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無重力の世界へ 山之口理香子生誕イベント Lumière

先日、り子ちゃんの生誕祭行ってきた。

会場はビアレストランとして有名な銀座ライオンのクラシックホールだった。

銀座駅をてきとーな出口から出てしまったため、会場までは少し歩いた。3連休の中日なのもあって外国人観光客や買い物客でひしめく大通り。土日の銀座通りは約1キロに渡って歩行者天国になるので、いっそう街はテンションが高く賑やかだった。

ただ銀座の良いところは歩行者天国になるだけでなく、そもそも他の街と比べても歩道が広いこと。それに銀座の街ってガードレールがないのだ。車を通りにつけて買い物しやすいようにと配慮されていて、車道と歩道に段差があること、道の見通しが良いという理由で国から容認されているらしい。

だから渋谷や新宿を歩くのと違って圧迫感がない。人は多くてもわりと開放感がある。渋谷や新宿なんて土日や夜のピークタイムを歩こうものなら殺気だって仕方ない。

平日の夜に渋谷タワレコでめたまっぱのリリイベがあったとき、仕事終わりでただでさえ開演に間に合うかの瀬戸際なのに、タワレコに着くまでに群衆の壁がえげつなくて全然先へと進めず、まじで軽率に全員◯んでくれないかなとか思ったもんな。

だから生誕の場所が銀座なのはその意味では快適だった。GINZA SIXなんかもすぐ近くだった。

ビルの6階にあるホール内はクラシカルな教会のような雰囲気で、天井も高く、梁や壁からも歴史を感じさせた。あとで調べてみたら80年以上の歴史があるらしい。
靖子ちゃんのKILMツアーに選ばれた各地域の会場はその象徴だったけれど、パフォーマンスがよりいっそう映える非日常的な空間に、会場からこだわってくれるのはとても嬉しい。


恥ずかしながらり子ちゃんのソロイベはこの日が初参戦だった。

心身共にぶっ壊れたり仕事に忙殺されたりで、ライブハウスからはここ数年遠ざかっていた。ZOC界隈にもほとんど触れていなかったので、り子ちゃんのことも実は春先までほぼ予備知識がなかった。
今年5月の歌舞伎町祭りを契機にまたライブを観るようになったから、あの日は自分にとってかなり大きな意味を持っている。

特に夏以降はMAPAにハマった。MAPAのライブを観るたびその振付の魅力に惹かれていった。

自分が過去アイドルにハマったことがなかったのもあってか、振付を見るとか楽しむという発想は人生においてほぼなかった。観劇は人並み以上にしてきたけれど、会話劇が多かったし。

だからMAPAやMETAMUSEのパフォーマンスをきちんと観るようになってから、振付を見るのもそれに合わせて楽しむのもなんて楽しくて豊かなことなんだろうと新鮮で仕方なかった。

MAPAのステージを観るたび好きな振りが増えたり着目したいダンスパートが出来たりと、ライブそのものの楽しみ方が変わった。

人に新たな視座や着眼点や楽しみ方を与えられるひとってほんとうにすごいと思う。

ステージで体現するMAPAの4人の素晴らしさはもちろん、でもその先にはそれを振付けたり子ちゃんがいて、だからこそり子ちゃんのイベントには年内絶対行きたいと思っていた。

り子ちゃんのソロでのパフォーマンスを生で見てみたかったし、「あなたのおかげで振付ってこんなに大切で奥が深くて、ライブの楽しみ方を広げてくれるものだって知ることができました」と。直接伝えたいと思っていた。

それらが実現したのが生誕祭だった。
生演奏のあったソワレは行けず、マチネのみの参戦ながら、とても心が満たされた。

背中の開いた仕立ての良いベロアのワンピースを纏ったり子ちゃんは、METAMUSEで見ていた彼女とも異なる舞踏家の山之口理香子だった。

複数のお洒落なアンティークランプを床に配し、それを灯しながら凛と舞う姿はどこまでも美しく、どこまでも掴みどころがなかった。信じられないほどのバネと体幹。床に伏せるように屈んだ低空姿勢の次の瞬間にはもう飛んでいる。しなやかな筋肉を細部までコントロールする自在性。指先じゃない、爪先まで。髪先の揺れまで計算づくのようだった。時間差で落ちたり振れたりする長い髪がまた綺麗で。
ダンスを語れる知識なんてないけれど、踊りにもトメ・ハネ・はらいがあるのかもしれない。り子ちゃんの動作の一つひとつはトメ、ハネ、はらいが綺麗に決まって小気味良い。
伸ばしたり折ったりの繊細な動きはもとより、ぴたっと手足から身体の軸まで止める技術がすごい。
その眼差しや指先を追うだけで飽きない。フロアにいた誰もが同じように息を呑んで見守ってるのがわかった。ひとりひとりの顔を見なくても、空気でわかるレベル。

ひとり別の重力のなかを舞っていたり子ちゃんは、パフォーマンスが終わるとさっきまでの顔つきと打って変わって少女のような笑顔を弾けさせて頭を下げた。り子ちゃんの笑顔って絵に描いたような"満面の笑み"だと初めて見たときからずっと思っていて、ついついつられる魅力があるよね。

マイクを手に取りMCタイムに入ると軽妙洒脱なトークを展開。喋りも達者だから楽しい。病み(闇)ツイートについても言及していたけれど、あれほど人間味を出してくれるひとってそういない。オタクからしたら身近な距離感に思えるだろうし、SNSでの姿も確実にり子ちゃんの大きな魅力のひとつ。

ダンスは3歳からやっていて、もう25年(!)になるという。
あんなに自分でも踊れて、あんなに曲ごとにカラーもパターンも異なる振付をつけられるのは意味が分からないレベルで驚嘆するけど、このキャリアがあるんならそれもそうかと納得もする。

MAPAでもZOCでも新曲が生まれるたび、靖子ちゃんの歌詞やメロディーだけでもめちゃくちゃ味わい深いのに、今回のはどんな振付だろうという楽しみまで毎回ある。それは幸せなことだ。

生誕祭を見て、り子ちゃんが踊る姿をもっともっと見たいと思ったし、靖子ちゃんの曲をさらに羽ばたかせる羽根を付けるり子ちゃんの仕事がますます楽しみになった。


生誕の空間もとても居心地良かった。クラシックホールの空間がそう思わさせたのもあるけど、ヲタの皆が本当にり子ちゃんを好きなのが、テンションというよりムードで伝わってアットホームですらあったから。粛々と、でも確かな愛と尊敬を寄せている。
それに自分も陽か陰でいったら陰の者だと思ってるし、ライブハウスと同じぐらい舞台空間が好きだから。
り子ちゃんも照れくさそうにしながらも皆に救われてることに感謝していた。応援してくれてる人たちのことを心から愛しているのがトークの随所からも感じた。

豊かな休日だった

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