ただただ「オペラ座の怪人」が好きなだけ

ALW版「オペラ座の怪人」が好きすぎてサントラ漬けの日々なのだが、考察と感傷が止まらないのでとりあえず書き出してみる。

Think Of Me に込められた4層の感情

1層目

まずは、劇中劇「ハンニバル」の中の登場人物の気持ち。
(劇中で言及はないが、元々カルロッタが演じていた人物のセリフから推測するに
おそらくハンニバルの妻→ハンニバルへ向けた歌?)

2層目

つぎに、クリスティーヌからラウルへの気持ち。
稽古中、ラウルが自分に気づいてくれなかった事にがっかりしたけれど、あなたのことも子供の頃に過ごした日々も、私は忘れていないよ、これからも忘れないよ、感が伝わってくる。
映画ではあまり詳しく書かれていないが、原作小説では二人の身分差についてしっかり触れられている。
ラウルは貴族だが、クリスティーヌはそうではない。
そのため、いくら親しいと言えどもクリスティーヌはラウルの結婚相手として、世間体的には相応しくない。※1
この歌には「私たちは結ばれる運命ではないけれど、ずっとあなたのことを想っています」というクリスティーヌの気持ちも重ねられていると思う。
※1 )
墓場のシーンでは一軒家かと思うほどのダーエ家のクソデカお墓が出てくるので、クリスティーヌも名家のご令嬢かと勘違いしそうになるが、違うはず。
新支配人にまで名が知られていたほどの有名ヴァイオリニストのクリスティーヌパパであるが、小説にはお金を稼いでいた描写はない。
それに、そもそもダーエ父娘はお金持ちのヴァレリウス教授夫妻に養ってもらっていたくらいだ。
(その教授夫妻の転勤について行ったので、ダーエ親子はスウェーデンからパリに移ったというわけ)
なので、ダーエ家の墓地はもしかしたらパトロン夫妻の優しさで建ててくれたものかもしれない。

3層目

そして、ファントムからクリスティーヌに対する気持ち。
これは、映画を一旦最後まで観終わった状態で「もしや…?」と思っただけなのでオタクの深読みかもしれない。
クリスティーヌの声によって自分の作った音楽を昇華できる喜びを味わったファントム。
真っ直ぐに愛を伝える事ができなかった、不器用なファントム。
一緒に暮らすこともできたのに、自らクリスティーヌに「去れ」といったファントム。
その後、指輪を渡すために戻ってきてくれたクリスティーヌを再び見送るファントム。
その姿を思い出しながらThink Of Meを聴くと、いっそう切ない気持ちになる。

4層目

最後に、(これもまたまた深読みかもしれないが) クリスティーヌからファントムへの気持ち。
こちらは「Love Never Dies」を観終えた後に思ったことなので、ラブネバ未鑑賞の人や「オペラ座の怪人」のラストの解釈の仕方が違う人にとってはしっくりこないかも。
クリスティーヌには陽の光が必要だったから、ラウルと共に地底湖を後にした。
けれど、やはり "soul obeys" だったんだなぁ…としみじみ。
日の当たる場所での生活を選んだけれど、クリスティーヌの心のどこか一部はずっと、あの蝋燭が煌めく湖のほとりにあったんだろうな…
これ前提で聴き直すと、さらにThink Of Meの深みが増す。

Learn To Be Lonely の語り手は誰?

エンドロールで流れる映画オリジナルのこの曲。
実は元々、同じメロディー・違う歌詞でファントムに歌わせる予定だったのだそう。
最終的にはカルロッタを演じたミニーが歌ったのだが、大正解だと思う。(誰)
中にはこの曲自体要らなかったという人もいるけれど、私はこの曲が大大大好き。絶対要る。(誰)

だけれど、某翻訳者による歌詞の和訳は、私的には全然受け入れられない。
あんな絶望的な和訳はファントムが可哀想すぎる。
決めつけたりせずに、鑑賞者の想像力を働かせることができる"遊び"を作って欲しかった…。
私はもうちょっと余韻を楽しみたい。
ファントムにも救いがあるという希望を、どこかで持っていたい。

