電話に出る。
玉野の声「舞。俺だけど。どした? 今日こられないの?」
舞「…」
玉野の声「会いたい。店で待ってるから」
舞、無言。
○喫茶店・中
古着屋の服に着替えた舞、テーブル席に座っている。
舞、タウンページを眺めている。
やってきた店員へ、
舞「ペン、貸してくださる?」
店員、ボールペンを渡す。
舞、ナプキンにボールペンで電話番号をメモする。
力強い筆圧で数字が書かれてゆく。
舞、にやりと笑う。
京子「(ぽつり)こんだけ力があれば、鉄筆でガリ版にも書けるわ」
舞、スマホを取り出す。
ナプキンにメモした電話番号を入力する。
電話、繋がる。
声「もしもし」
舞「涼子さん?! 京子! 京子や!」
声「…は?」
舞「(興奮して)活動再開! 完全復活! 涼子さん、今日からまたあんたを秘書に雇わせてもらおう思うて…」
声「(遮って)あ、あの…涼子は私の母です」
舞「(取り繕い)あら失礼。涼子さんの娘さん?」
声「はい」
舞「それで、涼子さんは?」
声「母は3年前に亡くなっていますが」
舞「え」
声「失礼ですが、どちらさまですか?」
舞「いえ、いいの」
舞、電話を切る。
舞「涼子さん、亡くなったんか…」
舞、別の電話番号にかける。
電話、繋がる。
舞「もしもし。私、天鷲京子ですが、ヤマダさんに繋いでくださる?」
声「ヤマダ?」
舞「編集長の山田さんよ」
声「山田は経済部に異動したため、お繋ぎすることはできません」
× × ×
声「なるほど。不屈の作家天鷲京子が20年の時を経てこの世に蘇りました、と」
舞「そう」
声「未完に終わった遺作の最終章を書くために」
舞「そう!」
声「また一緒に手を組もうじゃないかと」
舞「そう!」
電話、乱暴に切られる。
京子「もしもし!」
○テレビ局BST本社ビル前
アルファードが停まっている。
ビルの入口から竹井慎一郎(72)がやってくる。
舞、道の向こうからやってくる。
舞、車へと向かう竹井を見て足をとめる。
舞「(思わず)タケ?」
竹井、舞のほうを振り返る。
舞「やっぱり! タケやないか!」
竹井「…?」
舞、竹井に近づく。
舞「(竹井の身なりを見て)あなた、しばらくみない間にずいぶん出世したみたいやな」
竹井「失礼ですが、どちらさまです?」
舞「天鷲京子」
竹井「天鷲京子…のお孫さん?」
舞「違う。本人や。三途の川を飛び越えてあの世から蘇ったんや!」
竹井「そうですか」
竹井、取り合わずに車に乗り込もうとする。
焦った舞、ふと思いついて、
舞「奥さん、元気? 富士の銀行の娘さんだったよな?」
竹井の動きが止まる。
竹井、振り返り、
竹井「何者だ?」
舞「だから天鷲京子や」
竹井「…」
舞「タイで取材しとるとき、あんたが風土病をもろうてきて、それをうつされてえらい怒っとった奥さん。うちが電話して『それは性病ではありません、 誤解です』いうてとりなしてやったやろ?」
竹井、うろたえて、
竹井「…デ、デタラメをいうな」
竹井、そそくさと車に乗り込む。
車、発進する。
舞「タケ!」
○繁華街
バニラの宣伝カーが走っている。
「♪バニラ バニラで高収入」
と歌が鳴り響く。
舞、人混みに紛れて信号待ちをしている。
京子の心の声「昔の仲間たちはみんな遠いところにいってしまった」
舞、ビルの巨大モニターを見上げる。
以下のニュースが流れる。
「総理銃撃事件から一年。献花台に多くの花束」
舞「…なんやと?(と胸が騒ぐ)」
○近くの図書館・館内
窓の外を暗闇が覆っている。
舞、机に座っている。
机の上に大量のスクラップファイル。
舞、スクラップされた古い新聞記事に目を走らせている。
