オープンワールドを制約するには

私はオープンワールドのゲームは嫌いじゃないけど、自由度と引き換えにストーリー性・ゲーム性が犠牲になりがちなのがずっと気になってます。
「それオープンワールドにする必要あった…?」てなる大作ゲームのシリーズ最新作、いくつか覚えがあります。

ゲーム作る側にとっては、マップが一本道でキャンペーンシナリオどおりに展開させる、攻略させる作りのほうが圧倒的に楽です。
遊ぶ側としても実のところ一本道が楽でしょう。しかし一本道の話が気になる一方、自分だけのゲーム体験がほしい、毎回遊ぶたびに変化がほしい、敷かれたレールを外れるカタルシスを味わいたい気持ちもあるわけです。
それを満たしつつゲームを破綻させないためには、大量の例外処理が必要になります。
話しかけるNPCを数人飛ばしてもストーリー展開が破綻しないようにする、
ストーリーを進めるイベントが発生する場所に前もってNPCの行動を邪魔する目的でオブジェクトを並べられてたら削除する、イベントで通る道路や吊り橋が壊されてたらもとに戻す…

その手間は、マップが広く、アクションが多彩に、立体機動できるようになるほど困難になります。

現実問題、予算内でゲーム性を維持するには、プレイヤーをある程度制約しないといけないです。
いかにプレイヤーに制約を感じさせないで自然に進行させられるかが腕の見せ所になります。

私の好きなジャストコーズシリーズは、ぶっちゃけ毎回制約に失敗してる(もしくは放棄してる)代表です。
無駄に広いマップづくりと、プレイヤーのグラップリング立体機動の実現に全振りしてて、それが制約されることはほとんどなく、地を這う敵は脅威でなく、新作で追加された特徴的な新システムも大抵、使わなくても話を進められてしまう。積極的にクリエイティブなプレイをしないと実に大味・薄味なゲーム体験になります。

オープンワールド制約の代表例


壁/見えない壁がある
レベルデザインが簡単かつ、プレイヤーの想定外な行動で抜けられる可能性が最も低い堅牢な方法ではありますが、
高層ビル並みの壁や底のない崖で囲まれて、どう見ても特定ルート以外通れなくしてあるようなマップでは、閉塞感が心を削り興ざめ全開ですね。
見えない壁では、Fallout:NewVegasが印象的です。マップは山脈で区切られてて、その頂上は見えない壁(コライダー)で通れなくしてあって、山を避けて町めぐりして進むのを余儀なくされます。山の傾斜がキツければ納得いったけど、どう見ても通れるのに阻まれてこれも興ざめでした。
見た目が美しければ壁に囲まれたマップもまあいいかってなるけど。

フラグで封鎖されてる
門が閉じてる、橋が上がって進めない、というタイプです。シナリオが進めばアンロックされるパターンです。
これは結局壁に囲まれてるのと、プレイヤーの移動の自由度が高いと想定外の方法で越される可能性が出る難点があります。

勝てない敵が通せんぼ
GTAの3あたりでは、シナリオを進めてないうちに新マップに行こうとするとすぐ警察・軍隊に殺されてしまい事実上進めません。
NewVegasでも正規ルート以外の道を低レベルでは勝てない強敵がふさいでました。
しかしこれは、うまくやれば通れる可能性が高い不確実な制約です。見えない壁+勝てない敵の細い細い隙間を抜けてショートカットしたプレイヤーもいました。やりとげた側はさぞ大きなカタルシスでしょう。作る側としてはたまらん。

ダメージゾーンで進めない
これも古えからある制約です。落下したら死ぬ高低差の崖や溺れる水路もこの範疇です。
レベルデザインが簡単で、「耐性を得るかダメージを無効化するイベントがあるな」と先の展開を推理させる余地がある制約です。
しかし回復アイテムなどの仕様次第では抜けられる可能性があります。開発中に回復の仕様が変わると…たとえばダメージゾーンのことを忘れて戦闘のバランス取りのために無敵時間や回復量を調整したせいで、ダメージゾーンで回復が追いついてしまい抜けられるとか、結構調整が難しくもあります

スキルを体得しないと進めない
メトロイドヴァニアに必須のやつです。泳げるようになる、二段ジャンプできるようになる、ダメージゾーンを無効化、壁を登れる、など…
思いもよらない移動手段で、それが通常戦闘でも役立つようなスキルだとうれしくなります。
しかし、プレイヤーの行動が制限されすぎるとプレイ序盤の爽快感が減ります。今どきのゲームなら、プレイヤーの行動は最初からハデに立体機動できないと売りにならないでしょう。立体機動は許すけど移動は制限する、という二律背反を解決するのが大きな課題となります。
ゼルダの伝説BotWでは、序盤から垂直に切り立った崖も登れるという自由度があるけど、スタミナが少なくて高所には登りきれない、落下ダメージがあるから断崖は降りられない、広い川は泳いで渡れない、などで立体機動はできるけどうまいこと移動範囲が制限されました。
断崖絶壁に閉ざされた序盤から抜けると、スタミナを大回復できる薬を作れる素材が入手できるようになり、自由度が大きく上がります。

逆に、スキルが後から制限されるパターンもあります。
FalloutシリーズではDLCで、スキルや装備を没収されて危険地帯に放り出されるというパターンが何度かありました。
BotWでは常時雨が降る地域があって、滑って崖が登れなくなり、自由度は奪われ一本道の規定ルートを進むしかない(エリアボスを倒せば雨が止む)、というのがありました。
最初に自由にさせといてその後不自由にして、自由を取り戻させることで開放感を感じさせる、のが個人的に一番好きです。
でも調整は難しいです。テストプレイをたくさん重ねないとスキル無しで要所を突破されます。

・ボス戦でふさぐ
ボス戦だと厳重に閉鎖された(結構広い)空間にプレイヤーが飛び込み、ボスを倒さないと出られない・先に進めない。
これも制約ですが、この流れに納得いかない人はいないでしょう。同じフラグ立てでもおつかいと死闘では満足度が桁違い。
逆に倒さなくても先にすすめるボス(つまりボスに見せかけたモブ敵)がいたりしたら、自由感マシマシになることうけあい。
難点は、ボスの攻略法が多彩で倒しがいがあるように作るのが大変ということ、攻略が面白かったらそれはそれでオープンワールド部分邪魔…てなります

とりとめない話になりましたが、個人ゲーム開発視点の意見としては、
個人でオープンワールドゲーム作るのは考えれば考えるほど無理だな…
です。大手デベロッパーでもバグ取りきれず面白くしきれず死にかけるもんが個人でできるかっての。

広いマップを用意するだけなら可能です。
移動が平面のみの2.5Dゲームなら調整コストが大幅に減って個人で可能です。オープンワールドとよべないものになるかもですが。
ストーリーなしのサンドボックス、バランス調整なしの割り切りプレイおkなら、3Dもなんとか可能でしょう。ヒットして大量の開発者とテストプレイヤーを雇うだけの収益が出たらストーリーモードが作れるかもしれません。


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