見出し画像

美容師さんって・・・・。

上京してから、美容師さんのお世話になったことが、何度かある。おしゃれが苦手で、髪の手入れなどに時間を使う習慣がないので、たいていショートカットである。

実家にいた頃、一度だけパーマをかけたことがあった。母親の知り合いのお店でお願いしたのだが、いやはや、時間はかかるわ、頭に妙な香りの液体を振りかけられるわで、大学生だった私は、すっかり閉口したものだ。

何故、ヘアスタイルなどに関心がなかった私が、美容院でパーマをかけてみる気になったんだろう? 30年以上前の話だし、あまり愉快な経験ではなかったから、覚えていない。友人の誰かに、「一度パーマをかけると、その後が楽だよ」と、アドヴァイスされたような気もするが、はっきりしない。

結局、家族にも不評だったし、何より自分の気持ちが落ち着かなかったので、ほどなくして、同じ美容院で、パーマを取ってもらった。以来、上京まで、ほとんど散髪屋さんでカットしてもらっていた。ここも、母の知り合いのお店だった。

あ、そういえば、大学の卒業式で、答辞を読むことになったんで、軽く髪を整えてもらったんだったな。その美容院で。でもって、卒業式が終わった数日後、願掛けもあって伸ばしていた髪を、ばっさり散髪屋さんで切ってもらったんだわ。腰のあたりまであったんだけれど、それを、生え際まで切って下さい、と、お願いしたら、散髪屋のおばちゃん、もう、驚いちゃって。

「いいの? こんなにきれいな長い髪、そんなに短くしちゃって??」

上京後は、新聞奨学生しながら、大学院に行くことになっていたから、髪が長いのは困る。でも、そんな事情を説明したら、おばちゃんが何というかわからなかったので、たぶん、私、こんなこと言ったはず。

「ええんです。髪長いと、うっとおしいし、洗うんに時間かかるし、面倒で、困ってたんですよ」

私は、髪の毛が多いうえに、固い。思いっきりストレートヘアだ。おばちゃん、切るのは大変だったろうなぁ、と、思うけれど、切ってもらった後の頭の軽さと清々しさは、いまでも覚えている。

こういう私が、上京後、美容院でカットしてもらうことが増えたのは、手ごろな散髪屋さんを見つけられなかったことが大きい。生活も楽ではなかったし、そもそも髪の手入れにお金をかけることを良しとしなかった私に、割引券をくれることが多かった美容院は、ありがたかったかったのだ。

けれども。東京の美容師さんは、私が知っていた田舎の親しみやすいおばちゃんとは、違っていた。ときあたかも、バブルの真っただ中。プロ意識もおそらくは、相当高かったのだろう。もちろん、六本木だの青山だのに出かけたわけではないけれど、一時期お世話になった美容院で、私はしばしば、美容師さんから髪について、あれこれ、お説教をされることが多かった。また、客である私を、見下す物言いにも少なからずぶつかった。

自分が美容方面に無関心・無知であることに、私自身は、なんとも思っていなかったが、美容院に行くたびに、暗にダメ出しをされるのがだんだん苦痛になってきた。

或る時、カットの長さを聴かれて、「前髪は、眉上2センチで」と答えたら、「冗談はやめてよ!」と怒鳴られた。今の私なら、黙っていないはずだが、その時はお店も混んでいたし、まさか、客の私が怒鳴られるとは思っていなかったので、絶句して、反論もできなかった。それで、そのまま、相手の言うなりの長さで妥協して、カットしてもらって店を出た。「二度と、こんな店、来るもんか!」と、内心決心して。

その店は、その後しばらくしてつぶれたらしいので、今から思えば、集客に苦労していたのだろうし、いわゆる客単価も、高くはなかったのかもしれない。バブルがはじけて、世の中の景気も良くはなかったころだった。私のような、割引券をもらった時に、やって来る客など、相手にするのも苦痛だったのかなぁ、などと、考えることもある。

ただ、私は、その日以来、美容院に行っていない。バブルがはじけて、割安のカット専門店がどんどん出てきたこともあって、気軽に好きな長さのカットを頼めるお店に、お世話になっている。

田舎の香川でカットなりパーマなりをお願いしていたお店のおばちゃんたちとは、施術中もいろいろ話をした。変なことを話せば、母にすぐ知られるので、たとえ聴かれても、込み入ったことは話さなかったが、それでも、施術中退屈しないコミュニケーションがあったような記憶がある。

今お世話になっているお店は、ともかく数をこなす、というのが、最大の目的だから、世間話などはまずない。ただ、そこへ、10年通っているけれど、顔なじみになったらしい店員さんの対応は、決して冷たくない。5年前、肩の骨を折って、入院・手術の後、半年リハビリで病院に通ったことがある。その期間で、一度、三角巾で腕をつった状態で、髪を切りに行った。機械で料金を支払って、チケットを受け取るのだけれど、片腕だと、うまくいかない。すると、作業中だったのに、店員さんがそばに飛んできて、フォローしてくださった。三角巾をしているから、断られるかなぁ、とすら思ったけれど、そういうことは一切なかった。過剰な接客はないけれど、お客さんのことを良く観ていて、必要なサポートがすぐできる。それは、私には、好ましい姿勢として映った。

そのカット専門店は、チェーン店で、昨年の緊急事態宣言の時は、早々に休業して、私も随分困ったものだった。本部からの指示だったので、やむなくの休業だった、と、後日伺った。今回は、感染症対策の方針も決まっているからか、今も営業を続けてくれている。

行きつけのお店ができているのに、何故、今更美容師さんの話を蒸し返しているのかと言えば、うめかわ知世さんの「888段の先に広がる世界」を拝見したから。うめかわさんは、美容師さんなのだそうだけれど、この記事を読んで、「ああ、こんな美容師さんなら、お願いしたいなぁ」と、思ったのですよ。さらに、うめかわさんは、ヒーラーでもあるそうな。私の美容師さんへのトラウマも解消してくださるかもなぁ、なぁんて、夢想しています。

というわけで、予定を変更して、うめかわさんに触発されての思い出話でした。うめかわさん、ありがとうございます❤

明日も暴走できるかな。では、暖かくして、良い夜を。おやすみなさい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?