○過去の新聞記事
「富裕層に富集中。地域別所得差広がる 最大6.5倍」
「増加する孤独死 地域との関係薄く孤立深刻に」
「日本、北朝鮮への独自経済措置追加 相次ぐミサイル発射を受け」
「日本人、過去最大75万人減 総人口12年連続マイナス 1億2494万人」
「WHOが緊急事態宣言 新型コロナウイルスで」
「所得格差、過去最大水準 コロナ影響か 厚労省、21年度調査」
「円の実力、過去最低に 円安など響き1970年を下回る」
「『大学も結婚も諦めた』親の束縛に悩む宗教2世 河辺首相銃撃事件」
「闇バイト横行 広がる若者の貧困」
「首相演説中に激しい閃光、相次ぐ要人襲撃、政策引き金か」
○(戻って)図書館
舞、新聞紙を持つ手が震える。
舞「なんや。この惨状は…」
○道
舞、悄然とした面持ちで歩いている。
流れゆく人の群。
道端に寝そべるホームレス。
たむろして酒を飲む若者。
京子の心の声「こんなはずやなかった。同級生の男子は特攻機に乗って雲の向こうに死んでいき、わたしたち女子学生は全員動員されて弾磨きをした。そして、飛行機工場に動員された友達はB29に爆撃されて死んでいった。わたしには常に生き残った者として、何をすべきかという思いがあった。その思いを胸に、いくつもの小説を書いた。こんな、こんな日本を残すためやなかった…」
○マンション・外観
舞、舞の免許証を見ている。
舞、マンションの建物をみあげる。
○同・舞の部屋
散らかりまくった室内。
舞、見わたす。
舞、キッチンへいく。
シンクに汚れた食器や食べ残したカップ麺の容器。
舞「…」
舞、冷蔵庫をあける。
中にはストロングゼロだけ。
舞「なんや疲れがどっときた。お腹も空いたし、お風呂も入らんと…めんどうやな」
○同・風呂
舞、鏡の前で髪を洗っている。
舞、動かしていた手をとめ、
舞「あーうっとうしいわ!」
舞、鏡に映る自分の姿を見る。
京子の心の声「そや。家事や身の回りのことはうちがやらんでも、お手伝いさんとしてこの子にやらせればええやんか」
京子、目を閉じ、全身に力を込める。
京子、舞の肉体からぬっと飛び出す。
憑依がとけ、舞の意識が戻る。
舞、髪の毛に泡をまとったまま、きょろきょろとあたりを見回す。
舞「え?」
舞、パニックになる。
舞、鏡を見る。
鏡越しに映る京子の姿。
舞「(悲鳴)」
○舞の部屋
舞、ドライヤーで髪を乾かしている。
京子、目の前に座っている。
京子「…そういうことだから。今後はわたしが取材と執筆するときはあなたの肉体を借り、他はあなた自身でやってちょうだい。仲良く分担制でいきましょう」
舞「は? さっきからなにいってんの?」
京子「あなたいくつ? こっちは目上よ。しかも命の恩人。その口のききかたはないでしょう」
舞「助けてくれなんて頼んでないし」
舞、ドライヤーをとめる。
舞「…出てけ。つーか、わたしの体に二度と入ってくんな」
京子「それは無理な相談やな。うちの姿はあんたにしか見えんのや。あんたがおらんと何にもできへん」
舞「そんなの知らねえし」
と立ち上がる。
舞、キッチンへいく。
京子、ついていく。
京子「私には書き残したもんがあんねん」
舞「だから知らねえって」
舞、冷蔵庫から缶チューハイを取り出す。
舞、缶チューハイのプルタブを引く。
京子「で、あんたはどうなん?」
舞、チューハイをあおる。
京子「なんで命を捨てようなんて思うたの?」
舞「…幽霊のくせにわかんないの?」
京子「あんたの心までは読めへん」
舞「…」
京子「…男か? それともコレか?」
京子、指を丸めて金のジェスチャーをする。
