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テレビドラマと映画の違い

バズると思ったtweetですが、
よもやの0いいね。

ニコニコ動画とかのタグにある、
「大体あってる」、
みたいなことを表現したかったのですが、
ぜんぜんあってないし、
当然の結果か。




テレビドラマと映画の決定的な違いについて、
日頃から考えるのですが、
未だ答えは出ず。

ただ、
脚本に限った話ですと、

・ストーリーの長さ
・ストーリーのアドバンテージ

この二つに落ち着きましたので、
詳しく見ていきます。


◎ストーリーの長さ

前回の記事(https://note.com/furaidopoteto/n/nc45a2f421d29?from=notice
でも書きましたが、

小説の言説に、
短編ほど構成の厳格さが求められ、
長編は遊びがきく、
があり、

映像媒体でいうと、
平均二時間の映画が短編に対して、
ワンクールの連続ドラマが長編です。

長さによって、
何が変わるといえば、
ストーリーの二つの要である、
構成とキャラクターの、
比重の置き方です。

連続ドラマでは、
尺が長い分、
本筋以外のエピソードや、
主役以外のキャラクターにも、
焦点を当てる余裕が生まれます。

海外ドラマ「ブレイキングバッド」では、
作中の序盤、
主人公の妻とその妹の、
万引きを巡る確執が描かれていますが、

このエピソードは、
脇役である妹に焦点を当てたものであり、
本筋とは関係しません。

つまり、
後述するように、
構成的には贅肉部分なのですが、

しかしその贅肉ゆえに、
姉妹の関係性や、
脇役のキャラクターが掘り下げられ、
それがストーリーに豊かさをもたらしている、
といえます。


一方、
映画ではそうはいきません。

もし「ブレイキングバッド」を、
二時間の尺に収めるとどんなストーリーになるか、
時々妄想しますが、

本筋から逸れた、
姉妹のいざこざなど、
書いている余裕はなく、

もし書かれていたら、
構成不足の誹りは免れないでしょう。

連続ドラマでは長所となる、
サブキャラのエピソードといった、
ストーリーに豊かさをもたらす要素が、
先に書いたように、
尺の短い映画では、
贅肉扱いとなるのです。

したがって、
映画の場合、
何が必要な肉で、
何が不要な肉か、
その見極めをし、
贅肉をそぎ落とすことが不可欠であり、

連続ドラマでは基本的には不要である、
その工程をさして、
構成の厳格さと呼べるわけです。


もうひとつ、
ストーリーが長いと、
新キャラを出すことができます。

この点においても、
構成の強度に差がでます。

例に出した「ブレイキングバッド」をはじめ、
連続ドラマでは、
ストーリーの途中で様々なキャラクターが登場し、

新キャラの存在が、
ストーリーを推進させる上で、
強力な武器になっているのですが、

映画の場合は、
構成の都合上、
キャラを途中で出すと悪手となることが多く、
新キャラが出てくる頻度は低いはずです。

たとえば、
「ブレイキングバッド」のラスボスは、
終盤で初登場する若造ですが、

映画の場合、
ぽっと出のキャラがラスボスというのは、
それがたとえいかに魅力的な新キャラだとしても、
全体の構成を見渡したとき、
いびつな感じは拭えません。 

もし若造がラスボスなら、
その若造が最初から登場し、
最初からストーリーに絡んでくる、
そういった構成になるのが、
映画では自然かと思われます。


構成とキャラクター、
どちらも大事だとした上で、

長いストーリーだと、
構成に頼らなければならない理由が、
あまりないように思います。

前述した、
ぽっと出のキャラがラスボスといった、
緩い構成でも観客が許してくれるため、
あえて構成に頼る必要性はありません。

一方で、
短いストーリーの場合は、
今書いてきたように、
長編では有効に働く、
サブエピソードや新キャラという武器が、
尺による制約のため、
基本的には封じられています。

ゆえに連続ドラマと異なり、
構成に比重をおかざるを得ないのが、
映画であり、

両者を比較するならば、
ストーリーの道中において、
道草を楽しむのが連続ドラマなのに対して、
フルスロットルの疾走感を楽しむのが映画、
といえるのではないでしょうか。



◎ストーリーのアドバンテージ

テレビドラマには連続ドラマのほか、 
「相棒」に代表される、
一話完結型のストーリーも存在します。

一話完結型の場合、
連続ドラマとは異なり、
主人公が狂言回しになるケースがほとんどです。

狂言回しとは、
傍観者としての立場から、
ストーリーを進行させる役のことで、
たとえば、
「相棒」の杉下右京なら、
主人公として事件を捜査し解決しますが、
一方で、
ストーリーの深いところ、
つまり、
被害者と犯人の人間ドラマの部分においては、
あくまで傍観者の立場にすぎず、
事件を解決したところで、
主人公自身、
何ら変化成長しません。

連続ドラマであれば、
主人公が傍観者というのはあり得ず、
ストーリーを通して必ず変化成長しますが、
一話完結型ドラマの場合、
今説明したように、
主人公が傍観者であるため、
実質の主人公、
つまり、
ストーリーを通して変化成長するキャラは、
各話に犯人役として登場するゲストなのです。

