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第1049号『海の答えは』

この季節、日曜日の朝は忙しい。理由は海へ行くから。趣味のトライアスロンで最初の種目はスイム。そのほとんどが海か湖、川で実施される、OWS = オープンウォータースイミング。

自然環境の中で行われる長距離の水泳ゆえ、天候への対応、海洋生物(アカクラゲやカツオノエボシ等)との接触など、プールで泳ぐのとは違う想定外の事態にも備え、対応できる力を身につけておく必要がある。その一番の方法は、海で泳ぐことである。とはいえ、海を一人で泳ぐことはあまりにリスクがある。

有難いことに、僕も所属しているYTRI(横浜トライアスロン研究所)が、海でのカリキュラムをほぼ毎週日曜日の朝9時から開催している。場所は横須賀市走水にある小さな入江。

この海の練習会(=海練)に参加するため、5時に起きる。まずは、身の回りのことを片付け、妻が用意してくれた朝食を摂り、トイレを済ませる。そして、前夜にパッキング(ウエットスーツをはじめ、泳ぐための道具と準備運動として走るためのシューズやウェアも用意)しておいたトライアスロン用のバッグを背負い、6時30分には自宅を出る。電車とバスを乗り継ぎ、8時前には入江の前に用意された受付会場に到着する。

まずは、準備運動も兼ね、観音崎周辺を3~40分ほどジョギングする。もうこれだけで汗でびっしょりである。受付会場に戻ると、海練に参加するメンバー数名が集まっている。性別も年齢も関係なく、同じ趣味を持つ仲間との会話は楽しい。余談だが、最近女性やシニアの方々の参加が増えている。会費を払い、参加シートに、・氏名・体温・緊急連絡先などを記入する。その後、コーチから、海の状態(潮の流れや海水温度など)や、練習でのポイント、注意事項などが伝達される。そして、ウェットスーツに着替え、入江の浜に集まる。

さて、海練の前に集まったメンバーでもう一つやることがある。それは、浜のゴミ拾い。毎回のことであるが、あっという間に40リットルほどのゴミ袋2,3つ一杯になる。そうしたなかで、気になるのがプラスチック製のゴミである。特に、小さく壊れたプラスチックゴミ。赤や黄の着色されたものは目立つが、その全ては拾いきれない。如何ともし難いが、どうにかしなければ・・・。

浜辺に散らばる大量のプラスチックゴミを前にし、とてつもない驚異を感じる。だが一方で、バスと電車を乗り継ぎ、普段の生活に戻ると、便利で快適な生活を満喫し、ついさっきの驚異などまるで無かったかのごとく鈍感になっている自分がいる。無関心なことと無知なこととは違うが、その解を導き出すことが出来ないとすれば、結果は同じことである。無力さをヒシヒシと感じる。

練習が始まる前の僅かな時間、毎回僕は海に浮かび仰向けになり空を見る。ゆらゆらふわりとして、まるで母に抱かれているようで、なんとも気持ちがいい。ふと、人間の欲望の果の愚かさと、全ての難問愚問を丸ごと飲み込んで、最後の最後に海(=地球)はどんな答えをだすのだろうか。そんな想いが僕の頭をよぎった。

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