話を戻します。
個人的には、""劇中の登場人物ではなく""ミニーが自分の声で歌ったというのがポイント。
ミニーのオペラシーンは吹き替えなので、劇中でミニーは歌声を披露してない。
そのため、「カルロッタが歌った」という事にもならない。
小説っぽく言えば、「三人称視点」とか「神視点」で歌われている。
では、その「3人目」や「神」は誰か?
私は、2通り解釈があるとおもう。

その1 サル

映画でしか描かれていないが、ファントムは見世物小屋にいる時からサルのおもちゃを持っていた。
それはいつの間にか精巧なオルゴールに代わったけれど、サルはファントムが幼い頃からずっとそばで見守り続けていた存在。
口も聞けず、何か行動することもできない人形のサル。
クリスティーヌが現れる前も、去った後も、ずっとファントムのそばにいたサル。
ファントムの苦しみを理解しながらも、神的な俯瞰した視点でファントムのことを包んでいたんじゃないかな、という妄想。

その2 マダム・ジリーの心の奥底

こちらも映画ベースの話になるが、見世物小屋に入れられていたファントムを助け出し、匿い、お給料を渡していたのはマダム・ジリー。
彼女が、ファントムの影の保護者といっても過言ではないかも。
ファントムが逃げ出した時に持っていたボロボロの猿の人形に気づいてオルゴールをくれたのも、もしかしたらマダム・ジリーかもしれない。
(ファントムが自分で作った、もしくは自分で買った可能性もある。※2)
ファントムと深く関わる事こそしなかったものの、心のどこかでずっと気にかけていたのだろうと思う。
「Love Never Dies」の内容からも、彼女がファントムに対して再度救いの手を差し伸べたことがわかる。
劇中ではマダム・ジリーのファントムに対する個人的な感情は語られていないので、これも勝手すぎる妄想なのはご了承いただきたい。
※2 )
小説では、ファントムが自分で街に買い物に行くシーンが描かれている。
月2万フランも受け取っていたことだし、自分で買っていてもおかしくはない。

Medley : Down Once More / Track Down This Murderer の "alone" の掛け合い

"you are not alone" からの、"you alone can make my song take flight"。
これまた深読みかもしれないけれど、この "alone" の使い方が切なすぎる。
「あなたは孤独じゃない、独りぼっちじゃない、あなた"だけ"じゃないんだよ」と言うクリスティーヌに対してラウルと去るよう命じるけれど、
「私の音楽を羽ばたかせることができるのは、君"だけ"なんだ…
君がいなくなった今、夜の調べも失われてしまった」
と、心の底からクリスティーヌを必要としていたファントム。
いくら独りぼっちじゃないよと言われても
ファントムにとってはクリスティーヌがいなければダメなんだなぁと…
お互いがお互いの音楽(彼らにとっては、ほぼ人生そのもの?)を補完し合っているような関係性だからこそ、「自ら手放す」と言う選択をした2人の描写に、胸が締め付けられる。

最後に、オタクがただ愛を垂れ流すだけ

「オペラ座の怪人」との出会い

高校生の頃に一度DVDで見たのだが、その時はなぜか全く刺さらなかった。
ファントムが見世物小屋で袋をかぶせられているシーンやオペラ座の地下のシーンが強く記憶に残っていたので、なんだか暗くてホラーみのある映画だったなぁ、という印象を持ったまま再鑑賞せずにいた。
どこかで時間ができたらもう一度観直したいなとは思っていたが、まだ観ていないドラマや映画が大量にあったので、ずっと後回しになっていた。

私はU-NEXTに加入しているので、毎月映画をポイントで観ている。
今月は何を見ようかな〜と東宝のサイトを何気なく見ていると、「オペラ座の怪人 4Kリマスター」が目に止まった。
ずっと後回しにしていたし、他に気になる映画もないのでこれにするかぁ、と軽い気持ちで映画館に向かったが、思い切りぶん殴られたような気持ちで家に帰ってきた。
「よかった」なんてものではなく、ショックを受けた。
この映画のすごいポイントはわざわざ私が書くまでもないので割愛するが、人生2回目、約10年ぶりに見た「オペラ座の怪人」に思いっきり引き込まれてしまった。
(どうしてこんなに素晴らしい映画を、初見で好きにならなかったのだろう。当時から映画はたくさん見ていたし、趣味はあまり変わってないと思っていたのに…別の意味でもショック)

