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多久市歴史民俗資料館(佐賀県)の石炭資料

佐賀県多久市の石炭についての歴史に触れるおもしろい施設がある。JR多久駅より南方の西渓公園に隣接する歴史民俗資料館だ。

内部は、かつての暮らしを知る貴重な資料が並べられており、家庭や産業に関する物品が展示されている。その中で、多久ならではの展示品が、石炭産業に関する資料だ。

石炭資料のコーナー

展示品を見ると、塊炭の見本をはじめ、小型プロペラファン、坑内通信器、削岩機、救命器具、安全帽、坑内標識など近代設備のほか、つるはしやはかりなどのいにしえの採炭器具も展示されている。

とりわけ目を惹くのが、模擬坑道の展示だ。木枠の支保工で炭鉱の坑道の様子を実物大で展示してあるが、附属する”天井注意”や””坑口”などの標識が、往時の雰囲気を十二分に醸してくれる。

模擬坑道の展示

しかも、正面には山ノ神な小さな神棚が据え付けられている。炭鉱資料を見ると、いずれの坑口にもヤマの安全を祈願して、小さな神棚や祈願札が据え付けられている写真を見る。この展示されている神棚も、多久のどこかの坑口に飾られていたものであろう。

ヤマの安全を祈願する山ノ神 

この模擬坑道の展示物の面白いところは、運搬設備のトロッコも展示されているところだ。しかも、炭をを積載した炭函や索道を滑らすローラーが木造だ。

トロッコと軌道

実際の炭鉱で使われた安全帽も展示されていた。強化樹脂製ではなく絞り加工した金属製であるところに時代を感じさせる。

この歴史民俗資料館は、多久市南部の西渓公園内に所在し、同じ敷地に儒学の祖孔子を祀る多久聖廟(たくせいちょう)とその展示室、旧藩校で現在研修施設の東原庠舎(とうげんしょうしゃ)、古代からの歴史を見る郷土資料館、ゆかりの先哲を紹介する先覚者資料館まで、多久の文化教養が一堂に集まる文教施設でみどころまなびどこと満載の土地である。

もともと、この西渓公園は江戸時代多久領の家老屋敷だったところ、同地出身実業家、西渓こと高取伊好(たかとりこれよし)が私費で再建整備した公園であった。その高取伊好こそ、明治大正期に佐賀の地で炭鉱開発に腐心した活躍した実業家でった。その銅像と由来が公園の中心に厳かに建立されている。

高取伊好の立像

西渓公園、自然と調和し造成された庭園も相まって、文化的な大変すばらしい空間であることは間違いない。

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