舞「…」
京子「どっちもみたいやな」
舞「…うっさいわ」
京子「よし。わかった。うちに体を貸すのがいやいうならそれでもええ。代わりに執筆に協力してもらわなあかん」
舞「…だからなんでわたしが」
京子「未完の遺作があるんや。きっと読者は完成を待っとる。書き上げれば金なんかぎょうさん入ってくる。な。どや?」
舞「…」
○新宿区の図書館・外観(翌日)
○同・館内
舞、学習机に座っている。
舞、分厚い本を開いている。
背後に京子の姿。
京子、本を覗き込んでいる。
京子「めくって」
舞、ページをめくる。
京子、食い入るようにページに目をやる。
京子「めくって」
舞、だるそうにめくる。
京子「ここ、アメリカ兵の元海軍中佐の証言、ノートにメモしといて」
舞、スマホを取り出す。
舞、ページにスマホをかざし、写真を撮る。
舞「(撮った画像を京子にみせ)ほい」
京子「…横着者やな」
○同・外(夜)
館内の窓から光が漏れている。
○同・館内
舞、本を広げている。
京子、その本を熱心に読んでいる。
舞「(ため息)…いつまでいる気?」
京子、聞いてない。
舞「おい。ばばあ」
京子「誰がばばあや」
舞「(ぼそっと)聞こえてんじゃん」
京子、本に夢中。
舞「もうだるい。だるいって。ばばあ」
京子「誰が…あんた、この本の参照資料に書かれてる本、一揃い探してきて」
舞「は?」
京子「早よ。図書館閉まってしまうで」
舞、重い腰をあげる。
舞「(ため息)」
○舞の部屋(翌日・朝)
京子、部屋をうろうろしながら、
京子「沖縄戦の⽕蓋は切られ、天空に硝煙が舞い、地上は⾎で染まった。帝国の名のもとに、若き魂たちは…」
と小説にする文章を口にしている。
舞、京子の言葉をスマホに打っていくが、
舞「無理」
と入力するのをやめる。
京子「無理いうたって、文字起こししてもらわな先に進まへん」
舞「(考えて)…あ」
舞、スマホを操作しはじめる。
京子「…?」
× × ×
スマホに文字起こしアプリの画面。
京子「文字起こしアプリ? 便利な時代になったもんやな」
舞「いいから早くしゃべれ」
京子「なんなんやその口の悪さは」
京子、息を整える。
京子「(スマホ画⾯へ)苛烈な戦⽕の中で、彼らは希望と絶望を交え、狭間で⼈⽣の意味を問い続けた…」
文字起こしアプリ、声に反応しない。
舞「なんで…」
京子「そりゃそうや。うち幽霊やもん」
舞「…」
× × ×
京子「歴史の罅割に⽴ち、沖縄の⼟は数多くの英霊を懐抱した。家族の愛、友情、そして⼈間の尊厳が、戦の闘志を絆として結んだ。沖縄戦はただの戦術的衝突ではなく、⼈間の実在と歴史の交錯点…」
舞「(遮って)ああああ!」
とスマホを放り投げる。
舞「何いってるか全然わかんない」
舞、ベッドに寝そべる。
京子「根気のない娘やな(と呆れる)」
舞「…うっさい」
京子「ほんなら今から図書館いくよ」
舞「は?」
京子「3日書いて4日取材。これがうちのスタイルや。休んどるひまはない」
舞「もう疲れたって」
京子、指で丸を作って、
京子「金、ほしいんやろ?」
○図書館・中(夜)
舞、片手で本を開いている。
京子、その本を読んでいる。
舞、もう片方の手でスマホをいじっている。
画面には玉野からのLINEメッセージ。
「会いたい」
舞「…」
舞、おもむろに立ち上がる。
舞「トイレ」
○ホストクラブ・店内
舞、ソファーに座っている。
隣に京子の姿。
舞「(不機嫌)…なんでついてくんの?」
京子「幽霊やからや」
玉野、やってくる。
玉野、舞の隣に座る。
玉野「舞。会いたかった」
舞、心なしか顔が緩む。
