小山田圭吾「いじめ」バッシング問題 2. 『ロッキングオン・ジャパン』での発言について

小山田さんは、障害者に大便を食べさせる、バックドロップをする、自慰行為をさせるなどのいじめをしたとして、強い非難を浴びています。オリンピックの開会式の音楽からは担当した部分が削除され、所属しているグループの新作アルバムは発売中止になりました。

非難されているとおりのいじめがなされていたのなら、非難されて当然だと思います。曲が削除されたり、アルバムの発売中止という対応が正しいかどうかも、議論の余地はあるかもしれませんが、当然だと思う人も多いでしょう。

しかし、小山田さんが障害者に大便を食べさせる、バックドロップをする、自慰行為をさせるなどのいじめをしたとすることに、ちゃんとした理由はあるのでしょうか。

小山田さんに対する非難は、雑誌『ロッキングオン・ジャパン』1994年1月号(これ以降、ROJと表記することにします)のインタビューと、雑誌『クイックジャパン』vol.3(これ以降、QJと表記することにします)の「いじめ紀行」という企画内での発言に基づいています。この二つの雑誌での発言をてがかりとして、「小山田は障害者に大便を・・・」という非難をすることは正しいのでしょうか。

まずROJでは、いじめについて次のように語られています。

「うん、いじめてた。けっこう今考えるとほんとすっごいヒドいことをしてたわ。この場を借りてお詫びします(笑)。だって、けっこうほんとキツいことしてたよ」
「だってもうほんとに全裸にしてグルグルに紐を巻いてオナニーさしてさ。ウンコを喰わしたりさ。ウンコ喰わした上にバックドロップしたりさ」
「だけど僕が直接やるわけじゃないんだよ。ぼくはアイデアを提供するだけで(笑)。」
(以上、全てROJ、30ページ)

大便を食べさせる、バックドロップをする、自慰行為をさせるなどのいじめを自分がしたと、小山田さんは認めているとしか思えません。

ひょっとすると、これだけでもう小山田さんを非難するのに十分だと思われる方もいるかもしれません。たとえば評論家の古谷経衡さんは、「加害と向き合えない小山田圭吾君へ──二度と君の音楽は聴きません。元いじめられっ子からの手紙」( https://www.newsweekjapan.jp/furuya/2021/07/post-14.php )という記事の冒頭で、ROJの記事にのみ言及しながら、「『いじめ』などではなく虐待を通り越して単なる犯罪行為である。読んでいて吐き気がした」とのべています。

でも、ROJのインタビューしか存在しなければ、小山田さんがいまほど強い非難を浴びていたでしょうか。わたしは疑問に思います。

まず、ROJではいじめの被害者が「障害者である」ことが語られていません。もちろん、ここで語られているいじめはとてもひどいもので、もしそれが事実であるなら強い非難に値することは間違いありません。しかし今回、小山田さんがあんなにも強く非難されたのは、その被害者が社会的弱者である障害者であったことが大きな理由であったと思います。その重要な要素が、ここには欠けています。

つぎに、この発言はきわめて漠然としたもので、十分なリアリティーが感じられないことが挙げられます。若いロックミュージシャンが、自分はこういう悪いことをしたと語ることはべつに珍しいことではなく、そしてそこで話を大袈裟にするのもよくあることです。

この発言だけなら、それを単純に事実と受け止めて、「鬼畜」や「いじめの加害者というより犯罪者」などという非難は浴びせられなかったでしょう。もしROJのインタビューしか世に出ていなければ、「小山田、本当にこんなことしてたの?」「もしこれが本当なら、けっして許されるものではない」というように、問いかけの形になったり、留保をつけた主張になっていたのではないでしょうか。

ここまで読まれた方は、「でもQJで障害者いじめについて細かく語っているじゃないか。それを合わせて読めば、小山田に対する非難がけっして行き過ぎではないことがわかるはずだ」と言われるかもしれません。

実際、先ほど取り上げた古谷さんも、記事の3ページ目ではQJの名前をあげていますから、QJの発言を踏まえての非難であることは明らかです。

そこで、つぎにQJの発言を少し、見てみましょう。

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