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自分では、なんということもないフツーのことだと、思っていたけれど・・・・その1 私の最愛のマエストロとオーケストラについて

最近、いろんな方とコメント欄で会話しているうちに、ハタと気が付いたことがあります。私にとっては、きわめて普通なことだと思っているけれど、観る人によっては、「へぇーーーー!」と思えることがあるんだと。

1年前、大好きなクリエーターのMiekaruさんとの会話がもとになって、インコとの生活のことを、あれこれ書いたものですが、その出発点も、インコのことをあまりご存知ではない彼女の、「そんなこと、あるの?」風な疑問提示でした。

今回は、2つほどそのネタで書いてみようと思います。順番どうしよう、と、思っていたら、さっきショックなニュースが飛び込んできたので、自動的に、音楽ネタから行きます。ニュースについては、記事の末尾あたりで触れます、はい。


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11年前の6月19日は、私の45回目の誕生日でした。その日、私は、午後埼玉県のさいたま市にある大宮ソニックシティにいました。仙台フィルハーモニー管弦楽団と、このオーケストラの正指揮者(当時)のマエストロ・山下一史とのコンサートを聴きに行ったのです。

そのころの私は、今の相方の実家で暮らしながら、鬱の療養をしていました。50羽近いインコの世話と多少の家事をしながら、波のある心身と向き合いつつ、もがいていました。何とか現状を打開したくて。

ラジオを通して出会った、インターネットラジオのクラシック専門チャンネル・オッターヴァ。このラジオ局と出会ったことで、私はクラシック音楽の世界に導かれたんですね。オッターヴァを知らなかったら、仙台フィルも山下さんも知らないままだったかもしれません。そもそもクラシック音楽に関心がなかった私ですから。

”ラジオを通して”というのは、オッターヴァは、TBSが作ったものだったからです。TBSは、自局の深夜放送として、午前3時に或る番組の最初の1時間分の録音を流していました。もちろん、広報的な意味合いもあったでしょうけれどね。

このオッターヴァが、11年前の東日本大震災の折、クラシック音楽の専門チャンネルという立場もあって、被災した仙台フィルを応援しよう!という態度表明をしたのです。

仙台フィルは、あの日、コンサート本番の日で、地震が発生した時は、ゲネプロ(本番と同じ進行でする、最終リハーサルのこと)直前だったそうです。この時の指揮者が山下さんだったのです。

幸いけが人などもなかったそうです。けれど、肝心のホールは甚大な被災をしました。何より、お客さんでもある街の方々に、あまりにも大きすぎる被害がありました。ライフラインすら確保がままならない状況の中、仙台フィルは、活動の停止を余儀なくされたのでした。

この被災した東北のプロ・オーケストラを支援しよう! という機運が、日本中のクラシック音楽家たちの間で高まったのですね。仙台フィルが、震災発生のわずか3週間後から、独自の活動を再開して、被災された方々に寄り添って、”音楽のちから”を届けている、というニュースが、無事だった音楽家たちの心を揺さぶったのでしょう。

私が聴きに行った大宮での演奏会も、その一環でした。これは、ホールが仙台フィルを呼んだそうです。音楽家を元気にするのは、演奏できる場を提供することだと、知っているからでしょうね。

オープニングは、シベリウスの「フィンランディア」。最初の、地の底から湧き上がってくるような、重い音。重いけれど、でも強くて厚みがあって暖かい。その一音に包まれた瞬間、涙が出てきたこと覚えています。

そのあと、爆発する熱量の高い演奏に圧倒されて、私は、完全に仙台フィルと山下さんが作り上げる演奏の虜になったのです。「フィンランディア」自体、大好きではあったのですが、目の前で生の音を聴くと、自分なりのイメージができます。そのイメージが、楽譜を読めない私にとって、作品を理解する手掛かりになります。

不思議なもので、どれほど世間的な評価が高い指揮者やオーケストラの演奏を聴いても、全然何のイメージもわかないことが少なくありません。つまり、私の心にはまったく響いてこないわけです。私の心を揺さぶる力がない演奏に、私は何の意味も価値も見出せません。

決して100%ではありませんが、私の魂に何らかの作用を引き起こせるのが、仙台フィルハーモニー管弦楽団であり、山下一史なのですね。

ともかく、仙台フィルも山下さんも、とても人間性が豊かです。何しろ、先のコンサートで私が何に驚いたって、演奏されている楽団員の方々、微笑んでいらっしゃる! 本当に皆様、幸せそうに、楽しそうに演奏してらっしゃるのですよ。山下さんにしても、今思えば、指揮台のうえで、楽しそうにしてらっしゃいました。

クラシックのオーケストラと聴けば、取り澄ました表情で冷たい音を出す。そういうイメージを持ち、実際そんなオーケストラを観ていた私にとって、仙台フィルの方々の柔らかさや豊かさに、いっぺんに惹き込まれてしまったのでした(外国のオーケストラの場合、少し事情が違うようですが、私はそちらには詳しくありません。あくまで日本のプロのオーケストラのことです)。

後で聴けば、11年前の大宮での演奏会は、仙台フィルがオーケストラとして、被災後初めて演奏できたものだったそうです。あちこちに呼ばれても、それは地元のオーケストラとの合同だったり、あるいは室内楽レヴェルの規模だったりで、「仙台フィルハーモニー管弦楽団」として演奏できたのは、3か月ぶりだったとか。気心の知れた仲間たちと演奏できるのは、それはうれしかったことでしょうね。

被災して、「音楽がもうできなくなるかもしれない」という危機感を共有することで、仙台フィルは、人間性豊かな楽団へと変身したのだと、のちにお世話になっている楽団員の方から伺ったことがあります。山下さんもまた、命の危険を感じるほどの経験をされたことで、さらに音楽に深く向き合えるようになった、と、おっしゃっていたことがあります。音楽ができるのは当たり前ではないのだと。奇跡のようなものなのだと。

11年前、大宮の演奏を聴かなかったら・・・・。私は、今こんなにクラシック音楽を好きではなかったかもしれません。人にこだわる私です。具体的に愛せる存在に出会ったことで、彼らを大切なよりどころにして、また、信頼できる演奏家として、どんどん深みにはまっているような気がします。もう足抜け、当分できないなぁ・・・・・(≧▽≦)

ただ、コロナ騒動の影響は、まだ収まらないようです。今月の13日、実に1か月半ぶりに、最愛のマエストロの指揮で、フォーレの「レクイエム」のコンサートが聴けるはずでした。ところが! 今日、Facebookに、なんと! 「公演中止」のお知らせが・・・・・・(T_T)

記事によれば、コロナの影響により、とあるのですが、少し調べてみると、どうもホールに何らかの支障が出たような感じです。千葉は、いわゆる”マンボウ”延長の地域ですので、それもあるかもしれませんが、ほかの千葉の都市部ではコンサートやってますからねぇ・・・・・(>_<)

少なからずショックですが、マエストロ指揮のコンサートは、今月まだあるので、それを心待ちにするつもりです。ああもう! 良い加減収まってくれーー!!!!!

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