京子「(見て)…なんや。自分、商売男に貢いでたんか」
玉野「どうしてたの? 連絡取れなくて心配してた」
舞「うん。ちょっと…」
京子「あかん。ひと目で中身ペラペラとわかるわ。こんな男、どこがええねん」
玉野「何飲む?」
京子「ペラッペラもペラッペラや。あんた、悪いことはいわんから今すぐこの男と」
舞「(京子へ)うるさい!」
玉野「(驚いて)…え?」
舞「ううん。何でもない」
舞、甘えた顔で玉野を見つめ、
舞「悠。小説家の天鷲京子って知ってる?」
玉野「天鷲京子?」
京子「こんな男が知ってるわけないやろ」
玉野「骨太の社会派小説家書く人だろ? 俺、何冊か読んだよ。面白かった」
京子「ほぅ。いきなり見直したわ」
舞「…そうなんだ」
玉野「天鷲京子がどうかした?」
舞「ううん。別に」
玉野「(舞を見つめ)それより舞。今日、俺にラスソンを歌わせてほしい」
京子「ラスソン?」
舞「(躊躇う)…」
玉野「(顔を寄せ)いいだろ?」
舞「…いいよ」
玉野、近くのホスト2に目配せする。
ホスト2「姫からボトル入りました!」
○舞の部屋
酔っ払った舞、ベッドに倒れている。
枕元にスマホ画面。
悠が歌う姿が映っている。
京子、舞を見下ろし、
京子「なるほどな。一日の売上が一番多かったホストが店じまいの前に一曲歌える。それがラスソンつーわけか。阿漕な商法やな。よう考えるわ」
床に散らばった空き缶。
京子「あんだけ店で金使うて、家では缶チューハイにカップ麺。あの男の食いもんにされとるだけや」
舞「…担当のこと…悪くいうな」
京子「ほぅ。お目当ての男を担当いうんか」
舞「うちらはもうすぐ付き合う…わたしが頑張って…悠を新宿一のホストにしたら…ホスト辞めて付き合うって…悠と約束してる…」
京子「それを色恋営業いうんや」
舞「悠は他のホストと違う…恋人も作らないし…ほかの女とも会わない…わたしを愛してくれてるから…」
京子「(呆れて)そんで、その男のために体まで売っとるわけか」
舞、ぴくりと体を動かす。
京子「うちが気づかんとでも思うとうたのかい」
舞「…」
京子「さ、書くで。起きんさい」
舞、反応しない。
京子「おーい」
舞、すでに正体を失っている。
京子「起きないんやったらしかたないな」
京子、うつ伏せで眠る舞の体に被さる。
舞(に憑依した京子)、全身を痙攣させながら気合いで起きあがる。
生まれたての小鹿のよう。
以下、バニラ宣伝カーの歌にのせてカットバック
○舞の部屋(翌日)
京子、小説にする文章を口にしている。
舞、必死にスマホで文字起こししている。
○図書館・中(数日後)
舞、本を開いている。
京子、熱心にページに目をやっている。
舞、何となくページに目やる。
○舞の部屋(数日後)
京子、小説にする文章を口にしている。
舞、スマホで文字起こししている。
舞、スマホを打つ速度があがっている。
○図書館・中(数日後)
舞、本棚で資料を必死に探している。
と、舞の手もとに本が差し出される。
初老の男、本を差し出している。
男「探してるのはこの本でしょう」
舞「…?」
男「毎日、熱心に勉強してますね。感心だ」
舞、しどろもどろになる。
○舞の部屋(数日後)
京子、小説にする文章を口にしている。
舞、スマホで文字起こししている。
さらにスマホを打つ速度があがっている。
○図書館・中(数⽇後)
舞、本棚で資料を必死に探している。
と、舞の⼿もとに本が差し出される。
さらに別の男の⼿。
本を持ったおじさんたちが何やら熱い議論を交わしながら、舞を囲んでいる。
○フラッシュバック
ホテルの一室。