映画を見てからというもの、サントラ漬けになり翌週には劇団四季の舞台、その翌日には2回目の映画館鑑賞、家に帰ったら25周年記念ロンドン公演をレンタル期間が許すまで繰り返し鑑賞、その後は「Love Never Dies」オーストラリア公演を鑑賞。

個人的には、25周年記念ロンドン公演が良すぎた

ファントムを演じるラミンの演技といったら…観客の同情心とぴえん顔を引き出す天才か。
クリスティーヌによる、第1回 仮面を剥ぎ取られイベントの後、仮面を返してほしいと懇願する場面での眉を寄せた表情、顔の傾けかた…あなたは猫ですか?かわいいかよ。
そしてAll I Ask Of You (reprise) で、クリスティーヌとラウルの愛の歌を聴きたくないから耳を覆うファントム…切なすぎるだろ!!
極め付けはラスト、クリスティーヌが去った後に歌うMasqueradeでサルの顔を手で覆うファントム…もう涙出らんて……
クリスティーヌ役のシエラも素晴らしかった。
正直、映画版ではそんなに印象に残らなかったWishing You Were Somehow Here Again が大好きなナンバーになったのは、シエラの表現力あってこそ。
この歌は、役者さんによってかなり違いが出る歌なので聴き比べるのも面白い。
No more memories, no more silent tears(以下略) の部分が特に鳥肌もの。
悲しさの中に怒りがあって、でもそんな感情とは全部決別する覚悟があって…
不意打ちの名演技すぎて、ここも涙がボロボロ止まらなかった。
指輪をファントムに渡すシーンも…号泣
ラブネバでも共演した2人だからこそ生み出せる辛さ、切なさが溢れていた。

映画と舞台(四季版含め)で大きく違うところ

指輪のやり取り、ファントムの最後の行方のくらましかた、そしてクリスティーヌのお墓のシーン(映画版のみ)。

指輪のやり取りについては、すでに他の方々がたくさん書かれてるけど
ラウルからの婚約指輪だったのか・ファントムが元々つけていたものなのかでだいぶ意味が変わってくるし、それぞれのパターンで色んな解釈がある。
どのバージョンを観るか・どういう考察をするかによって、2人の関係性や指輪の意味に対してそれぞれのストーリーを妄想するのも、楽しみのひとつ。

姿のくらまし方……これの舞台版の初見時の衝撃といったら。
映画でガンガン鏡を割って去るファントムを最初に見ていたので(これはこれで彼の心情が読み取れるので好き)、黒幕を被って仮面とオルゴールだけ残してスッといなくなる舞台版ファントムに心が抉り取られた。
え…?! ファントム…?!?! いなくなっちゃったの…? そんなにひっそり…誰にも気づかれずに…びぇ〜!(泣いてる)

これは映画も舞台も同じことだけど、仮面とオルゴールを置いて姿を消したファントムはその後どんな人生の旅に出るつもりだったんだろう?
仮面すらつけなくていい、さらに人目につかないところでひっそり暮らすつもりだったのか
少しでもクリスティーヌを思い出してしまう仮面を捨てて、新たに仮面を作りなおそうと思っていたのか
音楽の天使を失ったので、自分の生きる道を絶とうと思っていたのか
そもそも何も考えず、捕まらないことだけ考えて逃げたのか…
考える余地がたくさん残されているこの映画、本当に大好き。

そしてそして、映画だけにある、クリスティーヌのお墓にひっそり置かれた薔薇の花と指輪のカット。からのFIN。
え??ずるくないですか?このシーン。
涙と感動を超えて、呆然としてしまいました。
呆気に取られたままエンドロールへ…。
ちょっ…ファントム……え、クリスティーヌのこと…ずっと…………びぇ〜!!!(泣いてる)

尽きぬ「オペラ座の怪人」への愛

1943年の「オペラの怪人」や宝塚の「ファントム」も観た。
メルカリで2004年版のパンフレットを買い、映画館で2024年版も購入。(中身は一緒)
本も読破したが、翻訳者別で複数冊読みたいなぁと思っている。
そして3回目の映画館鑑賞。
多分上映されている限り見続ける気がする。
中古で初回限定版のDVDもゲットした。(届くのが楽しみ)
ウエストエンドでも観たいし、ブロードウェイでも観たい…
いつか、機会があればケン・ヒル版とロン・チェイニー主演の映画も観てみたい。


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