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ゼロ化へ進む金融業界

こんにちは。
すっかり秋めいてきましたね。秋と言えばイベントが多い印象です。個人的にイベントが大好きなので、今から秋のイベントが楽しみです。
昔から秋は、食欲の秋、読書の秋などと何かとタイトルをつけたくなる季節なのでしょうか?
秋深き隣は何をする人ぞという名句もありますし、月もきれいに見えますし(見えるような気がする)、いい季節だと思います。

さて、今日は、ゼロ化へ進む世界というタイトルでブログを更新してみたいと思います。

ゼロ化と言うのは、先日SBI証券と楽天証券が株式手数料の無料化を発表しました。株式手数料から何かしらのインサイトがないか探っていきたいと思います。

なお、本noteの中で、何度かこの手の話をしています。内容が重複している部分はご容赦いただけますと幸いです。

手数料無料化の衝撃

米国では、2020年頃より株式手数料の無料化が進み、ゼロコミッション革命などと言われてきました。
米国と日本においては、取引環境に大きな隔たりがあり(ペイメント・フォー・オーダーフローという証券会社が顧客売買を第三者に販売する行為)、米国で手数料無料化が起こるとすぐに日本にその波が来るわけではないといった論調も多かったと思います。

しかし、蓋を開けてみると、わずか数年の間にその波は日本にも来てしまいました。
株式の売買において、証券会社はあくまで顧客からの注文を取引所に流すだけであり、高速取引を行うようなデイトレーダーでない限り、どこの証券会社を使っても大差はありません。
したがって、単純に株式の注文を行うだけであれば、顧客側の証券会社選定ポイントは、気持ち(UI/UXが気に入っているか、何か特別な思い入れがあるか)と手数料しかありません。

SBI証券と楽天証券というオンライン証券の両雄が手数料無料化を発表したことで、他のオンライン証券会社はいずれ手数料無料化に向かうものと思われます。現状で手数料を無料かを行うと経営に大きな打撃がある場合は、早急に状況を整え、無料化に進んでいくことでしょう。

手数料に依存しないビジネスを作り上げたものの勝利

今回は、オンライン証券ビジネスを中心に話しています。
というのもオンライン証券ビジネスは、インターネット上のみでの商売を前提としていて、余計なサービス、コストを絞り、株式の取引をインターネット上で完結することで高収益を実現するというビジネスモデルだったからです。

他業種を見ても、これだけ各社収益率が高く、かつ日本に株式取引が存在する以上恒常的に売上の見込みが立つビジネスもなかなかないと思います。
一方で、それはビジネスが洗練されすぎているが故に、余計はコストが積み上がる別サービスの立ち上げや社員のモチベーションに大きな障壁として存在していることも事実です。

ただ、それでも手数料低下競争は存在し、売上の低下を阻むために、各社投資信託の販売に力を入れることで継続的な信託報酬の獲得、信用取引などを提供することで金利収入の獲得など、サイドビジネス的なことにも注力をしてきました。

結果として見ると、SBI証券は全体の売上に占める委託手数料の割合は20%ですし、委託手数料がゴッソリ抜けても黒字を実現していますが、他社の多くは全体の収益の半分近くを委託手数料が占めているというのが現状です。

楽天証券も同様に委託手数料の割合は高いですが、オンライン証券ナンバーワンを目指す矜持のようなものを今回の手数料無料化では感じます。

Everything goes to ZERO?

ひと昔前に、限界費用ゼロ社会という本が大きな話題になりました。
テクノロジーの進歩であらゆるものの値段はどんどんとゼロに近づいていくといったような本だったと思います(もうだいぶ前に読んだので、再読して昨今の情勢に合わせて今度考察してみたいです)。

また、最近ではAI等の発展により、多くの仕事がなくなって人間の余暇時間が増えるですとか、仕事がなくなるにあたりベーシックインカムを導入すべきなどという意見もよく聞きます。

そうした話と今回の話をリンクすると、やっぱり全ての道はローマに続くじゃないですが、ゼロに近づいているのかなぁと思ったりもします。

でも、純粋にテクノロジーだけで無料化は実現していないというお話

テクノロジーのおかげで、株式取引はオンラインで可能になりましたし、映画をサクサクとタブレットで見られるようになりました。
他にもそれはそれは私ごときが言及するまでもなく、テクノロジーと競争原理で多くのものが便利になりました。

そうした意味だと、Technology makes a world better place to liveにしたと思います。

しかし、今回の株式手数料無料化に関して言うと、既にテクノロジーの恩恵は十分に証券業界に染み渡っていましたし、前述の通り、収益源の多様化に成功したSBI証券が、他社にプレッシャーをかけにいった様相だと思われます。

そして、手数料無料化で現状ビジネスが成り立つ証券会社は、投資信託の信託報酬であったり、信用取引の金利であったりという部分で経営を成り立たせていると言えます。
殊、信用取引に関しては、インターバンク等にて超低金利で借りてきたものを顧客に高金利で貸し出すというビジネスです。
つまり、手数料無料化はそうした証券会社にとって収益源になる顧客がいて成り立っているというのが現実だと思います。

他にも、金融商品の手数料率の低さから(一番売れているS&P500の投資信託などは、おそらく1兆円売っても証券会社に入る手数料は数千万円程度)、仮想通貨など手数料の高いビジネスに参入しようとしています。

テスラ的なビジネス

テスラのビジネスモデルについての記事のことをふと思い出しました。
最初に、収益性の高い高級車を販売することで経営を安定させ、マス向けの一般車を低価格で販売することで一気にシェアを取りにいくという話です。

先ほどの証券会社の話では、手数料を多く払う(おそらくその顧客の多くは手数料が高いことにあまり気付いてはいない)少数の顧客負担分が、マジョリティの手数料無料化を支えているとも言えると思います。

テスラのストーリーでいけば、ゼロはいつまで経ってもゼロですが、今後はいかにその無料顧客を有料ビジネスに誘導できるかが鍵になってくるのかなぁと思います。

え、これってまるでフリーミアムですね。
金融業界っていつからSaaSモデルになったんでしたっけと思ったのですが、とある新進気鋭の運用会社は信託報酬が継続的に入るので、我々はSaaSモデルだと仰っていました。

まとめ

限界費用ゼロ社会の話に戻ります。
金融業界という切り口から言えば、現状手数料の高い商品の手数料がテクノロジーで無料化に向かうと、テクノロジーの勝利と言えるのではないかと思います。

ただ、一つ付言させていただくと、案外株式手数料無料の恩恵を被る層と手数料の高い商品に投資する層って被ってたりします。
人の好みは多様ですからね。
この状況って、落語の花見酒と同じような感じだったりして・・



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