ベッドの上に舞。
舞、諭吉を手にした半裸のおじさんたちに囲まれている。
○(戻って)図書館
舞、逃げるようにおじさんたちのもとから離れる。
舞、顔をゆがめ、しゃがみこむ。
○図書館・中(数日後)
舞と京子、本を読んでいる。
机の上の資料に「沖縄戦」「ひめゆり学徒隊」「沖縄特攻」「前田高地」などの文字。
○沖縄の海(イメージ)
青く美しい海。
舞と京子、海岸に佇んでいる。
京子、じっと目をつぶり、戦時中に思いを馳せる。
○(戻って)図書館
京子、涙ぐむ。
舞、そんな京子を見つめている。
カットバック、おわり
○舞の部屋
京子、小説にする文章を口にしている。
京⼦「…しかしその中で、⼈々は希望の芽を⾒つけ、困難と痛みを乗り越えて未来へと歩み続けた。戦の記憶は⾵化せず、沖縄の⾵に乗せ、後世に向けて静かに語り継がれていく。了」
舞、スマホで文字を打っている。
舞、「了」と打ちおえるや否や、ベッドにぶったおれる。
京子、両手を広げ、
京子「(叫ぶ)出っ獄ーーーーー!!!」
京子、室内をバタバタ走り回る。
舞、呆気にとられて、
舞「なに?」
京子「脱稿の儀式みたいなもんや」
舞「…?」
京子「執筆は刑期と同じや。長く暗いトンネルん中で原稿用紙と向き合う。そやから書き終えた暁には、刑期満了、出獄ってわけや」
舞「…」
京子「いつもは5年、10年の刑期。今回は短い刑期やったな」
舞「…そんなに儲かんの? 小説って」
京子「金のためやない。うちを見くびってもろうては困る」
舞「…」
京子「戦争を忘れないためや」
舞「戦争?」
京子「そや。うちが若かった頃は男の人たちは戦場にいき、うちは人を殺すための弾磨きをさせられたんや。戦争がわたしたちから青春を奪った。わたしに青春を返してほしい。その一心や。その一心で机にかじりついて筆をとってきたんや」
舞「…」
○出版社の一室
舞と編集者1、机に向かい合っている。
舞の背後に京子。
編集者1「(舞へ)っぽいんですけどねえ」
京子「ぽい?」
編集者1「天鷲京子の遺作の続きですよね。夏目漱石の『続明暗』みたいなことでしょ? コンセプト的には」
編集者1、原稿をめくり、
編集者1「ぽいんですけど、うーん、どうですかねえ」
京子「本物や」
○別の出版社
編集者2、舞へ、
編集者2「ぽいんですけどねえ」
○別の出版社
編集者3、神妙な面もちで舞を見つめている。
編集者3「(舞へ)読ませていただきました」
舞の背後にいる京子、
京子「どうやった?」
編集者3「…お話が本当なら、天鷲京子の霊を憑依させてお書きになったとのことで」
京子「間違いあらへん」
編集者3「あなたはご存知ですか。作家天鷲京子はどの作家よりも登場人物の名前を大切に扱ってきました」
京子「その通りや。タイトルと登場人物名にはこだわりがあるんや」
編集者3「ところがです。遺作の作中に小久保という男が出てきますが、あなたの書いた原稿では古久根になっている。名前には命が宿ると考えている天鷲京子であれば犯さないミスです」
京子「名前のミスくらいなんや。20年も眠ってたんや」
編集者3、立ち上がる。
編集者3、原稿を放り投げるようにして舞へ返す。
編集者3「騙す相手を間違えましたな」
○舞の部屋(夜)
室内に舞と京子の姿。
京子「(頭を抱え)あかん。持ち込み全滅や。どこの編集者もアホしかおらへん」
舞「…金は?」
京子「…」
舞「金が手に入るっていったじゃん」
京子「うっさいわ。今策を練っとるとこや。金金モノモノ、高度経済成長んときから日本人は何も変わってへんな」
舞「…」
舞、バッグを手にする。
