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箞木(うつぼぎ)炭鉱(佐賀県)の面影 その1

佐賀県唐津市厳木町箞木(うつぼぎ)に、炭鉱そのもの痕跡を示す見事な坑口が遺っていた。JR唐津線が並走する県道350号線から、沿道集落に入る脇道にその坑口は潜んでいた。炭鉱の名前は箞木(うつぼぎ)炭鉱である。

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唐津市立箞木(うつぼぎ)小学校から、唐津線の線路と県道350号線を挟んで山のふもとに集落がある。山のふもとには民家が軒を寄せ合っている。

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坑口はうつぼぎ小学校南の集落西寄りと東寄りの2か所に存在し、その西寄りにある坑口跡(上図坑口跡1)を訪ねてみる。坑口は家屋と車庫の建屋と混然一体となす姿で遺っていた。一見して奇異な姿だが、筒状に巻かれたセメントが地面に斜め方向に伸びる形状から、斜坑口であることがわかる。

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家主の方に許可をいただき、坑口の正面を見学させていただいた。正面は家屋の内部に組み込まれ、坑道入口の空間は物置として扱われていた。

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坑道は正面入り口のすぐ先で閉そくされていたが、空間の広さは外側から見たときよりも大きく感じる広さであった。傾斜もきつく地底に続く実感が直接伝わってくる。また、入り口の形状がラッパの開口部の用に、径間が広がっている様子も確認できる。坑道の入排気を考慮した坑口の形状だ。

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セメントでしっかり巻かれた坑道内部は、かつては坑夫が地底奥深くにむけて出入りしていた様子を容易に想像させてくれる。

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文献によると、うつぼ木炭鉱は昭和28年頃開坑とあった。会社名は吉本鉱業㈱とある。閉山時期について定かな情報に当たらなかったが、開坑が比較的新しく石炭産業の斜陽化が本格化する昭和30年直前とあって、規模は小さくごくわずかな期間の採炭と考える。

とはいえ、セメントでしっかりとまかれた斜坑口を見ると、炭鉱として石炭を重々掘る気概を感じさせる。大変興味深い貴重な遺構であった。見学を許していただいた家主様に感謝申し上げます。

昭和28年頃 吉本鉱業㈱により開坑 閉山時不明


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