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【マッチレビュー】Bリーグ 23-24 B1第22節 GAME1 群馬vs仙台

ロスター

群馬クレインサンダーズ

仙台89ERS

スタメン

群馬クレインサンダーズ


仙台89ERS

試合結果とボックススコア

1Q 群馬18-15仙台

2Q 群馬41-38仙台 (群馬23-23仙台)

3Q 群馬55-55仙台 (群馬14-17仙台)

4Q 群馬81-79仙台 (群馬26-24仙台)

オプアリ着雷

今日はここから

※現地観戦しました。

前半から3Qまでの両チームの試行錯誤と思惑

フルメンバーのロスター編成となった群馬に対し、仙台はヤンジェミンと青木がロスター外。スタメンに関しては、群馬は年明けから継続しているお馴染みのスタメンであり、仙台は復帰したトーマスがベンチスタートでセカンドユニットへ回る編成に。

前節における群馬は、前半で耐えながら後半にピークを合わせてまくる狙いを見せ、見事に連勝に成功している。この日の群馬も立ち上がりにおける攻守の強度は特段に高くはなく、どちらかと言えば耐える入りとなったのに対し、敵地で先手を取りたい仙台が1Qで先にリード奪うことになる。

スタメンにおいては、阿部をハンドラーとするセットを主とする仙台。ビッグマンのオンボールスクリーンを有効に使いながら、渡辺翔太が淡々とコーナースリーを沈めていく。一方の群馬はスタメン、セカンドユニットを通して、オンザコートでのアドバンテージのあるジョーンズのペネトレイトをエンジンとしつつ、ターズースキーとベンティルの2ビッグ編成においては、ベンティルにボールを集めながら仙台の固いディフェンスを攻略していく。

2Qで一時リードを広げた群馬ではあったが、仙台はゲルンを投入した時間帯においてはオフェンスリバウンドを回収し、セカンドチャンスポイントを粘り強く決めて群馬との差を広げさせず。ベンティルのファールドローによりパーソナルファールが早々に2となったトーマスが、2Q残り3分を切った場面において、リバウンド争いから3ファールを喫したことを除けば、仙台としてはアウェイで順調に進めた試合展開となる。

一方の群馬も、前半に耐えて後半にまくるというここ最近の勝ちパターンには上手く乗せることが出来ており、両チーム共に後半勝負の思惑を覗かせながら、群馬3点リードで前半を折り返すことになる。3Qにおいても慎重にゲームを進め、得意とする速い展開には持ち込まない群馬と、固いディフェンスから粘り強く得点する仙台は、両者拮抗。3Qを終了した時点で同点となり、勝負は4Qへ持ち越されることになった。

クラッチタイムを見据えた攻防と駆け引き

仙台の狙いは、クラッチタイムに入る前に一定のリード、例えば3ポゼッション差程度のリードを奪うことである。群馬にはジョーンズ、ベンティルという1on1ではB1で屈指の名手を複数抱えており、クラッチタイムには滅法強い辻も控えている。4Q後半のクラッチタイムを迎えた局面で同点、もしくは1ポゼッション、2ポゼッションの僅差を打ち合う展開は、仙台としてはやや分が悪く、この展開になった時に力を発揮するのは群馬という構図は、両チーム共に認識していたように思える。

ゆえに仙台にとっての理想は、前述の通り4Qのクラッチタイムに入る前に3ポゼッション差程度のリードを奪い、奪ったリードを固めるためにオンザコートの編成をゲルンとブース。もしくはゲルンとトーマスを中心に組むことであり、インサイド主体に守り勝つことであった。3Q終了時で同点に追いついた段階では、仙台の目論見としては8割型理想に近い展開。ここから4Q前半に攻勢に出てリードを広げた後、ゲルンを加えたディフェンシブなラインナップをクローズに組んで逃げ切る。というのが、アウェイでの仙台のシナリオの一つである。

仙台にとって誤算があったとすれば、その一つはトーマスのファールトラブルだろう。クラッチタイムにおけるオンザコートの編成として、前述の通りゲルンを一角に加えたラインナップを送り出すことが理想であるならば、仙台としてはクラッチタイムに入る前に何としても先手を取り、群馬を突き離したいところであったことは想像に難くない。4Q残り8分の場面においてはゲルンに代わりブースが投入され、オンザコートの編成はブース、トーマス、阿部、渡部琉、渡辺翔太という最大限に火力を上げたメンバーを組んだことからも、この意図は見て取れる。事実、渡部の3ptで逆転に成功した仙台は、このまま点差を広げ、最後には守り切るという大筋のプランがあった。