舞、バッグを持って玄関へ向かう。
京子「(制して)体売りにいくんか?」
舞「…別に自由だろ。あんたの体じゃないんだから」
舞、構わず玄関へ向かう。
京子「待ちぃ!」
舞「…」
京子「あんた、そんな汚らわしいことして何とも思わへんの? 恥を知りなさい!」
舞、振り返って、
舞「何急にマジになってんの?」
京子「あんたはパンパンや」
舞「は?」
京子「パンパン、知らんのか。戦後アメリカの進駐軍相手に体売ってた売春婦のことや。あんたはそのパン助や」
舞「(薄ら笑いをし)もしかして嫉妬してるの?」
京子「なんやと?」
舞「この前話してたじゃん。弾磨きばっかりで青春なかったって。青春っていうかさ、男ができなかったんだよね。ばばあもセフレとかほしかったのにね」
京子「何がほしいって?」
舞「セックスフレンドに決まってんじゃん」
京子、顔を真っ赤にする。
京子「このFC2PPV女!」
舞と京子、お互いに飛びかかる。
二人、きーきー叫びながら猫パンチを繰り出す。
が、お互いの体を空しくすり抜ける。
舞「玉磨き!」
京子「竿磨き!」
舞、かっとなり、飛び出すように部屋を出る。
○繁華街
舞、どかどか大股で歩いている。
京子、あとをつける。
舞「(京子へ)ばばあ! ついてくんな!」
京子「こっちだってあんたの後ろなんか歩きとうないわ!」
舞「ならついてくんな!」
京子「おう。けどな、あんたの肉体はもううちのもんでもあるんや!」
舞、無視して歩を進める。
京子「…」
京子、ふとビルの看板に目がいく。
看板にBSTテレビの新ドラマ「交換ウソ日記」の広告。
「大人気小説、ドラマ化決定!」
京子、考えて、
京子「そや…タケや!」
京子の表情がにわかに明るくなる。
京子「出版社がダメならテレビ局いう手があるやないか」
京子、歩き出し、舞の姿を探す。
京子、前方にいる舞を見つけ、
京子「名案や! 光明が差し…」
といいかけて、舞の様子に気づく。
舞、凍りついたようにその場に立ち尽くしている。
京子、舞の視線の先を見る。
玉野、高級ブランドで身を固めた女と仲良く買い物を楽しんでいる。
玉野、女と向かい合い、女にネックレスをつけてやっている。
舞、体を震わせている。
○ビルの階段
荒い息が階段に響きわたる。
舞、無我夢中でのぼっている。
京子、あとをつける。
京子「ちょっと…どこいくんや?」
○屋上
舞と京子、やってくる。
舞、手すりのほうへ歩いていく。
京子、夜空を見上げ、
京子「なんや。急に天体観測でもしたい気分か?」
舞、京子に背を向けたまま、
舞「(ぼそり)…呪いのビルなんだって。ここ」
京子「…呪いのビル?」
舞「このビルでね、一年間に9人が飛び降りた。どの子もホス狂い。わたしと同じ。友達もここで死んだ」
京子「…」
舞、京子を振り返って、
舞「だから、別に死ぬのは怖くない」
京子「(焦って)ちょっとなにいうてんねん」
舞、手すりを乗り越える。
京子、思わず舞に近寄る。
舞「こないで!」
舞、縁に立ち、地上を見おろす。
京子、恐る恐る舞へ近づき、
京子「…アホな真似はやめ。あんたは悪い男に引っかかっただけや。今すぐあの男と縁を切らなあかん」
舞「…」
京子「そしてまっとうな暮らしをするんや。今のままじゃあんたはいずれ…」
舞「(遮って)そんなことわかってるよ!」
京子「…」
舞「わたしだってこんな生活やめたいよ! 辛いよ! 苦しいよ! 学費もつぎ込んで! 親に内緒で大学辞めて! 客に体売って! 好きな人に裏切られて!」
京子「…」
舞「でも抜け出せない! 見つからないの! 出口がどこにも見つからないの!」