そうした仕組みが、
一話完結型ドラマの特性であり、

この仕組みのもとに、
狂言回しの主人公を作り上げ、 
(全10話であれば)
同じ主人公を使って、
違う10個のストーリーを作るわけです。

そう考えたとき、
もっとも重要となるのが、
1話目で魅力的な主人公を確立することです。

それさえできれば、
2話目以降は、
魅力的な主人公という、
最初からアドバンテージがある状態で、
ストーリーを作ることができるからです。
(多少ストーリーがつまらなくても、
客は主人公に愛着があるので許してくれる)

つまり、
1話目で作ったキャラクターを使って、
10回ストーリーが書ける、
という状況下においては、

残り9回分のストーリーを見越し、
キャラクター作りに全力を注ぐのは、
効率面から明らかであり、

キャラクターよりも、
各話のストーリー(正確には構成とプロット)に力を入れるのは、
ふつうでは考えられません。

客のキャラへの愛着、
というアドバンテージを生み出せる以上、
一話完結型ドラマにおいては、
ストーリーにはそこまでこだわる必要もないのです。


それに対して、
映画は一回勝負なので、
当然アドバンテージはありません。
(映画にもシリーズものがありますが、
それについては後述します)

したがって、
ストーリーとキャラを天秤にかけたとき、
もちろん作り手の作風にもよりますが、
主人公の使い回しを前提としていない映画では、
一話完結型ドラマほど、
キャラに傾くことはありません。

個人的には、
映画の場合、
キャラクターに頼る理由があまりない、
とも感じます。

一話完結型ドラマだと、
繰り返すように、 
魅力的な主人公を生み出せるかが、
作品の生命線になり、
魅力のない主人公による全10話は、
客にしてみれば、
地獄ですが、

一方で、
1話きりのストーリーであれば、
構成をはじめ、
題材のディティールやテーマなど、
そうした部分に魅力があれば、
多少キャラがダメでも、
致命的な欠点にはならないと、 
自分は思うからです。
(もちろんキャラも大事ですが)


話を戻しまして、
ただし先述した通り、
一話完結型ドラマ的なものは映画にもあり、

「男はつらいよ」などの、
シリーズものがそうです。

シリーズものの場合は、
一話完結型ドラマと同様、
二作目以降は、
客が最初から主人公に感情移入した状態で、
ストーリーを見てくれる、
というアドバンテージが発生します。

おそらくですが、
やはりキャラクターが立った作品ほど、
シリーズ化する傾向があります。

先日映画「兵隊やくざ」を見て、
キャラが立ってるな、
と思ったのですが、
あとで調べたところ、
案の定、
シリーズ化していました。

近年でいえば、
「べいびーわるきゅーれ」もそうでしょう。

この手の映画は、
キャラクターに傾いている、
という意味で、
テレビドラマ的といえるのかもしれません。




◎単発テレビドラマと映画の違い

テレビドラマには連続ドラマと一話完結のほか、
二時間のスペシャルドラマや、
コンクール受賞作の映像化作品など、
単発のテレビドラマも存在します。

では、
単発テレビドラマと映画の違いはどうか?
を考えたとき、

もはやそこにあるのは、
媒体の違い、
つまり、
金を払って劇場で見るか、
CMを見てお茶の間で見るか、
その違いがあるだけで、 
それ以外の差は存在しない、
と自分は考えます。

姉(tweetでは妹にしてます)はよく、
劇場版「踊る大捜査線」を例に出して、
あえて映画にしなくても、
別にテレビドラマで十分、
と口にしています。

たぶんですが、
テレビドラマに対するイメージとして、
映画に比べて、
絵がしょぼいとか、
テーマが浅いとか、
あるんだろうと思います。

いわんとすることは、
何となくわかりますし、
傾向としてはそうなのかもしれませんが、
賛同はできません(でした)。

映画にも、
テーマ性のかけらもない作品はありますし、
低予算の作品もあるので、
その場合、
必然的に絵はしょぼくなるでしょう。

逆にテレビドラマでも、
テーマ性や映像の迫力など、
映画を超えた作品がないとも限りません。

一例をあげれば、
創作テレビドラマ大賞の受賞作「おしゃしゃのしゃん」。

脚本コンクールが生み出した傑作の一つで、
構成、キャラクター、ディテール、
三拍子揃っており、
脚本のレベル的には、
並の映画脚本など相手になりません。
(本作はDVD化されていますので、
レンタルで借りられるはず)

したがって、
同じ長さの尺で、
かつ一発勝負のストーリー、
という同条件のもと、
テレビドラマと映画の違いを考えた場合、
少なくとも脚本的には、
意味をなさない問いに思えます。

前述した「踊る大捜査線」はテレビドラマ発の作品であり、
劇場版の評価はさっぱりですが、
もし映画発であったなら、
青島や室井をはじめ、
なにぶんキャラクターに魅力があるので、
寅さんのようにシリーズ化し、
愛される映画になっていた気がしますし、

もし寅さんがテレビドラマなら、
「テレビで十分」という感覚を、
やはり持つような気がするからです。

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