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別れが続くのは、当分いやだけれど・・・・・インコとの生活あれこれ その12(前篇)

5月ももう終わりですね。今月は、新しい子を迎えた月にもなったけれど、その直前に、呆然自失になった別れもあったのでした。

モモイロインコのモモのことを「インコとオウムの違い」という内容の記事で、書きました。彼女については、毛引き症を取り上げるときに、再び登場してもらうつもりでいたんです。

けれど、それが嫌だったのでしょうか。今月の4日、自分を噛んで大量に出血したのち、急逝してしまいました。相方が大好きな子でしたから、相方が仕事から帰って来るのを待って、逝ってしまいました。

帰宅した相方と話をしている最中に、背後で大きな物音がするので振り返ると、モモが、かごの中に吊ってあるブランコから落ちていました。相方が駆け寄った時には、もう息絶えていました。たぶん、虫の息で相方の帰りを待ち、その顔を観た瞬間、満足して息を引き取ったのでしょう。

モモに出会ったのは、2年前の7月。ネットサーフィンが日課の相方が、モモのセールの情報を見つけたのでした。ちょうど友人の絵描きさんの個展に行く予定だった私が、その帰りに寄り道して、モモとの相性を観ることになりました。

モモイロインコのような大きなオウムは、それなりの値段がします。人気も高いですから、セールをするには相応の理由があるわけです。その理由を探る必要もありました。

仕事が終わって友人の個展に行き、そのお店に寄りました。とあるショッピングモールの中にある、チェーン店のお店です。コロナ騒動の前ですから、土曜日ということもあり、結構混んでいました。

モモは、お店が事故を恐れてか、神棚にあげられているような格好で、高い棚の上に置かれていました。本来、人が好きな性格の子が多い種族が、人にかまってもらえなくて、いじけた様子で、かごの中で寝ていました。

声をかけても反応がありません。

「う~ん、これはダメかも・・・・・」

そう思って帰ろうとしたとき、小学6年生くらいの男の子が、モモのかごに向かって精一杯の背伸びをして、手を伸ばし、彼女の頭をなでているのを観ました。モモは男の子になでてもらって、うれしそうです。

その様子を観察して、私の中で、何かがはじけました。それで、手の空いている店員さんに、モモとの相性を観たい旨、伝えました。

お店にいる店員さんだといっても、皆さんがお店の子について詳しいわけではありません。けれど、その時はラッキーなことに、モモのことを良く知っている店員さんに出会えたのでした。

モモは、手が嫌いなわけではないけれど、その時点では手に乗れない子でした(ハナとのお見合いで思い出した一羽が、モモでした)。

その店員さんによれば、お店に入荷して、その人が担当になった。幸い若鳥だったモモは、彼女にすぐ懐いたのだけれど、店員さんはそのあとすぐ、別の動物の部署に異動になってしまったのだそうです。大きなお店で、動物ごとにフロアがあるような店舗ですから、能力のある人は、いろいろ経験することになるのでしょう。

好きになった担当さんがいなくなってしまったショックで、モモは、暴れるようになり(その担当さんを慕って、求めていたのでしょう)、やがて、自分の毛をむしるようになったのだそうです。

かごの鳥さんは、自由を奪われていますから、ストレスがたまりがちです。頭が良い子ほど、怒りや悲しみが大きくなり、心身のバランスを崩しがちになります。この時、その子の性格で、ストレスの発散方法が、外に向かうか内側に向かうか変わったりします

外に向かう子は、暴力を振るうようになります。つまり、自分以外の人や動物たちや、あるいは物に攻撃を仕掛けるのです。インコ・オウムのくちばしは、鋭く曲がっていますから、彼らに本気で嚙まれたら、大けがをすることもあるのですね。小さなお子さんの指など嚙み切ることもあるそうです。

内側に向かう子は、自らの身体を傷つけるようになります。これを”毛引き症”あるいは、”自咬症”(じこうしょう)と呼んでいます。前者は、自分の羽毛をむしって、ハゲを作ってしまいます。後者はこの「毛引き症」が進んでしまって、地肌を噛み、血を出してしまうこともあります。

モモは、内側に向かうタイプでした(インコ・オウムはたいていこちらが多いです)。大好きな人に会えなくなって、寂しくて、退屈で、悲しくて。でも誰もかまってくれない。時間だけはたっぷりあるから、暇に任せて、自分のお手入れをしているうちに、羽をむしったら痛いけれど、スキっとした・・・・・。そういうところだったのでしょう。

店員さんは、その春に鳥さんの担当に戻ってきたのだけれど、戻ってきたら、モモは毛引きのうえに、自咬もやるようになってしまっていた。これはいかんと、半額でお迎えしてもらいやすくしたのだと、セールの理由を話してくれました。

その担当さんとこういう話をしている間、モモのかごの扉を開けて、彼女に声をかけつつ、頭をなでていました。最初こそ警戒していたのですが、時間をかけて撫でてもらえるとわかったら、ひたすら「なでてぇ! なでてぇ!!」と甘えてくるようになりました。その姿は、「こんなところイヤー!!! 助けて!!!」と訴えているように、私には見えました。

店員さんに毛引きの状態を尋ねると、「見ますか?」と言って、彼女の翼を広げて見せてくれました。そこには、文字通り”鳥肌”になった地肌が痛々しく観えています。

けれど、我が家には、毛引きの女王でもあるピポナがいるので、私は、全然驚きませんでした。私が平然としているので、店員さんも見込みがある、と、思ったのかもしれません。口にこそしませんが、迎えてほしい、という態度が観えました。おそらく、それまでにお見合いをしたお客さんたちは、このモモの傷口を観て、あきらめたのでしょう。

ただ、ここで私が即決するわけにはいかなかった。当然、相方に報告して、彼女にもお見合いしてもらわなければ、家族にできません。大きなオウムですから、力も強い。事故があってからでは遅いのです。

基本的な性格はよいこと、頭もよいらしいと見て取った私は、店員さんに上記の事情を伝えて、後日家族がお店に来るようにするから、家の者がOK出したら、お迎えする旨伝えました。

結局モモは我が家の子になったわけですが、あの時別れ際ふと見たら、指から血が出ていました。痛くなかったので、わからなかったのですが、モモが何かの時に私の指を強く噛んだようです。店員さんが顔色を変えて、止血用のティッシュをたくさん持ってきてくれたのを、いまでも覚えています。

”希望を持たせておいて、おいて行くの?” という怒りだったのか。それとも、”絶対、迎えに来て!”という訴えだったのか。彼女が天国に帰ってしまった今、ふと考えるのです。


長くなったので、今夜はここまでにします。おやすみなさい。


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