舞、地上を見おろし、目をつぶる。
舞、飛び降りる。
京子「あかん!」
京子、反射的に駆け出し、手すりを飛び越える。
京子、舞を追って飛び降りる。
京子、気を失っている舞に空中で憑依する。
舞(に憑依した京子)、かっと目を見開く。
舞、ぐんぐん地上へと落ちてゆく。
舞、着地のさいに両手を広げて思い切り受け身をとる。
受け身をした弾みで、京子の霊魂が舞の肉体から離れる。
舞、意識を取り戻す。
京子、仰向けに倒れている舞を見おろし、
京子「…生きとるようやな」
舞「…なんで死ねないの?」
京子「あんたを死なせるわけにはいかん」
舞「死なせて…死なせてよ! 生きてたって苦しいだけだよ!」
京子、泣きわめく舞を厳しく見つめ、
京子「死なせん! ようわかった。この日本を正すためや。そのためにうちは蘇った。あんたに死なれてたまるか!」
○竹井の家・外観
一等地に構える豪邸。
○同・居間
竹井、テーブルで飲んでいる。
竹井の妻、ビールを注ぐ。
妻「あなた、明日のご予定は?」
竹井「うむ。赤坂プリッツスタジオで株主総会がある」
○舞の部屋(深夜)
京子、室内をうろうろしている。
京子「(考えながら)ちょい待ってな。飛びっきりのやつをタケに持ち込まなあかんからな」
舞、スマホを手にしたままおとなしく座っている。
舞のスマホ画面に以下の文字。
「天鷲京子作
テレビドラマ企画書
BST御中」
○赤坂プリッツスタジオ・外(翌日)
大勢の人だかり。
舞と京子、立っている。
京子「いいんやな。うちに体預けても」
舞「(頷く)」
○同・会場内
壇上に重役たちが並んでいる。
その中に竹井の姿。
○同・外(夕)
総会を終え、帰っていく株主たち。
○同・廊下
部下を引き連れた竹井、肩で風を切って歩いている。
声「…奥さん、元気?」
竹井、驚いて声のほうを見る。
清掃人に扮した舞(京子)が廊下の隅に立っている。
竹井、うろたえる。
竹井「だ、誰なんだ!」
舞「天鷲京子や」
竹井「警備員!」
警備員、何人もやってくる。
竹井「(舞を顎でしゃくり)つまみ出せ」
舞、警備員らに囲まれる。
舞、警備員に抵抗し、
舞「どかんかッ。うちはタケに用があるんや」
竹井、悠然と歩いていく。
舞と竹井との距離が遠のいていく。
舞、警備員らに取り押さえられながら、
舞「(叫ぶ)戦後を終わらすいうたのは、あれは嘘だったんか!」
竹井、立ちどまる。
舞 「あなたの作品を映像化して、僕が戦後を終わらせます! ってあんた、いうてたよな。それをすっかり忘れて、日和見の、ただのつまらない経営者になってしもうて…あんた、自分が恥ずかしくないんか!」
竹井、舞を振り返って、
竹井「…な…何なんだ…君は…」
舞「戦後から何も変わらへん。男は金のために女を騙し、女は性を売る。金金モノモノで、心の貧しい、そんな連中が街中に溢れとるやないか。あんたらはあの戦争から何を学んだんや。何一つ学んでへんやないか!」
竹井「…」
舞「声なき声に報いる、その志に、あんたも同調したと思うたから、うちは映像化の許可を出した。スポンサーの都合でタイトルも登場人物の名前も変えなあかんかった。うちは嫌やった。けど、あんたと約束した、戦後を終わらすと。だから、うちは自分のこだわりを捨ててあんたの話を呑んだんや。タケ! それを忘れたとはいわさへんで!」
竹井、じっと舞を見つめる。
舞と重なるようにして京子の姿が浮かびあがる。
竹井「(呆然と)…あ、天鷲さん?」
舞、警備員に引きずられていく。
竹井「待て!」
竹井、吸い寄せられるように舞に近づく。
竹井と舞、見つめ合う。
