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馬渕磨理子の未上場企業アナリストレポート

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日本で初めての上場および未上場企業のアナリスト馬渕のアナリストレポートです。主に株式投資型クラウドファンディング(ECF)のレポートを国内、国外問わず発信していきます。
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記事一覧

FUNDINNOの投資家のリターン アナリストレポート 馬渕 磨理子

2015年に安倍政権のもと産声をあげた、株式投資型クラウドファンディングは制度構築6年目になります。政府の狙いは非上場市場にリスクマネーを供給することで、海外に負けない、ベンチャー・スタートアップを育てることです。 制度構築当初から課題の1つとして、「市場の流動」が挙げられています。つまり、エンジェル投資家に「どれくらいの期間で」「どれくらいのリターン」をもたらすことができるかが、新しい制度が故に定かではなかった点です。当然、ベンチャー企業がアーリー・シード期にエンジェル投

TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)の可能性と柔軟な制度の必要性 アナリストレポート 馬渕 磨理子

◆TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)とは FUNDINNOで資金調達した企業である、琉球アスティーダスポーツクラブ株式会社が上場した、TOKYO PRO Market(以下、TPM)とはどんな市場なのでしょうか。 簡単に言えば「中小企業が上場しやすい」市場です。TPMは、2009年6月に開設されたばかりの、東京証券取引所(以下、東証)の新しい市場です。コンセプトは、「日本やアジアにおける成長力のある企業に新たな資金調達の場と他市場にないメリットを提供する

グリーンシートと株主コミュニティの歴史 アナリストレポート/馬渕磨理子

未上場企業への資金調達を円滑にし、投資家の換金の場を確保する目的で、1997年に華々しくスタートしたグリーンシートですが、2018年に約20年の歴史に終止符を打っています。 なぜ、グリーンシートは廃止されたのでしょうか? そして、それに代わる受け皿は日本には存在するのでしょうか? 日本における、未上場企業の資金調達の環境は、2020年の現在も課題が山積みであり、国を挙げて力を入れている分野です。未上場企業が資金調達を円滑に行うことによって、国内のイノベーションの芽が育っ

英国におけるECF(株式投資型クラウドファンディング)市場のアナリストレポート/馬渕磨理子

1. 英国のECF市場 1-1)英国におけるECF誕生の背景と市場規模 英国は株式投資型クラウドファンディング(Equity CrowdFunding、以下ECFという。)で先行しており、特に、2015年に市場が急拡大している。現在、Crowdcube、Seedrs、 Scottich Enterprise等の会社が多くのシェアを占めている。英国のECFは2011年にスタートし、2019年6月までに累計で1,161百万GBPの資金調達を行っている。企業は、VCやエンジェル投資

「資金調達の民主化の道」立ちはだかる、誤解――株主数が多いとIPOできないのはホント?

ベンチャー企業の資金調達は、今、株式投資型クラウドファンディングという新しい資金調達方法の誕生により「民主化」が進んでいます。 しかし、株式投資型クラウドファンディングを検討されている企業から、 「株主数が多いとIPOできないのは本当か?」という相談を受けることが多いです。 IPOする際に、株主数が法的に問題になることはありません。 にもかかわらず、なぜ、このような話が出てくるのでしょうか? 今回は、この誤解の背景にあるものについて、お話いたします。 エクイティ・フ

米国におけるECF(株式投資型クラウドファンディング)市場のアナリストレポート2019年/馬渕磨理子

1.米国のECF市場 1-1)米国におけるECF誕生の背景と市場規模 ベンチャーマーケットで先行している米国においては、2012年4月の新規産業活性化(JOBS法)に基づくクラウドファンディング規則(Regulation Crowdfunding、以下SEC規則)案が、2015年10月に米国証券取引所委員会(U.S Securities and Exchange Commission、SEC)により承認された。これを受けて、2016年5月から株式投資型クラウドファンディング(