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クラウンのパントマイム

パントマイムと言うと一般的には壁とか風船とか、ないものをあるかのように見せる芸のことを思い浮かべます。また、物や小道具を使っていても言葉を発せずに動きやジェスチャーだけでストーリーを語ったりすることもパントマイム、マイムと言われます。いわゆる無言劇のこと。

だけどクラウンのパントマイム技術とはいわゆる壁とか風船とかをリアルに見えるように磨きをかけることじゃなく、無言でストーリーを伝えるということでもなく、演技の中で、何をやってるか、どう感じているかを相方や観客に明確にわからせるためのもの。、というふうにサーカスのクラウンカレッジで習いました。壁やエスカレーターもやるにはやりましたがそれほど重要視されてはいませんでした。

言葉を発しなくても動きで感情や状況がわかる身体表現。
それをパントマイムと呼んでしまうのは賛否あるかもしれない。今ならノンバーバルパフォーマンスという括りなのでしょうか。
クラウンじゃなくても多くのパフォーマーや俳優にとって身体表現は大事だし、みんなもそういったトレーニング積んできたと思います。だけど身体表現よりも台詞を第一とする劇団も意外とあるんですよね。極端な演出家は眉毛の動きさえ余計だと言います。。。それはそれでもちろんいいのですが。クラウンは基本的に喋りよりも身体表現が第一です。サイレントコメディ映画を思い浮かべるとわかりやすいですが、きっともっと前からクラウンはパントマイム=身体で表現するということと密接に結びついていたと思われます。
顔の表情、手指の動きから、体全体を使って、何をしているのか、どんな感情なのかを表現することは大切です。それができてからカリカチュア、つまり誇張したりパロディにしたり、自身のキャラクターにも活かせるのだと思います。

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このパントマイム的な表現は、「ないものをあるかのように見せる演技」の時のみならず、道具を扱っている場合にも大事です。その手に持っているのはフォークなのかそれとも歯ブラシなのか、相方や観客にわかるように表現する。これが意識できてないと、はたから見て何をやってるのか曖昧でわかりづらくなってしまう場合があります。ジェスチャーではなく演技の中で示すのです。
あ、「フォークを持ってるのに歯ブラシのように扱う」というギャグもあるだろうけど、それはまた別のお話。。。

道具を持っていようがいまいが、どういう状況なのかを示す表現力をアップするのに有効なエクササイズの一つにジブリッシュがあります。
ジブリッシュでエチュードしたり、ジブリッシュしながらギャグを作ったり。
無言や台詞でやるよりもジブリッシュの方が演技が明確になって出てくる場合があるのでとても役立ちます。
ギャグのアイデアに困ったときもジブリッシュで遊ぶと先に進んだりもしますよね。
しません? しますよね? なかなか使える子ですジブリッシュ。

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それから私がクラウンカレッジで学んだとき、「大きく動く表現」もマイムクラスでやりました。サーカスやアリーナの、特に3リングサーカスでは遠くの観客に声はほとんど届かない。そのため、大きな動きで明確にわからせる必要がある、という意味でマイムクラスに分類されてたのでしょう。
私も先生から何度か注意を受けました。
「それじゃ20メートル先の観客にはわからない。わかるように大きくはっきり動いて」
そう、このような指導を受けて私たちは大きくに動くようになったのです。そして動きだけじゃなくエナジーも、大きく遠くまで送り届ける訓練を受け続けてきたのでした。

でもサーカスやアリーナではない場合、そんなに大きく動く必要はないですよね。小さなギャラリーなどで派手な動きは不自然だし、また子供と直に接する時は大袈裟過ぎると怖がられてしまいます。

即興のエクササイズに、だんだん大げさに表現していく訓練があります。
何人も一列に横に並んで、端から、例えば笑いを、小さな微笑みから順にだんだんとエスカレートさせていくやつ。
あるいは2人(とか少人数)対抗で、何かを小さなことからだんだん大げさに表現していくゲーム。
一度はやったことありますよね? とても楽しいワークです。
これは表現の大きさのエクササイズなのですが、隣の人や相方に自分がやってることを明確に伝える、ちゃんと見て受け取って反映させてまた伝えるというトレーニングにもなります。

そういった経験を積んで、状況や環境に合った適切な身体表現ができたら素晴らしいですね!

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あ、そうそうパントマイムと言えば!
パントマイムをする人の日本での呼び方、マイム、マイマー、マイミストってあるじゃないですか。昔はなんじゃそりゃ?ってずーっと思ってたんだけど、あるときある人が冗談で教えてくれました。それ、英語の比較級なんじゃない?と。
なるほど!と膝を打ちました。
おもしろいですね。

ではまた!

(月刊クラウンライフ9月号に寄稿しました)https://clownlife.studio.site/

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