竹井「ほ、ほんとに…ほんとに天鷲さんなんですか?」
舞「そういうとるやろ」
竹井、力なくうなだれる。
舞、丸めた紙束をポケットから取り出し、竹井に突きつける。
竹井「…?」
舞「新作の企画書や。読んで連絡して。あんたに昔の志が残ってるなら魂が動くはずや」
○ATMの前(数日後)
舞と京子、ATMの前に立っている。
舞、通帳の残高を見て、
舞「…入金されてる」
京子「タケからの手付け金や」
舞「…うまくいったんだ」
京子「当たり前やろ。あんたにも見せてやりたかったわ。うちの正体に気づいたときのタケの驚いた顔を」
舞「(笑う)」
京子「金。早よ引き出し」
舞「…いいの?」
京子「ええも何も、あんたの頑張りで稼いだ金や」
舞「…うん」
舞、金を引き下ろす。
京子、金をじっと見つめる舞へ、
京子「さ。次はあんたの番や」
舞「…」
○ホストクラブ・外(夜)
舞、緊張した面もちで立っている。
その手には封筒が握られている。
京子、少し離れたところで心配そうに舞を見つめている。
玉野、やってくる。
舞「舞? こんなとこに呼び出してどした? 中入ろうよ」
舞、無言で玉野に封筒を渡す。
玉野「…?」
舞「掛け。全部あるから」
玉野、封筒の中身を確認する。
玉野「え、すごいじゃん!」
舞「…」
玉野「じゃあさ、今日はこのお金で遊ぼうよ。掛けなんかいつでもいいよ。俺は舞のことを信じてるからさ」
舞「…」
玉野「舞?」
舞、玉野にビンタをかます。
玉野、あ然とする。
舞、去っていく。
○歩道橋
舞、うつむいて歩いている。
京子、心配そうにあとをつける。
舞、欄干によりかかる。
京子「…?」
突然、舞、両手を大きく広げて、
舞「しゅっつごーーーく!!!」
と清々しく叫ぶ。
京子、きょとんする。
舞、笑顔で車の流れを眺める。
次第に舞の笑顔が崩れ、舞の目からとめどなく涙があふれる。
京子、舞の姿にもらい泣きする。
○ホストクラブ・店内
玉野、保冷剤で頬を押さえている。
玉野、苛立って椅子を蹴飛ばす。
玉野「(冷酷な眼差しで)…立ちんぼが嫌なら熱い風呂に沈ませてやるよ」
○舞の部屋
小ぎれいに片付いた室内。
舞と京子、テーブルに向かい合ってい座っている。
テーブルの上にはデパ地下の惣菜。
京子「二人の出所祝いやな。うちは食べられへんけど」
舞「(笑顔)」
京子「さ。お食べ」
舞「うん」
舞、割り箸を手にし、食べ始める。
京子「ここからが本番や。企画始まったら忙しゅうなるで。取材で世界中を飛び回らんとな。覚悟しとき」
舞「(もぐもぐしながら)でもさ、ばあば」
京子「ばあば?」
舞「ばあばの企画、なんかヤバそうな内容だったし、テレビで流せんの?」
○舞の部屋(イメージ)
インターホンが鳴る。
舞、玄関のドアを開ける。
部下を連れた竹井、厳めしい顔で立っている。
竹井「天鷲先生。この前のお話はなかったことにしていただきたい」
○(戻って)舞の部屋
舞「てことになったりして」
京子「(考えて)タケならありえるわ」
舞、惣菜を箸でつまむ。
京子「ま、そうなったらそうなったらで、タケにぴしゃりといってやるわ」
○舞の部屋(翌日・朝)
舞、キッチンで朝食を作っている。
インターホンが鳴る。
舞、手をとめて玄関へ向かう。
部屋にいた京子も玄関へいく。
舞、ドアを開ける。
部下を連れた竹井、厳めしい顔で立っている。
竹井「天鷲先生。この前のお話はなかったことにしていただきたい」
京子の顔、どアップで、
京子「なにぃ?!」
(つづく)
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