しかしながら、ブース投入わずか30秒後には、ジョーンズのファールドローによりトーマスが4つ目の個人ファールを喫してしまう。仙台としては4Q前半の間にもしも群馬にリードされた場合は、若干の分の悪さに目を瞑ってもクラッチタイムに打ち合える編成を組むしか無い。ディフェンシブなスタイルの仙台にとっては、クラッチタイムに群馬と打ち合う形を作るのであれば、阿部をハンドラーとして外からブース、中からトーマスという3人を軸とすることがベター。そのため、クラッチタイム前のトーマスのファールアウトを避けるべく、ベンチに下がってわずか30秒でゲルンがコートイン。先手を取りたい仙台の思惑とは裏腹に、トーマスは4Q前半の温存を余儀なくされた。

仙台のもう一つの誤算

予期せずゲルンをオンコートに据えたディフェンス重視のユニットを先に組むことになった仙台は、シナリオ通り群馬を大きく突き離すことが出来ず。しかしながら、その展開の中でもブースのエルボージャンパー、澤邉の3ptで先行することになる。群馬もジョーンズと、この試合でB1個人通算400試合出場を達成した並里を中心に、4Q中盤のリードチェンジを凌ぎながらクラッチタイムでの勝負にかけることになる。

残り3分49秒、仙台2点リードの局面でゲルンに代わり4ファールのトーマスがコートへ戻る。阿部がボールを保持してドライブを仕掛け、ブースがインサイドからペリメーター、3ptをオールラウンドに担い、トーマスがインサイドを攻め、片岡と渡邊がアウトサイドを狙う。守り勝ちたい仙台にとっては理想とは少し異なる展開ではあるが、クラッチタイムに打ち勝つための火力最大限の攻撃的ユニットを組み、こちらも群馬との勝負をかけることに。

事実トーマスはペリメーターへの進入から群馬のリングを度々脅かし、阿部もペネトレイトからファールドローするなど、終盤は仙台が猛攻を仕掛けることに。その歯車を崩させたのは、3スティール、2ブロックという圧巻のスタッツを叩き出したパーカーのパフォーマンスである。クラッチタイムに打ち勝ちたい仙台に対し、まずトーマス、ブースによるインサイドの攻略を防ぎ、オフェンスの選択肢を狭めるという問題を仙台へ突きつけることになる。仙台にとってトーマスのファールトラブル以外に誤算があったとすれば、群馬のオンザコート3の要であるパーカーの傑出したディフェンス力であった。

残り2分を切った場面でジョーンズのペネトレイトにより、群馬が2点ビハインドまで迫ると、直後のポゼッションでは仙台はブースが3ptを沈め、残り1分20秒の場面で仙台が5点をリードする展開となる。あわやこのままゲームクローズかという残り1分の局面、群馬はベンティルの3ptが決まると、残り31秒の局面ではベンティルが4点プレーを叩き出し、群馬がリードチェンジに成功する。

意図せず始まったクラッチタイムの打ち合いの中、仙台はあと一歩の決め手が足りずに惜敗。手に汗握る展開の中、仙台の誤算を見逃さず打ち合いを制した群馬がホームで競り勝ち、連勝を飾ることになった。

雑感

"仙台戦は一筋縄では行かない"

それを地で行くような試合。群馬にとっては前節に勝率5割に乗せ、ここからCS出場権を得るための勢いを加速していきたいところであったが、この試合においては、ディフェンス力に勝る仙台の攻略には終始苦戦。仙台は理想とは少し異なる展開となる中、残り1分半を切った場面でブースが3ptを決めて5点差とするなど、同地区対決のアウェイ戦勝利へあと一歩と迫ることに。

仙台としては、終盤のクラッチタイムに打ち合う展開に持ち込まれたことが誤算の1つ。もう1つはパーカーの並外れたディフェンスに引っ張られた群馬に、土壇場で粘られてしまったこと。ギリギリの局面で試合を殺させなかった群馬にとっての光明は、ジョーンズ、ベンティルというB1トップレベルの攻撃コンビが率いるオフェンスの底力であった。

ベンティルの劇的逆転弾の前段には、展開の項に書いたとおり、クラッチタイムにおける両者の攻防と思惑と、それを突いた群馬の妙が垣間見える。仙台の固いディフェンスに対し、ややギャンブル性はあるものの、"クラッチタイムでの打ち合い"という自らのオフェンス力を信じた群馬が、本来のスタイルを貫いて掴んだ勝利と言えるだろう。

"終盤の競り合いに弱い"群馬にとっては、勝負所で攻撃的なスタイルを貫き同地区のライバルとの接戦を制したという事実に、ただの一勝ではない大きな価値を見い出すことの出来た試合となった。


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